幻燈日記帳

認める・認めない

雨樋

諸々バランスが取れず苦しむ日々が続いているが喘息の山は超えた感じがあって、ちょっとだけ安心している。同僚の思い出野郎Aチームがかっこいいクラウドファウンディングを始めて(思い出野郎Aチーム presents ソウルピクニック・ファンディング - CAMPFIRE (キャンプファイヤー))自分の在り方を改めて問うた。体よく、アーティストぶって言えば今まで経験したことのないどん底のスランプ状態の中、今の自分が何をやったら、というのも見えない。それなら、今の自分にできることは抜け道を見つけるまでを記録することなのかもしれない。

台風クラブの新曲「下宿屋ゆうれい」に心が震える。あまりに胸にキたので歌詞を全部書きだしてしまった。「窮屈だろ/退屈だろ/思い出すよ/月のない夜を歩けるか/おまえなしでも暮らせるか/もういちど窓に腰掛けて/俺のこと惑わしてほしい」という詩に、紛れもない今が溶け出してしまった。とんでもなく心が軋む。引き戸のような、実家の廊下のような音をたてている。何度も自分の中でこの気持ちはなんだろう、と思いを巡らせると、若い頃に夢中で読んだ成年漫画の幻影にぶちあたった。きっと何かの間違いなのだろうけど快楽天にあったリリシズムを偲びながら、もう少しこの気持ちを掘り下げてみたい。

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ゼロ仮面

ゲームをやってテレビを見てときどきギターを持つ毎日。喘息が良くなっているわけもなく、心身ともにしんどい日が続く。それでも今日はスリーフィンガーの練習動画を見て、自分にやれるかどうか試す。前もやったけど気持ちが少し違う。

朝起きてラジオ体操をした。体を動かさないのはなれているが、ストレスが貯まりすぎるとおかしなことになるのはよく知っている。何年か前のツアーの最終リハーサルでまともに立てずそのリハーサルの時間をほぼ椅子に座り、床に突っ伏したりしていた苦い記憶が蘇ってくる。だからせめてと朝晩やろう、と決めたのだった。

訳あって最近のライヴ音源を整理していたら年末のFEVERで4/11のワンマンの発表をしていて、そこでお客さんがわっと沸いてくれたのが今あらためて本当に嬉しくて、本当に悔しい。

課金したいクラウドファウンディング、ドネーションが多すぎて本当に困っている。原書を読んだわけでもないのにどこかで心の支えにしていた吉田健一氏の言葉が心のそこで静かに揺れているのを感じる。

面倒がって洗濯物を放置した結果、家の洗濯機ではさばけない量になっていたので近所のコインランドリーにお世話になった。雨上がりの街、というものを久々に感じた気がする。

タウン・ページ・ブギ・ウギ

部屋で作曲。音楽家はライヴがなくなっても在宅で曲を作れるじゃない、っていうのはみんなもそう思っていただろうし、実際、僕もそう思っていたのだけど、実際やるとなるとなかなかうまくいかない。加齢と共に集中力は右肩下がり。最近は深夜にリハーサルスタジオを借りて作曲することが増えていたので、勘を取り戻せないし、自粛の日々でだいぶ精神をやられてなかなかうまく作れなかったけれども、なんとか断片までひねり出した。詩を書くのも深夜のファミレスで書くことが増えていたのでちょっとずつ、ちょっとずつ、やるしか、やるしか…!!

どうぶつの森を進めるも、木をぶっ叩き、竿をたらすだけの毎日。なんだか感じるところがあって急にスンと距離ができた気がした。

昼寝をして目を覚ましたらとんでもない寝汗をかいていた。晩飯は昨日残った餃子を更に焼く。

練習しよう

夜遅くまでNICE POP RADIOの仕込み。本来だったらスタジオで録音する予定だったのだが、ご存知の状況でそういうわけにもいかなくなってしまったため、自宅からリモート録音することになったのだ。いつもだったら担当Dの大和さんに京都から東京に来てもらうため、2週分録音するのだけど、とりあえずお試しなので1週分。選曲テーマも軽めのものにしてもらったけど濃い内容になった。

明けて早い時間から機材をああでもないこうでもない、と触ってから録音を開始する。お試しの第一回だからひとりで喋っている自分に戸惑い、急に気持ちが暗くなった。チェレスタとピアノで演奏されている曲なのに「エレピ」とか言っちゃうほど。謹んで訂正したい。録音はiPhone純正イヤフォン、スピーカー、コンデンサーマイクFaceTimeやLINEをかけ合わせてどれがいいか京都で判断してもらうことに。FaceTimeやLINEの音声を京都で録音してもらって、自宅ではコンデンサーマイクでLogicも走らせた。こないだ聴いていたチョコレートナナナナイト、序盤は酒井さんの音声が悪すぎて爆笑してしまったが果たしてどういう放送になるのだろうか。

