幻燈日記帳

認める・認めない

なんども書きうつせ

夢からさめてとんでもない夢を見た、という実感が頭の中にだけ残っていて、それが怖い夢だったのか、悪い夢だったのか、いい夢だったのかすらも覚えていなかったんだけどぼんやりしながらもなにかがスコーンと突き抜けてしまった頭でテレビをつけたら映ってたカニさえ愛おしく感じてきっと悪い夢ではなかったのだと思うことにした。

頭の中で日記を書くだけ書いて忘れて実際書かないことが増えてしまった。些細なことでも記録しておきたいときというのがあって、それが最近だ。あんなに大好きだったTwitterの居心地がよくない。mixiは自然とtwitterに皆が移行してどうでもよくなっていったという印象があったけど、twitterの代わりはまだ見つかっていない。もちろんくんから「VRチャットっすよ」と言われたがwindowsしか対応していないらしく、ヴァーチャルの世界なのに美少女になるにはハードルがいくつかあるんだな、と悲しい気持ちになった。

1/28のネイキッドロフトで行われるトリプルファイヤー山ちゃんとのトークイヴェントのため、打ち合わせ。山ちゃんの工房?にあるバンド漫画コレクションの山を見て、道を極めるというのは快楽だけではないんだな、ということを実感する。間違って恋人の小さめのマスクをしてきてしまったと気がついたのは帰り道だった。

10月最後の日のように

昔のことを思い出さなきゃいけない案件がふたつほどあったので、どうしても埋められない記憶を過去の日記を読むことによって掘り起こした。ひとつは収録。自分の好きな音楽を沢山紹介するプログラム。これはいつか告知します。もうひとつは松永良平さん「ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック」出版の一環のイヴェントで、スカートの故郷、ココナッツディスク吉祥寺店で明日(1/10)に開催されるトークショウのため。10年前の自分は(特にmixiでは)露悪的に振る舞おうとしていた気がしていたからあまり気が進まなかったのだけど大学を卒業するときの日記で『高校生の頃に長谷川きよしさんの「卒業」という曲を聴いて、当時「高校を卒業して、もし、大学も卒業したらこの歌みたいな気分になるんだろうな」と思っていたのだけれども、卒業式も控えた今でもなお、その実感はない。能吉利人さんの書いた詩のような気分、というよりも、斉藤哲夫さんが歌った「何気なく窓越しに耳寄せれば、淋しがり屋、皆んなが歌い出す」というような気分。』と書いていたのには驚いた。

ついこの間だけど去年の暮れ、友人のゼキ(映像作家の大関泰幸)さんと恋人とでごはんを食べているときに「来年で10周年っすわ」と言うと「来年は俺がさわまんの日記を編集してZINEを作る」と冗談なのか本気なのか妙なムードの口調で迫られたことを思い出した。

 

今日は雨の日です

12/17

少し遅刻して百軒店を歩く。街頭のスピーカーからスミスがかかっていた。BYGに着くとくじらさんのリハーサル。ドラムとヴァイオリンのトリオで優介が生き生きとピアノを弾いていて嬉しい気持ちになる。優介とふたりの出番のリハーサルを終えて、椅子に座っていると慶一さんがある歌を口ずさむ。すかさず岡田さんが「エリック・カズだね」と言う。確か"If You're Lonely"というアルバムの1曲目だった気がする。弦楽器やコーラス隊に彩られた深い孤独のアルバムのことを思い出す。今日はムーンライダーズかしぶち哲郎さんの7回忌だ。

