幻燈日記帳

認める・認めない

仮説

目が覚めたら昼の13時をとっくに過ぎていた。12時にスタジオライヴの告知があったからそれまでには起きてるでしょ、と布団に潜った自分が悪かった。マスクを持たずに街へ出てしまう夢を見た。そしてマスクを買わなければと未来めいた吉祥寺のキラリナ(「キラリナ」て!)でなぜかPITTAだけを求め続ける、という内容だった。

 

テレビをつけたら感染者増加のニュース。土日挟んでしまうなら、と思い切って車に乗り買い出しに向かう。車内ではまたプリファブ ・スプラウトを全曲シャッフル。最初聴いた時は「フツーのROCKジャン」と低く見ていた"The Golden Calf"が最近とんでもなくセンチメンタルな音楽に聴こえてきていたので、夕暮れ迫る街にとてもよく合っていた。吉祥寺のHMVで買えてなかったKhruangbinの新譜とズルい女の7インチ買ったりしていたら突然に頭がパカーンとなり、そのまま下のスーパーマーケットでやたら高い卵やらやたら高い牛乳やらやたら高いナスやらやたら高いパプリカやらを買い込んだ。今まであまり感じたことのない気分の高揚だった。黒酢まで買った。今なら苦手なアマプラとかHuluとかの番組を選択する画面も難なく乗りこなせそう、有名なあの映画を見て、あのドラマを見よう。同じような日々はもうすぐ過去だぜ!!!!と車のキーを回したらプリファブ ・スプラウトがかかるもんだから部屋に帰った頃にはすっかりおセンチになってましたとさ。

 

8/2の16時からスタジオライヴが配信されることになりました。6月までの在宅ライヴを経て、9月のホールライヴへのパイロットフィルムです。このライヴのための久しぶりのリハーサルをしていたとき、「楽器がでかい音で鳴っている」という恐怖が楽しさを超える瞬間というのがあって、どうにも心が晴れないまま耳栓してモヤモヤとリハしてたんだけど、最終的に耳栓とって最後の数曲やったら「あ〜これ〜」となりました。少し取り戻したところでリハは解散、そのまま本番、しかもいつものライヴとはモニター環境から照明から楽器のセッティングから全て違うからどうなるかなーと思ったんだけど、何から何まで手探りな中、答えではないかもしれないけど、そこに至ろうとするのが記録されだと思っています。いつものメンバー、いつものエンジニア、いつものレコスタだったから本来の意味での環境こそ違えど、少しリラックスできた気もするし。(「トワイライトひとりぼっち」の収録の時に映像も入れたんだけど、萎縮しまくって半ばトラウマになってしまって、結局映像自体もお蔵入りになってしまったという過去があるので、変に気が張っておかしくなるのがほんとうに怖かったんだよ!)16時からみんなでせーので見られる(アーカイヴされるまで巻き戻しができない)プレミア上映ですので、みなさま冷たい飲み物用意してご覧ください。

 

https://youtu.be/aorqBETTpS8

TKG

起きてラジオを聴きながら実況パワフルプロ野球サクセススペシャルで選手を作る。もっともらしい1日の始まりのはずだったが少しずつ座りが悪くなってきているのを感じる。

 

マイナビラフターナイトの無観客ライヴでのじぐざぐは凄かった。Aの話からBの話にいくならわかる。しかしAからJやNやTの話に出来る人はなかなかいない。AからアとかAから亜みたいな飛び方はたくさんあると思うけど、感動しました。

 

yes, mama ok?の「問と解」耳コピをさらに進めた。何ヶ月か前にやったときより一瞬核心に触れた気がしてドキドキした。そうなってたんですね〜!というところとこれのはずなのに違う気がする、の繰り返しで大変だった。

 

NICE POP RADIOの収録に向けて支度をしていく。その回は昔から好きなアーティストの特集回で、記憶の整理をしていく途中で開けてはならない記憶の蓋がぱかっと開いてしまい、何分かわーとかあーしか言えない時間があった。これがなくなる薬はないのか。実際の収録ではあれを話そうこれを話そうと計画を立てたのだが、結局1/10も言えなかった気がする。この感じに覚えがある、と探っていくといつぞやのアトロクで好きな漫画について語る回のゲストで呼ばれたのになんにも整理もつかず宇垣さんにめちゃくちゃ助けられたあのときの感じだった。果たしてどう聴こえるのか今から不安で仕方がない。

