幻燈日記帳

認める・認めない

だいなし

ストレスが体に出るタイプで、リリース前とかになるとなんらかの形で体調を崩すのだけど、かつては初めての胃痛を経験し、それぐらいならいいのだけど、ヒステリー球、胸の中心に攣るような痛みが走る、まぶたが痙攣する、些細な音が鳴るたび右耳の鼓膜がざわつくなどなどいろいろあった。コロナ禍の中で新しく症状に加わったのが左耳がコポコポいう、というもの。すぐに耳鼻科にかかって耳管狭窄症では、と言われ「そんな気がする〜」っつって薬飲んだら治ったのだけど2週間も経たずに再発したのできっとそういうことなんだろう、と思うことにした。ヒステリー球は1年以上付き合い、右耳の鼓膜がざわつく感じに至ってはもう何年あるんだろう、とにかくもうなんかそいうもの、と捉えてつきあっていくしかないのかもしれない。

久しぶりにバンドでのリハーサル。突然の大音量に体がびっくりしてうまくバランスが取れなかった。これは音量的なこともそうだし、心の話でもある。耳栓をしたら今度は回ってくる低音に体が驚き、耳栓を取るとシンプルに大音量に目が回った。それでも最後に数曲確認で演奏したとき、充実感のようなものが戻ってきたのを感じた。音が大きいことも気にならなかった。汗だくになってかつて書いた曲を歌う。今、果たして音楽にどれぐらいの意味があるのか、社会とは、わたくしとは、生活とは。それらを飛び越した瞬間があった、ということは書き残しておきたい。

在宅・月光密造の夜 Vol.4

一旦在宅ライヴをやめよう、と思ったのは自粛がゆるやかに解除されていく雰囲気を感じたからでも、それを感じたいからでもなく、機材を自分で準備したりするのに限界を感じたからでもない。距離のとり方がわからなくなったのだ。通常のライヴがあって、その中の非日常として在宅ライヴがあるならきっといいのだけど、このまま生配信+ダウンロード販売という形態でのライヴ配信を同じタイトルをつけて、毎回やっていくと、日常がこちらにひっくり返ってしまいそうな気がしてしまい怖くなってしまった、というのが本当のところだ。盛んに叫ばれている「新しい生活様式」からはみ出てしまった気持ちはどうなるのだろう。歌でも歌っていないと気が狂いそうだった、というのは今でも残念ながら変わらないし、もしかしたらもともとそうだったのかもしれない。というわけで一応、「在宅・月光密造の夜」は今回でおしまい。気持ちの整理がついてもう日常にのみこまれないぞ、となったときなのか、または新しい現実の壁が私の行く手を遮ったときなのかは今はわかりませんが、せっかく多くの方に好評を頂いたのでいつかは必ずまたやりたいと思います。

 

今回のセットリストは大いに悩んだ。スカートのセットリストはホームかそうじゃないか、どうゆう状況のライヴか、など「イヴェントの芝目」を読めるだけ読み、草案を出し、メンバー、スタッフで揉んで最終的な形になる。しかし、YouTubeでの無料配信は客層も読めず、ひとりでうじうじしているうちに当日を迎えた。今回は前日に作業用のPCが大変なことになり(ex.iTunesことミュージックがほぼ初期化してしまった。本当だったらこのことだけで日記書きたいぐらいなんだけど……)、そのてんやわんやもあり、ここ3回は事前にメンバー、スタッフに送っていたセットリストも送れなかったのも問題のひとつだった。最後だから「月光密造の夜」を本編最後にやる、と決めたらスウィングもののメドレーで締めよう、ということだけ早々に決まり、結果的には以下のようなセットリストになった。

 

1. 静かな夜がいい 2. 視界良好 3. 君がいるなら 4. 沈黙 5. オータムリーヴス 6. だれかれ 7. すみか 8. ストーリーテラーになりたい 9. サイダーの庭 10. 夜のめじるし 11. アポロ 12. 月光密造の夜 enc1. ランプトン enc2. 駆ける enc3. わるふざけ

 

「君がいるなら」から「沈黙」はレコードの曲順。もうちょっと気持ちに余裕があれば5-7の曲順は見直していたかもしれない。でもどの曲も、特に「だれかれ」はとても楽しく歌えたからよかったのかもしれない。Vol.2では感情の赴くままに歌った「静かな夜がいい」も、少し抑えて、時々溢れるような感じになった気がします。中盤のよくわからない起伏も、とっちらかった今の気持ちととても重なる。後から振り返ってどうみえるんだろう。