もともとソロでの出演は決まっていたが岡田さんから「砂丘をやりたいんだ。手伝ってくれない?」と連絡を受け、二つ返事で引き受けた。ライダーズのファーストに収録されたかしぶちさんの大名曲。難しい曲だし、出番も最初だったからずっと緊張していた。「緊張するね」というと優介も「いやあ、緊張しますね」と返す。楽屋でそんなやり取りをしていると誰かに肩を揉まれる。振り返ると良明さんだった。「大丈夫だよ」なんて言ってくれて気持ちがちょっと軽くなる。ここにいる人達みんな僕にとってのスーパースターで、こうして同じイヴェントに出ているのが信じられなかった。緊張したけれどそれでも最初の出番を終える。うまく演奏できてホッとした。ホッとした途端に猛烈な淋しさが押し寄せてくる。すると楽屋で慶一さんが「みんなでやるんじゃなくて、ひとりずつかしぶちの曲を歌うとなんだか湿っぽくなるね」というと岡田さんも「砂丘の譜面を送ってもらったら当時の譜面だったんだよ。クラウンのロゴとか入って。それまで譜面ってくじらがきれいに書き直したやつをライヴとかで使うことが多かったじゃない。でもそうじゃなくてさ、曲が作られたときの譜面なんだ。だから生まれたてのアイデアが記されているんだよ。それを見たらやられちゃって」。人の減った楽屋で改めて今夜かしぶちさんの曲を歌う意味を深く考えたりした。

僕が選んだ曲は「今日は雨の日です」という曲。最近の曲をやりたいな、と迷ったのだけど優介が「Curve」を選んでくれたので、あのBYGでやるならば、とかしぶちさんが高校生の頃に作った「今日は雨の日です」を選んだ。ソロアルバムには入っていないし、お客さんからしたらピンとこなかったかもしれないけど終演後、かしぶちさんの奥さんが「すごく嬉しい選曲でした。この曲を作った頃、哲郎と私は高校生で少し遠い高校に自転車で通っていたの。自然の豊かなところだったんだけど、帰り道には哲郎の頭の中は音楽で溢れていて、部屋に帰るとすぐ譜面に頭の中の音楽を書き写していた。「冬のバラ」もそうだけど、そういう時期の曲なの」と教えてくれた。

終演後、BYGをあとにしようとしてマネージャーの野田さんに挨拶してから行こう、と思ったけどなかなか見つからず、演奏した地下にいるのかな?と地下に入ると音響の方が後片付けをしているだけで、もうすっかり静まり返っていた。

 

12/18

自主企画"Town Feeling"開催。リハーサルも快調に終えたところでどついたるねんのステージで吹くサックスを忘れていたことに気が付き一旦取りに帰った。陽が傾く青梅街道を抜け、自宅からサックスを回収。戻った頃にはどついたるねんのリハーサルが始まっていたのだけどそのステージには脱退したはずのDaBass(Coff)君と昆虫キッズの冷牟田くんが居た。あまりの状況に「交通事故に遭った僕は瀕死の状態に陥り、あまりの痛みのため、脳が頑張って日常のようなものを見せ続けてくれているんだけど、のっぴきならない状態のため、見えているものに歪みが生じてしまっているのかな?」と思ったけど現実だったようだ。DaBassが居た理由はわからなかったけど笑、冷牟田くんが居た理由は普段どつをサポートしているガガキライズ吉澤さんがインフルエンザにかかってしまったため、急遽代役を勤めることになったそうだ。また王子のギターが素晴らしかった。そういうこともありどついたるねんのライヴは最高だったし、柴田さんのライヴも最高。セットリストが素晴らしくって「後悔」で始まって最後の「結婚しました」で爆踊り。スカートは最初の3曲不調、あとは大丈夫だったけど終わりよければ全て良し精神で最高としておきたい。最初の3曲の不調は自分に時々起こる音がフラットして聴こえる怪現象が「ゴウスツ」のギターを鳴らした最初の音から起こってしまったことが原因でした。「ギターのチューニングがおかしいのかな?」と思ってゴウスツから即CALLに流れていくはずだったところを一旦止めてギターのチューニング確認したんだけどどこもズレていなかった。そこからちょっとずつ立て治っていったかな、とも思うんだけど「視界良好」が終わったあと、佐久間さんが助け舟を出してくれたおかげで今までで一番うまく「ランプトン」が歌えた気がする。バンドっていいな、と思えた瞬間でした。「新しいアルバム出るのでそれに期待して欲しくて新しい曲をたくさんやる」という今年の前半を経て、「新しいアルバム出たからそれを聴いて欲しいから新しい曲たくさんやる」っていう今年の中盤を経たので自由に組んだら今年発表した曲は2曲だけになっちゃったんだけど、むしろそれが効いた気がして嬉しかった。でも「ゴウスツ」には悪いことをしてしまった。帰り道の車ではこないだ作ったばかりの新曲を繰り返し聴いて帰った。