ないものはなぜないのか

ターンテーブルスパークスの新譜を乗せる。2枚組でまだ1枚目しか聴けていないけどとにかく"Stravinsky's Only Hit"にぶちのめされる。前作のライヴバンド然とした所作のアルバムももちろん大好きだけど、スパークス的としか言い表せない訳の分からない快楽よ!!!これこれ!!!!日本盤出てほしい

https://open.spotify.com/track/401QMqNNeCkxsaPftqiWtg?si=f_I3XgwURiC-6QSxqy8_9g

 

ここ数日、気持ちも落ち込んで体調も悪かったんだけどどちらも少しだけ盛り返してきたので作詞のために頭を回そう、と夜の散歩に出かけたらほんの40分ぐらい歩いただけで汗だくになって帰ってくるハメになった。風呂桶を洗い、カビカラーをして、鏡を付け替えた。頭が回る前に体が疲れてしまい、自分の想像していた未来に想いを馳せる。「想像していた未来と違う〜!」だとか「大きな窓と小さなドアーと部屋には古い暖炉があるのよ」だとかではない。もっと狭い範囲、目の届く範囲のそれだ。普通にライヴができて、普通にリハーサルに入れて、普通に友達に会えて、普通に深夜の貸しスタジオでギターを抱えていたはずの未来。非日常が日常の顔をしていたのか、日常が非日常を強要しているのか、もはや分からなくなってしまった。家から少し歩くと街道に出ることができる。そこから新宿方向へ。いくつもの街灯を数え、マスク越しに空気を吸う。いつもなら登らないような歩道橋に登るほど私はセンチメンタルだったようだ。出来かけの曲を繰り返し聴いていくうちに、こうなる前にしなきゃいけないことがたくさんあったんだなぁ、と思い返した。せめて酒ぐらい飲めたら。

正気でいたいなら

仕事の手もはかどらず、仕事ではない作曲もほとんどできず、もともと引きこもりだったけどさらに箔のついた引きこもりになってきていて、やれ喘息がどうの、やれ扁桃腺が少し腫れてるだの、やれアレルギーで鼻が通らないだの、些細なことが積み重なり更に扉を重くさせている。締め切りが確実にすぐそこで微笑みかけているのに(「どれ、もっと近くで顔を見せておくれ」と私によく似た老人は言うだろうか)、どうしても歌詞が書けなくて、どうやって歌詞を書いていたか1週間ぐらいかけて思い出そうとしたんだけど、思い出せないわけではなくてそこに蓋をしているだけだと気付いたのだ。だが、そんなことだって、もう1週間も前にはわかり切っていたことだった。

 

PCで作業をしながらプリファブ ・スプラウト名義で再発されたパディのソロを聴いていた。鳴り出した音の瑞々しさ(のようなもの)に震えながら「ああ、夕立なんてものがかつてあったよな」とカーテンに手を当てて外を眺めた。そんなに都合のいいことはないよね、と再び作業に戻って10分ぐらいしたら外から雨の音がしてきた。私の勘も鈍ったものだ。

 

どうしたら気持ちが軽くなるかもわからず、垂直に腕をあげたり、肩をぶん回してみるだけみるような日常なもんだからNICE POP RADIOの収録に全振りしている。普段のNICE POP RADIOは収録の前に1日予定を空けてその日にガッと選曲して、収録の当日にあーでもないこーでもないと曲順を決めていたのだけど、狭義の仕事は確実に減っているので選曲にやたら時間がかけられて楽しい。スタジオに行かない弊害は確実にあって、たとえばゲストが呼びづらい。現在はzoomで京都のディレクターとやりとりしながら音声を録音して送る、というやり方。音源はzoomを介して再生されるのだけど、そうすると音がとにかく悪く、通信状況ではコマ切れになったりしてしまうのだ。ゲストを呼んで「この曲いいんすよ〜」ってやるようなプログラムだから、どうしてもなかなか呼びづらい。ゲストがいたとして、二人のやり取りの音質をZOOMでどこまで保てるかは最近のラジオを聴いているとよくわかる。はやくどうにかなってほしい。だけどもとっても燃えてはいるのでここ2ヶ月ぐらいの選曲リストを見ると「いいな〜」と我ながら思ってしまう。

 

もう2,3ヶ月前の話だけどひょんなことから「ペット」をみた。あの大蛇が大きなブロックに潰されて死ななきゃいけない理由なんてあったか?とずっと思い続けている。僕には映画を見る才能がない。

 