 

youtu.be

アーカイヴは一週間。7/3に向けてDL音源も鋭意製作中です。

どうして僕は宇宙旅行

急性骨髄性白血病と肺炎で闘病をされているex.カーネーション矢部浩志さんのトリビュートの録音。このトリビュートは経費を除いた売上を全額、治療費として矢部さんにお渡しする、という企画。僕の大好きなドラマーであり、ソングライターでもある矢部さんのトリビュート、しかもこういうことならば、といつものスカートチームでの録音を相談、快諾、決行。素早く動くためにいろいろオッケーしてくれたカクバリズムポニーキャニオンにもビガップ。この日はテックの伊藤さんにも来てもらってドラムとベースとギターはせーので録り、いつもの通りドラムのオーケーテイクからベースとギターを改めて録音。そこから歌を録音してボーイはそれが終わった頃合いの時間を指定して来てもらうはずだったが録音が押してめちゃくちゃ待ってもらってしまった。優介はリモート録音。佐久間さんを送るときに「じゃあ、秋口に……」と言ってエレベーターに吸われていったのがなんとも来るものがあった。長い時間かかったけどいいトラックができています。

今回の矢部さんのトリビュートは(おそらく流通かけるとまあまあ手数料がかかるので純粋な売上をすべて矢部さんの治療費に回す、という意味で)一般流通はいまのところなしの予定とのこと。6/28までの予約受け付け。発送は7月中旬の予定だそう。現段階でもう買っている人は矢部さんへの信頼で買ってくださっている方も多いと思いますが、敢えてこの日記を読むようなきっと(広義の)孤独と上手に付き合えているスカート・マニアックスな皆さまにおすすめしたい。なぜなら矢部さんは稀代のメロディ・メーカー。すべての曲が最高なのはもう保証されている。購入はこちらからです。ちなみに日記は続きます。https://narisurec.thebase.in/

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髪が伸びすぎてどうにもならなくなったため、意を決していつも髪を切ってくれているtete coquetteのシゲルさんに連絡を入れた。すると今日空いている、と返事がありそれに乗っかった。1曲デモを送信してから出かける。公共交通機関に乗るのは3月末にキャンペーンで飛行機に乗ったのが最後。空港からはタクシーで帰った。久しぶりの電車は換気のため窓が至るところで空いていたため、大江戸線のような轟音だった。本も漫画も気分的に読めず、あっという間に原宿に着いていた。歩きなれたはずの道が違ってみるのは、実際に違うからだろう。このひと月は本当に髪が邪魔で邪魔で仕方がなかったから切れて安心した。シゲルさんにも久しぶりに会えた。お互いの仕事の上での近況を話したりして、さっぱりとした気持ちで店を出た。新宿で乗り換えるついでにユニオンへ。マサエ・ア・ラ・モードのアナログがジャケの状態が悪いとかで安価で買えたのがとても嬉しい。オルタナ館にプリファブのシングルないかな〜と見にったら店頭でプリファブのベストがかかっていた。シングルはあったが高価なため、見送り。伊勢丹の地下でエシレの生菓子を買った後、紀伊国屋に向かい、三島芳治さんの「児玉まりあ文学集成」の2巻を手に取ったのだけど、日常と非日常が交差していてどうも座りが悪く、1冊だけでレジに向かうことができず、自分でもどういう風の吹き回しかわからないのだけどジャンプコミックスチェンソーマンを3巻まで買った。リアルタイムで連載されているジャンプコミックスを買うのはピューと吹く!ジャガーぶりだと思う。どんな話か知らないのに、数人の友人が面白い、と言っていたから買ったのだ。角座を曲がりヒコロヒーさんを想い、西武新宿線に吸い込まれていく。「2ヶ月半ぶりに電車で外に出た特別な日」だと思っていたがまるでよく知ってる休日みたいだ。いつかレコードでほしいな、と思っていたレコードが安く買えて、デパ地下をうろついてKIHACHIのロールケーキでも買って帰るか〜とか思っていたのにエシレの生菓子なんかあるの!?とテンションブチあがって、普段だったら読まないような漫画を買ったりしているのにきっと今日のことも忘れてしまう。車窓が流れていって「窓に明かりが灯っていく」のにね。綺麗さと禍々しさが混ざった空を見上げてイヤフォンを外した。いつもの時間からしたら空いている電車のなかで、何を考えていたのかすら、もう忘れてしまった。パディ・マクアルーンならこんな毎日をどんな風に唄うだろう。

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3.0.2.