台湾通信

12/6

車でマネージャーの家のそばまで行く。親父からでかい車を借りたのだけど、CDしか聴けないことをすっかり忘れていて車の中に転がっていたTMBGのベスト盤を聴いた。マネージャーと落ち合い、運転を変わってもらう。何か忘れ物をしていないかだけが気がかりだった。空港に着き、車を降りるとずいぶん寒く感じた。「12月でこれかよ」と呟く。現地で待っていた駐車場の人に車を預け、荷物をカートに写し、集合場所でみんなと合流。僕以外は海外の渡航経験のある人たちなので、なんかソワソワする。大所帯なので荷物を預けるだけでも一苦労だった。

飛行機は気流の関係や、空港の混雑からだいぶ遅れたけれども、無事台湾に着いた。飛行機を降りると「ここが!台湾!」という感慨も与えさせず移動が続く。言葉の通じない国じゃ機内で配られていた入国カードを爆睡ゆえに貰いそびれただけで大変だった。「アーーー アーーー エアプレーン……カード……」としかいえなかった時、心の底から落ち込んだ。なんとかなることなど一つもないのだ。

空港のロビーで今回の主催のスパイキーと落ち合う。僕ははじめての海外に浮かれ倒して早速自動販売機でお茶を買った。持ったことのないお札、みたこともなかった小銭が手の中にある。不思議な感覚だった。

到着したのが夕方だったということもあってか道路は混雑。1時間ほどたっただろうか、宿泊するホテルについた。それぞれの部屋に荷物を押し込めロビーで落ち合い夕食を摂りに行った。街の居酒屋のような場所で乾杯をする。その店は店内に二つ、すたみた太郎でしかみないようなでっかい炊飯器が設置してあってご飯は基本フリーだった。小さい茶碗に米をよそっていたのだが、佐久間さんが米を茶碗から平たい皿に移していたのがなんともいえずおかしかった。知らない街に戸惑いながらも楽しい食事を終え、ホテルに帰る。僕だけタピオカすすりに街へ残った。なんとか注文したタピオカは達成感というスパイスにより美味しく感じた。部屋でのんびりしたのち、眠る。

 

12/7

明日、お昼ご飯行けそうだったら11時にロビー集合で、とLINEに投げ、翌朝マネージャー以外は集まってくれた。起こそうか迷ったが「えっ、飯とか……どうでもいいから寝かせてくださいよ……」と言われたら心が粉々になるどころじゃないのでこっそり部屋をでる。メンバー+PAの荻野さんでタクシーを相乗りして牛肉麺のお店にきた。バナナTVでやってた牛肉トマト麺が食べたくて…… 食事は美味しかったし、みんなでご飯食べるのは楽しい。お腹もいっぱいだ。いい滑り出し。ホテルのロビーでなおみちさんが「もし行けたらもう1軒行きたいな」と言っていたけど、満腹のため解散。そのまま徒歩でホテル戻る組とタクシー乗る組みに別れた。

