幻燈日記帳

認める・認めない

Last December

プリンスの"the rainbow children"のアナログが届く。改めてプリンスに向き合うきっかけになったレコードだからアナログでの再発は本当に嬉しい。裏ジャケットにはられていたステッカーをきれいに保存するべく切り取っていたら鼻血が出た。8分近くあるラスト・ナンバー"Last December"は一瞬の気も抜けない大名曲で、何度もその音楽の中を跳躍して、見たことあるような、ないような、だがしかし在るべきところに戻ってくる。この快楽と言ったらない。そうして遠くのミネアポリスに思いを馳せる。"baltimore"を歌ったプリンスが今、もしいたらどんな気持ちでいたのだろうか。つらい出来事や棚上げされてしまったことがあまりにも多すぎていろいろついていけない。

Last December, a song by Prince on Spotify

なにか食べるものがないか、と冷蔵庫を見たが、何もなかったのでスーパーにいった。道中、ワイヤレスイヤフォンを拾ってしまい交番に届ける。なにかをなくしてつらい気持ちになるのも今の私には耐えられそうにない。どうか落として不便に思っている人がいたら見つけてほしい。あなたのワイヤレスイヤフォンは駅前の交番にちゃんとある。

夜はシンリズムくんとトーク。配信されているということを忘れたかのようにいろいろ喋りすぎた気がする。反省もしています。

4800円の呪い

ナイポレの収録のために自分のレコード棚を隅から隅まで見渡してみる。昔、はじめていったあるレコード屋で勧められるがままに買ったはいいのだけど4800円もしたレコードがある。聴いたこともないレコードに4800円ものの大金をポンと払ってしまった、という罪悪感(5/28追記:これには語弊があった!聴いたこともないレコードにお金を出したことに罪悪感が生まれたのではなく、「流されて買ってしまった」という罪悪感だった)がなぜか自分の中で育っていき、とても後ろめたいことをしてしまった、とまともに向き合うこともできていなかったのだけど4年も部屋のレコード棚になにくわぬ顔をして収まり続けたのなら、それはもうただのレコードだ、となり針を落とす。4年経っても4800円、と思い出すのだからまだフラットではないにせよ、Discogsで600円ぐらいで売られているLPだったとわかっても、複雑な気持ちになり続けても、こんなに素晴らしい曲が入っていたのか、という圧倒的な事実に触れ、最終的には笑顔になれた。この4年間の無意味な闘いは一体なんだったんだろう。

デモを整理して、譜面を書いていく。6月からは録音も再開できそうで、支度を少しずつしているが、どうにも体と頭が追いつかない、と部屋の片付けを少しだけした。

在宅・月光密造の夜 Vol.3

自宅ライヴ配信シリーズ、リクエスト大会仕様でお届けした「在宅・月光密造の夜 Vol.3」、怪我なく終了しました。現在、回していたLogicに張り付いてミキシングをしています。今回はリクエスト大会、と謳いみなさんから事前に頂いたリクエストを中心にセットリストを組みました。基本的には1位から3位は全曲やる、過去2回の配信ライヴで演奏していない曲を中心に選ぶ、というルールでやりました。それに加え、当日リクエスト枠も用意した結果、以下のようなセットリストに。事前リクエストでの順位が出ているものは備考も加えカッコ書きのなかに書きます。

1. スミレとヘルメット(一番乗りリクエスト) 2. ストーリー(1位) 3. 花百景(当日リクエスト) 4.返信(同率3位) 5. いつかの手紙(同率4位) 6.さかさまとガラクタ(当日リクエスト) 7. 私の好きな青 8. どうしてこんなに晴れているのに(同率3位) 9. S.F.(2位) 10.ラジオのように(当日リクエスト) 11.花束にかえて 12. ガール(同率4位) enc1. 古い写真 enc2. 彗星問答 enc3. 月の器