収録を終えて、これまた車に乗ることも電車に乗ることもなく家にいるのに家に帰ってきた。先日の配信の後でも似たような気持ちになったが、労働には情緒が伴わなければならないのかもしれない。録画したテレビを見ていてパンが食べたくなった。最近は買い出しに行くときも何日か分の買い物をしなきゃいけなかったので車で行っていたから、散歩がてらパン屋を覗く。こうして歩くのも、天気がいい日すら久しぶりな気がする。駅の方向に向かって音楽を聴きながら歩く。パラダイス・ガラージの「チョコパ」という曲がシャッフルでかかった。大学に向かう途中に何度も聴いた歌だよ。不安しかない毎日があの頃と違った形で顕現する。駅へ向かう道がムーンライダーズの「Don't Trust Anyone Over 30」を聴きながら「このまま小田原の海に行ってしまいたい」と思っていたあの頃に重なる。人気がないわけではない列車が踏切を過ぎたとき、その列車が新宿行きでなくてよかった、と思った。

「そうだね、とびきりあまいパンが食べたいよ。生クリームがビッタリ塗ってあるような」とパン屋を覗くも夕暮れが近づいていたからあまりものはなく、チョココロネやベーコンエピなどを買った。そういえばトイレットペーパーも心もとなくなってきたな、と駅前のスーパーへ向かった。普段使っているものはなかったけど無事に買えた。薬局で少なくなってきた常備薬も買って結構な荷物になっていたのだが、このまま住宅街を抜けるのはシャクだ、と広い道路に向かって遠回りをした。まっすぐ歩くと急に視界が開けて普段遣いしている大きなスーパーが誇らしげに佇んでいた。緩やかなカーヴをじっくりと歩く。雲ひとつない夕暮れどきに剪定された木も葉桜も染まっていく。そうして私は「今年の四月はまだ寒くて春が来てない」と歌うのだ。

皆笑った, a song by Pizzicato Five on Spotify

在宅・月光密造の夜

4/11にホールライヴをやる予定だったのにコロナウイルスの影響でやれなくなってしまった。配信はやろう、とみんなで盛り上がっていたけどそれすら叶わなくなってしまった。なのでカクバリズムのタッツに知恵を借りてカクバリズムのアカウントから在宅で配信することになった。前日の夜、カレーを仕込みながら動画配信に必要なスキル、設定などを教え込んでもらって無事配信はできたのだが、アーカイヴを聴き返してみると音が悪かった。せっかくスパチャで課金とかもしてくれたのに申し訳ねえ〜。これをバネに定期的にやっていこうと思っていますのでよろしくおねがいします。今回、セットリストも珍しく事前に決めました。こういうのはきっと最初がお客さん一番多いだろうからいわゆる代表曲とされるようなものをストレートに演奏してみたけど、今後はもうちょっとゆるいのとかリクエスト大会とかもやれたらいいよね。

ライヴを終え、家に帰る、という行程がないのも不思議だ。iPhoneで音楽を全曲シャッフルで流しながらの帰り道がないんだ。車にも乗っていない。達成感はあったのだけど、その達成感の先というのが普段はあったんだな、と実感した。むちゃくちゃなインスタントラーメンを食べて、その日のライヴの録音をチェックする。リハーサルの録音で使っているレコーダーだけだと弱かったので急遽SHURE SM57も立てた。大学生だったかの頃に豊田道倫さんにライヴ会場で「ROCK'N'ROLL 1500はレコーダーはTASCAMの8tr、マイクは全部57で録った」と教えてもらって「まじかよ!すげー!」と買った57だった。だが、つい最近「全部(SHURE SM)58」と言われて大いにずっこけた。聞き間違いだったとしてもささやかな運命の分かれ道のひとつだった気がする。

録音をチェックだけするつもりだったのだけど、なんとなくそのまま作業を始めてしまった。トラックを分けてEQやコンプ、リミッターをかけてみる。ノイズが乗っちゃったところをいろいろ工夫して聴きやすくしてみる。自分のなかでいい具合になった、というところでスタッフに向けて送信。作業をして頭が冴えてしまったのか、ねむたくて布団に入ったはずなのになかなか寝付けなかった。でも、プロモーションを終えたあたりからまったく働かなくなっていた頭がやっとちゃんと動いた、という感じもした。数日前の日記でも似たようなことを書いているあたりから察するに、そう思わないとやっていられないんだろうな。