ライヴハウスに向かう。今回はTHE WALLというところ。近くには大学がいくつかあるらしく、古い街並みに時々娯楽が転がっている不思議な街だった。言葉の壁を感じつつ、リハーサルを済ませ夜市に繰り出した。それぞれ思うままのつまみ食いをする。肉まん焼いたみたいなやつ、美味しかったし、みんなと別れてから食べた麺線は忘れられない味になった。ライヴハウスに戻り、スパイキーに台湾の言葉を少しだけ、レコード屋も少しだけ教えてもらった。街へ出る。バスに乗ってみたかったがバスのコミュニケーションは難しそうだ、と判断し、電車に乗る。切符だと思っていたがゲームで使うようなプラスチック製のコインが切符の代わりでカルチャーショックを受けた。日本の電車と雰囲気が違うんだけど、ホームの感じは大阪の地下鉄とか、京王線を思い出す感じ。知らない言葉が飛び交う中、改めて海外にきたんだ、と実感した。

最初のレコード店は先行一車という店。なぜか友川カズキフリーク店主が経営するというレコード屋。まず入口がわからない。湿った路地裏を何度かうろうろしてようやく店の入口に気がついた。ドアを開けたが雑然とした部屋が目に飛び込んできてゾッとする。無力無善寺初めて入った人とかこういう気持ちだったのかな。とか考えた。恐る恐る奥に進むと女性の店員さんがいて、店内にはクラシックが流れていた。拙い英語でやり取りをして、レコードを見ていく。欲しい!と思ったものはちゃんと値付けがされていて、これじゃ東京で買ってもおんなじだなぁ、と考えを改めた。東京じゃ買わないようなど定番を敢えて買うか、と切り替えたのだが、それもこれ、というものに出会えず、結局WIREの12インチを買って店を出た。見たことのない雨樋や、見たことのない柵を持った家を通り過ぎ、次はWHITE WRABBITというお店へ。こちらはとても綺麗な店内で日本の音楽も積極的に紹介されていた。ここでは落日飛車のCDを購入。駅に向かう途中、信号待ちで立ち止まったところでふと街の写真を一枚撮った。日本にいる時、なんでもないところで写真撮っている外国人観光客を見て「はて」、と思っていたのだが、旅情というのはこういうことだったのかもしれない。もう一度電車に乗ってPAR STOREを目指す。駅を出るとこれまで見た古い街並みとは違う、ピッカピカの街並みが目に飛び込んできて驚いた。銀座か表参道のような雰囲気。少し歩くと看板が目に入ってワクワクしながら扉を開けた。モンキー君もお店にいて、久しぶりの再開を楽しんだ。最近どんな音楽聴いてる?というやり取りで僕は田中ヤコブ君を。モンキーからは我是機車少女というユニット?を紹介してもらい、そのCDを買って帰った。モンキーとの話が嬉しくてつい伸びてしまって、最初から見ようと思っていた自分の出るイヴェンとに遅刻。どのバンドも魅力的だったけど、フレンドリーで我々みたいな引っ込み思案、内弁慶バンドには助かった。

東京でライヴをやるときとあまり変わらない気持ちで演奏できたのが自分でも不思議だった。いつもより疲れは感じていたけど、楽しく演奏できた。打ち上げは楽屋で小規模に。ケータリングにいくつか料理を頼んでくれたのだけど、そのうちの一つが松屋の生姜焼き丼みたいなやつだった。異国でみる慣れ親しんだチェーン店の名前はどう響いたのか、今となっては思い出せない。

夜遅くにホテルに帰ってきて24時間開いているスーパーマーケットに向かう。東京にいる恋人とLINEしながら家に買って帰るものを選んだ。真夜中のスーパーは西友みたいな雰囲気で、置いてあるものも日本の物も多く、商品を手に取るたびにここがどこだかわからなくなっていく仕組みになっているようだった。スーパーを出てシンとした街を歩く。

 