という非常に特濃な配信になりました。一見さんが楽しめたかどうかだけが心配です。1位だった「ストーリー」は11票、2位の「S.F.」は10票、3位の「返信」「どうしてこんなに晴れているのに」は7票でした。「いつかの手紙」「ガール」は6票で同率4位でしたが「暗礁」「君がいるなら」も同率4位でした。「私の好きな青」は3.5票(2曲投票している方がいたので0.5扱い)、「花束にかえて」も3票でしたね。「古い写真」に5票も入っていたのでアンコールで取り上げました。「彗星問答」の知名度で4票入ったら実質1位だよね、と思いながら演奏しました。「月の器」も4票入っていて驚きました。ちなみに「スミレとヘルメット」は3票、「さかさまとガラクタ」は1票、「ラジオのように」は4票でした。全体で222票のリクエストをいただきました。みなさま本当にありがとうございました。

アーカイヴは3/30までの公開です。今後、音源の販売予定もございますが、みなさまお早めに。

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さざんかの宀

時間の間隔は戻ったのだが怠惰に拍車がかかりキビキビと動ける気がしない。メジャーデビューしたあたりで今までの夏休み人生を返上しているんだな、なんて思ったこともあったのだけど、今は夏休み人生より重い罰を背負わされているような気がする。

胸を撫で下ろしたと思ったのに気が滅入るニュースが続く。やっぱり「旦那が50万稼いで奥さんがパートで25万稼いで」みたいなことを言い出したときに強く反発するべきだったんだ。怒っているのも疲れちゃった、なんてちょっと前はいったけど、怒り続けないとダメなんだ、とさらに暗い気持ちになるし、幸か不幸か燃料には事欠かない。

積んでしまっていた漫画を読むゾーンは継続している。うれしい。

3回目の在宅配信ライヴが決まる。次はリクエスト大会。過去二回は弾き語りだとあまりセットリストを決めないスカートがかっちりセットリストを決めて臨みましたが、今回は事前リクエストに加えたぶっこみリクエストという構成でやることにした。もう日程もみんなに決めてもらおうよ、となり、現在アンケート&リクエストを広く募っています。スカートの過去に発表した曲のなかからリクエストをいただけたら嬉しいです。上位三曲は多分やる。そして1,2回でやってない曲を中心に選んで、さらにはぶっ込みリクエストに応えていく、みたいな。みなさんよろしく。21日の23:59まで受け付けています。https://forms.gle/YgLyanfr9PDvTJzRA

瑠璃色の求肥

締め切りは少し過ぎてしまったけれどもひとつのデモを送信。達成感があり、logic上で何度も繰り返し聞いた。

ひとつつきものが落ちたのか、さっぱり抜けていた「時間」の概念が戻ってきた気がする。いつものようにゲームをしていて時計を見たら2時だった。その時に「えっ?まだ2時?」と久しぶりに思えた。この2ヶ月近く、ゲームをしてもラジオを聴いてもテレビを見てもソファ座ってるだけでも「えっ?もうこんな時間?」といった具合であっという間に時間が経っていた気がするのだ。とにかく今はゲームばかりしていた毎日に飽き飽きしたんだよ、だなんて思いたくない。

同じカテゴリの波だったのかもしれないけれど、先週のNICE POP RADIOで「漫画とか全然読めなくなっちゃった」とか話していたのに急に読めるようになった。それに気がつくと本棚に積んでしまっていた漫画が大量にあるとわかり、それらを読んでいった。

松永良平さんから受け取った#bookchallengeのバトンが止まってしまった。7日分、7冊の本の表紙を無表情で投稿する、というものだったのだが、3日で止まりました。尾崎翠さんの河出文庫版「第七官界彷徨」とボリス・ヴィアンの詩集がなぜか出てこなくて諦めてしまったのでした。多分ひとつ前に使っていた派手なカンペールのかわいいカバンに入れっぱなしのはずなんだけどそれすら見つからない。

自粛生活に入ったときは職業的に曜日に縛られない仕事だから土日はスーパーいかないぞ、他の方々に譲るんだ、と誓ったのだが「気の緩み」なのか冷蔵庫の中を切らしてしまい、日曜なのにスーパーに出かけた。パーカーを着て部屋を出たのだが、夏みたいな天気で本当に時間の概念が抜けてしまったのではないか、と頭を抱えた。スーパーは「これが我々の知らない日曜日のスーパーマーケットだったのか」という賑わいで、少し引いた。自粛の最中というのは、実際に滅多に外にすら出なかったから、夕暮れのいつもの交差点にどんな光景が広がっていたか見当もつかない。夕飯はからあげをあげました。