アーカイヴ、しばらく残そうと思っています。作業した音源もなんらかの形で発表できたらと思っています。音、じゃみじゃみだけど雰囲気だけでも楽しんでもらえたら〜

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ギター・餃子・カーティス

昨日は部屋で歌った。曲数からしたらそんなでもないんだろうけど、とにかくひたすら誰かの曲を片っ端から歌ったような気がする。本来だったらその日は4/11の「真説・月光密造の夜」に向けた最終リハーサルの日だったのに、こんな気持ちになっているなんていつの段階だったら想像できただろうか。

さすがにふた月もライヴがないからいろいろな支援の制度を覗き見た。ため息をつく。

TLを見ていたらこれに27万もいいねがつくのか、というツイートを見かける。そう思う人が居てもいいと思うし、ツイートした人に対してそりゃないだろ、とかは全く思わないんだけど、その発言をTLで見て「うんうん、そうだよね」ってちょっとでも思えてしまう人がいる空気がつらい。先の見えない毎日。いつぞやの日記で「もう怒るのにつかれちゃった」みたいなことを書いたけど、わかっていたのだけどやっぱりまだ怒っていないといけなかったんだな、と辛い気持ちになった。

仕事の筆はまったく進まなくていよいよ焦っているのだけど、あつまれどうぶつの森をはじめました。ざわざわした気持ちが少し安らぐ。今日は餃子を作るんだ、と意気込んでいたのにスーパーにひき肉がなかったのでカレーつくるときのために温存しておいた塊肉をブンブンチョッパー(人力みじん切り機)にぶちこんで、脂が多いバラ肉もちょっと混ぜてミンチにして作りましたよ。

非常事態宣言が出される直前に吉祥寺のココナッツディスクに行って買ったレコードを聴く。大きな窓のあるココナッツディスクはアルコール消毒も完備、換気も完璧だった。いつも散髪に行っているtete coqetteも数日前、テレビで換気、アルコール消毒を徹底、更にはお客さん同士の距離もしっかり取る、という徹底ぶりで営業している、とテレビでやっていた。ともかく場所がないとどうにもならん。壁にずっと欲しかったジョアン・ジルベルト「三月の水」のアナログがかかっていたので購入。矢島さんにおすすめのレコードを何枚か聞く。そのうちの1枚でカーティス・メイフィールドを挙げてもらう。高校生の頃に図書館にあったベスト盤を聴いて「かっこいいな〜」ぐらいには思っていて、その後もアルバムを何枚か聴いていたのに自分の中でどうにもバチン!と来なくて、「いつかわかるさ」とあまり深追いもしていなかったのだけど、話の流れでカーティスの話になって"BACK TO THE WORLD"というアルバムを薦めてもらった。少し聴いただけで突然わかった。また楽しくなります。

Back To The World by Curtis Mayfield on Spotify

 

アイム・ア・トラブルド・マン

某スタジオに忘れてしまったヘッドフォンを取りに行った。玄関先でほんの少し言葉を交わしたぐらいで帰ってきたのだけども、気持ちが少し軽くなった。そのほんの少しが今は大切なんだろうなあ。車で行ったから西荻窪に寄って薬局と書店を回った。あらゐけいいちさんのCITYとかpanpnayaさんの新刊を買った。こうして本屋に来れる日。

ライヴはすべてなくなってしまった。今は延期という言葉が唯一の希望だけれども、その希望がまやかしのようにも思えてしまうほど、心は押しつぶされてしまっている。ミュージシャンの仕事はライヴだけじゃないじゃん!っていう人もいて、たしかにそうだ、と、京都で持っているプログラムのための選曲をしたり、上がってきたミックスを聴いたり、締切をとうに過ぎてしまった案件を呆然と眺めることしかできていなかったんだけど、今日届いたプリファブ・スプラウトザ・ガンマン・アンド・アザー・ストーリーズ」を聴いていたらほんの少しだけ元気が出てきた。今ならば上がってきたミックスをもう一度聴き直して、昨日とは違う意見が言えそうな気がする。何度ギターを抱えても過去に書いた自分の曲をなぞることしかできなかったけど、明日なら違う気がする。明日目が覚めて、悲しい気持ちになったとしても、ほんの一瞬でもこういう気分になれた、ということを残しておきたい。

https://www.youtube.com/watch?v=8POS7A2imkY