12/8

昨日、なおみちさんが言っていたもう一軒行きたかった店が気になって向かおうとしたらなおみちさんももうすでに着いていたようだった。いわゆる台湾の朝ごはん、みたいな風情の店で中国風とされるおにぎりやオムレツをパンで挟んだような一見キテレツな料理を食べる。どれも美味しかった。小籠包もようやくここで食べる。なおみちさんとタクシーでホテルに戻り、部屋の片付けをしてホテルをでた。この時、部屋にネックピローを忘れたことには気づいていない。みんなと別れて財布に残った小銭を全部吐き出す。余裕を持って行動したつもりだったけど出発ロビーがあまりに遠く結構ギリギリになってしまった。急いで飛行機に飛び乗り、座席についた時マネージャーから数分前にLINEが来ていた。「澤部さん以外全員もう座ってます」

飛行機は空港につき、今度はしっかりもらった入国カードを記入しようと記入台でペンを握ったのだが、ペンが出ないし、記入台はガタガタしていた。こいつは美しい国。こいつはおもてなしじゃないか。

空港で待っていた駐車場の方から車を受け取り、機材を積んでいく。帰り道は車の中に転がっていたRUNT STARのFIRST LIGHTを聴いた。っつーか、なくしたと思ってた。

嘘みたいに輝くそれ

清水の舞台から飛び降りる気持ちでピチカート・ファイヴの7インチボックスを買った。因果なことに8/31に買ったヘッド博士の煽り(だけではない…住民税…国保…年金…)を食らって金欠になってしまっていたため、予約はしていなかったし、現在もバキバキの金欠状態が続いているのだけどミューマガに原稿書いたりしていたもんだからずーっと欲しくてソワソワしていて、こりゃこの気持ちどうにもならない、買うしかないのか、ないのかと思いを巡らせていた。そこで「明日の朝、HMVの開店より早く目が覚めたら行くだけ行ってみよう。売り切れていたら諦めがつくよ」と唱えて布団に入った。そして目を覚ますと時計は開店より前だった。最低8時間は眠らないと眠った気がしない僕が!6時間弱の睡眠で!こりゃもう運命じゃん!ぐらいの浮ついた気持ちでHMVに向かったのだが31にもなって襲ってくる金欠とは一体なんなのか、ということを自問自答。そして思い出す。浪費癖はない、と思いこんでいたけど、あるのだ。

いつもより賑わう開店して間もないHMVに在庫はあった。しかし厚紙のサンプルしか店頭に出ていなく、一気に吹いていた風が止まる。(大好きなスタジオ・ライヴの7インチは予約特典だったな〜、それは付かないんだろうな〜)と思い、それなら無理して買うまでもないよ、生活が第一だよ、と店内を徘徊。新入荷を見て少しずつ心が落ち着いていく。これでよかったんだ。マジドラのシウォンチュさんソロだけを持ってレジに向かった。レジ打ってくれた店員さんに「ピチカート・ファイヴのボックスって特典…付かないですよね?」と訊いたら「つきますよ」とのことだったので食い気味で「買います」と伝えたのでした。ポイントが溜まったからナンバーガールの12インチを500円とかで買えましたよ。来月の僕よ、一緒に頑張ろう。

君には懐かしい10月でしょうか

「正月みたいな空とは」、「どんなだったか」。アパートのドアを開け、短い共同の廊下を歩いてそう考えた。バスに乗り、地下鉄に乗り換えて打ち合わせを一本。神保町で降りてマネージャーとエチオピアでカレーを食べる。マネージャーと別行動でユニオンをのぞいたりする。手元から知らぬ間にいなくなっていた(金がない頃に売っぱらってしまったんだろうか)CDを2枚救出。そこから歩いて移動。寒くなってきて寂しい気持ちになる。本当に淋しさには名前がないのか。名前をつけてきたのが僕たちなのではなかっただろうか。なにか音楽を聴こう、とイヤフォンをつける。20周年のツアーのトレーラーを見て以来、DC/PRG結成20周年ツアー<20YEARS HOLLY ALTER WAR MIRROR BALLISM>トレーラー(over 30 min) - YouTube DCPRGが妙に聴きたくてたまらない衝動に駆られていた。そういえばサブスクが解禁されていたな、と思ってAppleMusicでファーストを聴いたら、"PLAYMATE AT HANOI"の左チャンネルのバスドラムが凶悪すぎて笑っちゃった。すごいっすよ。何度も聴いたテイクなのに作用が変わった感じする。そしてそこからもう一本打ち合わせ。どちらも楽しみでしかたがない。早く言いたい。