冷めない紅茶

明け方、豊田道倫さんから着信があって驚いた。昔買った八木康夫氏が回していたビデオをマスターにした「実験の夜、発見の朝」リリース後のライヴをおさめたCDRのライナーを思い出す。ざっくりした内容を書くと、ある日突然八木さんから着信があることに気づき、かけ直したら八木さんが電話に出て「とても長いこと眠ってしまっていた。豊田くんからの電話がなかったら死んでいたかもね」というものだったと思う。着信で目が覚めたが電話を取りきれなかったのか、それとも取ったのだけど無言だったのか、覚えていないがとにかく僕は豊田さんに電話をかけ直した。しかし応答はなかったように思う。寝ぼけていたから記憶は曖昧だが目を覚ましたら豊田さんから「間違い電話だと思うけど大丈夫?」とメールがあった。事情を説明したら「スカートの新曲、こっちのスーパー玉出でもかかってるよ」と教えてくれた。僕には豊田さんと八木さんにあったみたいなドラマチックなことは起こらなかったけど、と少し笑ってみる。

アラームで目を覚ます。昨日と今朝の熱い余韻の中、ゲームで少し頭を動かして作業部屋で作業。別テイクのスケッチを制作して送信。そのままNICE POP RADIOのリモート収録の準備。前回の配信ライヴからほぼそのままになっていた機材の配線を少しほどいて最適なものにしていった。放送でも告知していた通り、来週は外仕事特集。客演したものや提供した楽曲をかけたのだけど、8年前の音源とか久しぶりに聴くとほんのちょっとだけ照れくさかった。2曲ぶんぐらいもじもじとしていたから少しだけ心配。

スケッチを先方が気に入らなかったらどうしよう、とうじうじしていたが事務所から連絡があり、とてもいい感触だったそうだ。心の底から安心した。安心した途端、なんだか時間の流れがゆったりしたような気がする。ゲームをしていようが曲を作ろうとしていようがなにをしていてもあっという間に終わっていた1日の感覚が、ほんの少しだけ長く感じるのだ。いつもより雑な食事だったというのもあるかもしれない。麻婆春雨とウィンナー茹でただけだったしな。何かの錯覚だとしてもいいのよ。少なくとも4月に入ってしばらくの「あの感じ」ではないのだ。これがいいのかわるいのかわからないからまだ素直に喜べないし、喜ぶにも悲しむにも参照するべきであろう感情が足りなさすぎる。

松永良平さんからbookchallengeなるバトンが回ってきた。「なるべく非マンガで」とのことで「ふふふ」となる。さあどうしよう。

はちみつの滝

作業の合間にどうぶつの森トランプマンの服を作った。これがいい具合なんだ。その後も作業はしていたがやっぱりなかなかうまくいかない。しかし昨晩の感じからは少しずつ先に進んでいる、かつて曲を作っている時のような雰囲気がした。曲に入っていける瞬間があった。日付が変わる前に事務所から催促のLINEが届く。今からでも入れる貸しスタジオはないものか、と調べるのだけどどこも22時で閉めてしまっていた。ここ一年ぐらいは曲書くときは深夜の貸しスタジオと決めていたのに、そうできないのがつらい。しかしその後、追い込んでいった結果、やっと形になるきっかけを掴んだ。思い切り歌いながら作れる時間ではなかったからか、メロディが口をついて出るのではなく、アイデアがメロディのきっかけになった。簡単なスケッチを録音して残りは明日とする。気に入って欲しいけど、今はそれ以上にようやく、本当にようやく頭が働いたような気がして嬉しい。ここからさらにいつかに戻ることはきっとない。「あの頃の通りだね」「何にも変わらなかったね」なんて都合よくいかないことはわかっている。どうやって生きていく?そう問われているような気さえする。だからこんななまけものだけど少しは気合を入れなくては、と思うのだ。でもそれはすこし、さみしいことなのかもしれないよ。

スケッチを送信、風呂をあたため、iPhoneで深夜便を聴く。今夜はテレサ・テン特集。「つぐない」を聴くと子供の頃、親族の新年会とかでこの曲を叔母が歌った、ということをなぜか思い出す。