レコーディング再開。今度はバンドだ。佐久間さんとなおみちさんにはその後のリハーサルで会っていたけど、バンド全員で集まるのは3/14にベーシックの録音で会ったとき以来。3ヶ月近くかかってしまうんだね。今回はスカートのプロジェクトではなく、外仕事。スタジオも広いところだったのでソーシャル・ディスタンスも取り放題だったし、演奏が終わったあとのプレイバック、チェックの間はスタジオのドアをずっと開けっ放しにしたりするなど、可能な限りの対策が行われていた。メンバーはそれぞれの仕事が終わって解散だったけど、僕はその後も残って作業。スタジオにいるあいだじゅうずっとマスクをしていたから耳がとても痛くなる。次のスタジオ(こちらは矢部さんトリビュート)もそう遠くはないので早急な対策を取らなければならない。久しぶりのスタジオはとても楽しかった。でも久しぶりの録音がいつもと違うスタジオということもあって、なにか通常に戻るのか、という気持ちにはギリギリのところでなれず。

タルト屋さんになりたい

リハーサル再開。しかし条件付き。澤部岩崎佐久間の3人で、佐久間さんの家から近いスタジオに2人が車で向かう、というもの。他の2人は在宅で考えてもらってレコーディングスタジオで合わせていくことにした。スカートは全員住む地域がてんでバラバラで、普段は中間地点のリハスタに入るけど感染の拡大を抑える努力の結果、こうなることに。みんなと集まるのも3月半ばの3人リハ以来だし(ああ!ホールワンマンは結局全体リハは一度もできなかった!!)、アンプで音を出すのも久しぶりだ。知らない街の知らないスタジオで矢部さんのトリビュート盤の曲を合わせたり、仕事で演奏する曲を合わせたりする。全てがいい方向に向かい、リハーサルを終え、ロビーでだらだらしながら近況を話し合った。「職場の近くの評判のとんかつ屋、こんな時期なら空いてるかなって思っていったんだけど全然混んでたね」「ミュージシャンやってると家から出ないだろうけど」「街はもう割と普通でさ」と佐久間さん。行きの電車は混まないけれど帰りの電車は混むそうだ。そういえば、電車に乗るのは昼過ぎか夕方以降のことばかりだ。外の世界がただでさえ遠いのにまた遠くなった気がした。

リハーサルの前は医者にかかっていた。前日、改めて泌尿器科にかかり、レントゲンを新たに撮ったが「石が見えないんだよね〜一応CT撮ってきて」と言われ内心震える。都内にあるクリニックのどこがいいですか?と訊かれ、中野や新宿を押し除けて池袋を選択した。車で池袋まで向かった。クリニックの待合室ではNICE POP RADIOのXTC特集に備えて伝記を読んだ。新人バンドが評判を得て、夜な夜な熱いギグをするライヴレポートが転載されていて胸が熱くなった。そしてDrums & Wiresのツアーで客入りがとても悪かった描写に泣く。「トワイライト」のツアー、東京札幌は満員だったのになんで大阪名古屋あんなに人入らなかったんだろうな……とページをめくる指に気持ちがさらに入った。診察室に入り簡単な問診。酒は飲むか、タバコは吸うか、などを聞かれる。そして「エコーだと石があるっぽいんですけどレントゲンだと写らなかったみたいで。それで一応CT撮ってこい、と……心配で心配で。」と説明をすると「また2,3割はレントゲンでは写りませんからね」と言われ(……2,3割で爆発するロシアンルーレットなら嫌だけど2,3割打つバッターなら全然いいもんな……)と考えるに至り、心が軽くなった。CTを撮る時、若い医師が「これからCT撮るんで……ズボンをこちらが用意するものに履き替えて欲しいんです。これからお持ちしますんで」と言うので「そんなに大きいものありますかね……」と返すと、最終的には履いていたジーンズを腰まで下ろすという折衷案が提示された。あっけなく撮影は済み、会計もそれに倣ったようだった。池袋の街、それも西口は人もまばらでABCに初めて入り、洋食を堪能したのちココナッツディスクにも顔を出した。中川くんはいなかったが新入荷コーナーにはPrefab Sproutの"When Love Breaks Down"の12インチがあった。未発表、未CD化の曲がいくつか入っているやつでずっと欲しかったのでとても嬉しい。それとTeenage FanclubのEPを買った。

時間をリハーサル後に戻す。みんなと別れ、東京の東側から西側に戻る途中、錦糸町を通るルートを走っていた。突然ピンときて以前行ったアジアカレーハウスに向かってみることに。テイクアウトがあったらラッキーだ、と思って車を停め、錦糸町に足を踏み入れるとそれは数年前にきた錦糸町の感じのままだった。アフターコロナの世界とは?「どう?」と声をかけてくるおっちゃんもいた。目当てのカレー屋に着いて「テイクアウトやってますか?」と尋ねると「やってるよ」と即答。うれしいね!「2つください」と言うと店主が既に包んであったものを渡してくれた。こんなにスムーズにいくとは思っていなくて笑ってしまった。猥雑な街を背に2ヶ月ぶりなsuica決済で駐車場代を払った。そうしていたらその何日か後には歌舞伎町でのクラスター感染が報道されていた。少し混乱する。アジアカレーハウスのカレーは最高だった。チキンカレーとマトンビリヤニのセットで1200円だった。