打ち合わせを終えてさらにユニオンへ行く。気がついたら手に持っていたのがテレヴィジョンとかペイル・ファウンテンズとかエリック・カズで、「薄々思っていたのだけれど、これからの人生は過去に聴いていた曲を聴き返す感じなの?」となり、手に持っていた何枚かのCDを全部戻していった。ところがエリック・カズだけもうすでに棚がギッチギチになっていて戻すことができなかったので購入。電車に乗って新宿を目指した。

「プリファブ・スプラウトを聴かないと」。去年ベスト盤の『38カラット・コレクション』を聴いて以来、大事に聴いていたのだけど、「最新からさかのぼって聴くのはどうですか?」という優介の指南の通りに『クリムゾン/レッド』から聴いたんだけどまあそりゃ泣いちゃうぐらい良くて、そうしているうちにアナログの再発の報せがあったもんだからベスト盤で聴いて大好きだった"Jesse James Bolero"の入っている『ヨルダン:ザ・カムバック』と『アンドロメダ・ハイツ』を取り急ぎ探すことにした。タワレコの10階のTOWER VINYLで『ヨルダン:ザ・カムバック』を確保。素晴らしい接客をしてくれた店員さん曰く「やっぱりその2枚が人気です。私も…やっぱりその2枚…」「ふふふ、ですよね〜!」と答えるのだが私は「ですよね〜!」と言える立場ではないのだ。カードで払うか現金で払うか少し迷って現金で会計をして、エレベーターを降りていく。外は暗くなっていて、パチンコ屋の隙間を抜けるのにうってつけだった。ユニオンレコードで新入荷に目もくれず店員さんに「『アンドロメダ・ハイツ』は売り切れちゃいましたかねえ〜」と尋ねたら、ユニオンレコードに在庫はないけどインディー・オルタナティヴ館にある、と教えてくださり取り置きの手はずまでしてくれた。そのまますぐ移動。ざわつく胸を押さえてエレベーターのボタンを押す。心が落ち着くのを待つように店内を見て回った。あのCDもほしい、このレコードもほしい、でもプリファブ・スプラウトの『アンドロメダ・ハイツ』がほしい…となった最高のタイミングでレジに声をかけ、会計を済ませる。今度は楽天カードでの支払いだ!!

2階のアクセサリー館で実家に奉納する細野晴臣さんのサイン入り『はらいそ』を飾るための額を買い、新宿を出た。ここは現金。

部屋に帰り、3日ぐらい炊飯器に入れっぱなしだった白米をどうにかして食えないか、と炒飯にしたりして、実際食って大丈夫だったかどうかわからないまま『ヨルダン:ザ・カムバック』に針をおとす。溝をトーレスする音が聴こえる。音楽が始まる。「ベスト盤で聴いた曲だ」とか思って聴くんだけどとにかく聴こえ方が違う。こんなに寂しい音楽だっただろうか。テープの転写が聴こえた気がしたが、DLコードについていたWAVも聴いてみたら、それはテープの転写ではなく、もとから録音されていた演出だったようだ。"Moon Dog"で音像が急にモノラルになって演奏も少しラフになるところに驚いたり、そうだ、ベスト盤でも聴いていたけど"All The World Loves Lovers"はこんなにいい曲だっただろうか。たった5つの音を鳴らすだけのピアノの音に涙が出たりした。