レコーディングのためにトレモロエフェクターが必要だ、と自転車で吉祥寺まで出た。身体を動かす悦びに浸り、楽器屋を回ったのだが山野にあったもの一択しか選択肢がなかった。試奏して慎重に購入を決断。これで私はまた強くなった。

はごろもひろば

レコーディング再開。とりあえず歌入れから。ストイックすぎる現場ゆえか、もともと歌入れにはスタッフはあまり来ないけど最少人数で歌ってないとき以外はマスクしたり、アルコール消毒は徹底したり。喜ばしいのかもわからずあたふたする初日が過ぎ、2日目でまあ働かないとどうにもならないもんな、とちょっとだけ気持ちが落ち着いた。最後のレコーディングは3月末、そのままニューシングルのプロモーションに出ている間にアレヨアレヨと状況が変わり、4月頭に予定されていたレコーディングはすべて延期、そして今に至った。初日のレコーディングに長袖のシャツを着ていったらあまりに暑かったので、2日目の今日は半袖のシャツを着ていった。長袖のシャツをボタンもしめずにフラっと出かける季節がとても好きだったから、なんとも言えない気持ちになる。車を走らせているともう暑く、窓を全開にしてスタジオに向かった。今日は2曲分の歌を録った。1曲歌い終わって汗だくになってしまった。ぐったりとスタジオのソファに倒れ込み、汗が冷えた頃、目が覚めた。夕暮れが迫る街に繰り出し、スーパーマーケットのお惣菜を食べ、また歌入れに戻る。懐かしいような、まったく別のもののような、入れ物だけが同じで、中に入っているものはまた違った温度になってしまっていないか、そんなことを考えた。その後も歌入れには時間がかかったが、日付が変わる前には家に帰れた。CALLの頃は4曲ぐらい朝から晩まで録音して4時ぐらいに家に着くこともあったなあ、なんて思い出す。コンビニで買った弁当を食べておそらく明日から売られる「在宅・月光密造の夜 Vol.3」の音源を調整、コード譜をpdfにしたりしていたらこんな時間。

足らぬ布田CITY

水中、それは苦しいの新譜の惹句に「ジャンルは炙ったイカでいい」とあり椅子から転げ落ちるほどの衝撃を受ける。90年代から活動する水中、それは苦しいをはじめて聴いたのは高校生のときで、確か同級生で現ココナッツディスクの中川くんから教えてもらった。アコースティック・ギター、ヴァイオリン、ドラムスという編成で、どうとも説明し難い音楽性。それゆえに音楽とはなんなのか、ということを改めて考えさせられ続ける存在なのだが、そこを逆手に取り、八代亜紀の「舟歌」を引用してジャンルを放棄し、新しいアルバムの惹句にするのだ。ムーンライダーズのメンバーが全員30代になってから制作された"DON'T TRUST OVER THIRTY"をはじめて聴いたときのような爽やかとは言い難い、独特な感触の感動だった。

数日前から下腹部に違和感があり、あらゆる最悪を想定した後、意を決して医者に向かう。レントゲンを撮り、エコー検査等を受けているときに4年前に似たような症状で医師にかかり、石あるから気をつけな、と診断されたことを思い出した。バイトの帰り道ごとに500ml缶のマウンテンデューを飲んでいた10年前を懐かしみながら「これからはあまりジュースは飲まないようにしよう」と決めたものだが、あれから4年が経ちまあまあ普通に飲んでることも思い出した。4年前と比べてめちゃくちゃ悪くなっているという感じではない、とのことでちょっとだけ安心。採血は記録更新。最高記録は6回目にして断念、というものだったが、今回は9回か10回か忘れたぐらいかかってようやく採血できた。ヴェテラン医師と若い医師、どちらも女性だったのだけど、腕を見ながらふふふと笑って「血管ほそ〜い」と言われる。マゾヒズムの有効性について考える。何度やってもうまくいかず。でもいいんです、じゃんじゃんぶっ刺してください。私が悪いんです。そんなに痛くない、とわかっていてもこれから注射針を刺される、と思うとどうしても緊張してしまう。総勢3名の医師が入れ代わり立ち代わりでやっと採血が終わった後にはぐったりしながらもどこかハイにもなった。