Prefab Sprout - All the World Loves Lovers - YouTube

東京最後の日

去年買った変態っぽいコートを羽織って吉祥寺行きのバスに乗った。ココナッツディスクに寄って、金野さんから預かった戸張大輔「ギター」のプロモ盤を矢島さんに渡す。そして少し立ち話。つい長くなってしまう。これから僕も矢島さんも同じライヴを見に行く。ぼくはファースト・ステージ。矢島さんはセカンド・ステージ。台風の話をしながら「ファースト・ステージにすればよかったなあ」と矢島さん。「無職はほら、時間に自由がきくから、こういう時は早い時間にしないと」。

ココナッツディスクを出てユザワヤに寄って養生テープを探す。「窓ガラス割れたとき大変だからちょっとでも楽なようにするのにおすすめだよ」みたいな感じの動画をTwitterで見たのだ。大きな台風が来る。みんなそわそわしている。昨日、西友にないか見たんだけれどもやっぱりなかったのだ。あ、養生あるじゃん!と思ったらすずらんテープだった。ユザワヤにももちろんないのだ。

諦めて新宿まで出てそこから大江戸線に乗り換え、ビルボードへついた。受付で名前を言う。こんな気持ちで自分の名前を言うのはいつぶりだろうか。傘を預け、7インチを買い、コートを預けてバーカウンターに向かう。クランベリージュースを注文して5階席のいちばんはじっこに座る。しばらくするとライヴが始まった。自分が歌わない前提で書き始めるから書ける詩がある、ということを知ったのは割と最近のこと。「自分で作った歌を自分で歌う」ということを改めて考えさせられた。

ライヴがはねたらひとりで帰る。今日のライヴは女性の目線でえがかれる失恋の歌が胸にしみた。ひとりで勝手に失恋した気持ちにまでなっていた。エスカレーターを降りきるととらやがあったのでいくつか羊羹とホールインワン最中を買った。期間限定だか店舗限定だったかで紙袋の虎が折り紙仕様になっているのもご用意できる、と書いてあったので、それにしてもらった。かわいい。店を出て恋人に電話をかける。「いま終わったよ。ミッドタウンにいるけどなにか必要なものはある?とらやの羊羹はちょっと買った」「なんで羊羹?」「ふふふ、それぐらいいいライヴだったということだろうね」

 

吉祥寺からビルボードまでまったく外に出る必要がなかったため、今、雨がどれぐらい降っているか、というのが再び乗り換えの新宿に出るまでわからなかった。もうひどい雨になっちゃって、ちゃんと家に帰れなかったらどうしよう、なんて思ったりもしたけれど、周りを歩く人達をみて考えるのをやめた。なんの音楽も聴かないで街を歩く。大江戸線から地上に出てビックロにモバイルバッテリーを買いに寄る。すでに商品の陳列棚はほとんどからっぽで、さあどうしよう、なんて気持ちが遠くなっていったのだけど「今、店の入口に入ってきたばかりのが並んでますので」というので向かってみると小さいコンテナボックスに積まれたモバイルバッテリーが並んでいた。その中のひとつを手に取り「いくつか種類があるけれども」「違いを教えてもらえませんか?」と店員さんに訊く。「こちらが2回分ぐらい、そちらが3回分くらい充電できます。2回分の方はケーブルも最初からついているけど3回分の方はついてないです」と丁寧に教えてくれた。(じゃあ3回分だな)とそちらの方を手に取って売り場を離れるとき、店員さんが「最後の入荷です。あるだけです」と言っていたのが小西さんがとばしたジョークと重なった。

ビックロを出て紀伊国屋も寄れるかな、と思っていたけれども閉まっていた。汗をかきながら新宿の気温計に目をやると21℃と表示されていた。変態っぽいコートはまだ早かった。金曜の夜だというのに表通りはあまり人がいなくて、少し狭い道に入ると妙に人が多い不思議な街だった。電車もいつもより人も少なく、駅から一番近いスーパーマーケットはもぬけの殻だった。それでも長蛇の列のレジを抜け、炭酸水と野菜ジュースだけ買って帰った。いつもの街だ。明日はそうはいかないだろうけど、明後日はまたいつもの街であってほしい。どうか。どうか。