部屋の掃除をしていたら16ページ目にしおりが挟んである新書が出てきた。そういえば買ったよ、これ、でもどうしてこの本を読もうと思ったのか思い出せなくて過去の日記、ツイッターiPhoneのメモにある「ひとからのおすすめ」や、ノートにまで遡ってみたのだけど手掛かりは見つからず、僕がこの人の影響なら普段読まない本も読みそうだな、という人のツイートを何人か見て行ったらようやくうすやまさんのツイートだったと思い出せた。どうして16ページでしおりを挟み、万年床の下から出てきたのかということこそ思い出したくもないが今度こそ少しずつでも読んでいくことになるといいな。

 

だいなし

ストレスが体に出るタイプで、リリース前とかになるとなんらかの形で体調を崩すのだけど、かつては初めての胃痛を経験し、それぐらいならいいのだけど、ヒステリー球、胸の中心に攣るような痛みが走る、まぶたが痙攣する、些細な音が鳴るたび右耳の鼓膜がざわつくなどなどいろいろあった。コロナ禍の中で新しく症状に加わったのが左耳がコポコポいう、というもの。すぐに耳鼻科にかかって耳管狭窄症では、と言われ「そんな気がする〜」っつって薬飲んだら治ったのだけど2週間も経たずに再発したのできっとそういうことなんだろう、と思うことにした。ヒステリー球は1年以上付き合い、右耳の鼓膜がざわつく感じに至ってはもう何年あるんだろう、とにかくもうなんかそいうもの、と捉えてつきあっていくしかないのかもしれない。

久しぶりにバンドでのリハーサル。突然の大音量に体がびっくりしてうまくバランスが取れなかった。これは音量的なこともそうだし、心の話でもある。耳栓をしたら今度は回ってくる低音に体が驚き、耳栓を取るとシンプルに大音量に目が回った。それでも最後に数曲確認で演奏したとき、充実感のようなものが戻ってきたのを感じた。音が大きいことも気にならなかった。汗だくになってかつて書いた曲を歌う。今、果たして音楽にどれぐらいの意味があるのか、社会とは、わたくしとは、生活とは。それらを飛び越した瞬間があった、ということは書き残しておきたい。

在宅・月光密造の夜 Vol.4

一旦在宅ライヴをやめよう、と思ったのは自粛がゆるやかに解除されていく雰囲気を感じたからでも、それを感じたいからでもなく、機材を自分で準備したりするのに限界を感じたからでもない。距離のとり方がわからなくなったのだ。通常のライヴがあって、その中の非日常として在宅ライヴがあるならきっといいのだけど、このまま生配信+ダウンロード販売という形態でのライヴ配信を同じタイトルをつけて、毎回やっていくと、日常がこちらにひっくり返ってしまいそうな気がしてしまい怖くなってしまった、というのが本当のところだ。盛んに叫ばれている「新しい生活様式」からはみ出てしまった気持ちはどうなるのだろう。歌でも歌っていないと気が狂いそうだった、というのは今でも残念ながら変わらないし、もしかしたらもともとそうだったのかもしれない。というわけで一応、「在宅・月光密造の夜」は今回でおしまい。気持ちの整理がついてもう日常にのみこまれないぞ、となったときなのか、または新しい現実の壁が私の行く手を遮ったときなのかは今はわかりませんが、せっかく多くの方に好評を頂いたのでいつかは必ずまたやりたいと思います。

 

今回のセットリストは大いに悩んだ。スカートのセットリストはホームかそうじゃないか、どうゆう状況のライヴか、など「イヴェントの芝目」を読めるだけ読み、草案を出し、メンバー、スタッフで揉んで最終的な形になる。しかし、YouTubeでの無料配信は客層も読めず、ひとりでうじうじしているうちに当日を迎えた。今回は前日に作業用のPCが大変なことになり(ex.iTunesことミュージックがほぼ初期化してしまった。本当だったらこのことだけで日記書きたいぐらいなんだけど……)、そのてんやわんやもあり、ここ3回は事前にメンバー、スタッフに送っていたセットリストも送れなかったのも問題のひとつだった。最後だから「月光密造の夜」を本編最後にやる、と決めたらスウィングもののメドレーで締めよう、ということだけ早々に決まり、結果的には以下のようなセットリストになった。

 

1. 静かな夜がいい 2. 視界良好 3. 君がいるなら 4. 沈黙 5. オータムリーヴス 6. だれかれ 7. すみか 8. ストーリーテラーになりたい 9. サイダーの庭 10. 夜のめじるし 11. アポロ 12. 月光密造の夜 enc1. ランプトン enc2. 駆ける enc3. わるふざけ

 

「君がいるなら」から「沈黙」はレコードの曲順。もうちょっと気持ちに余裕があれば5-7の曲順は見直していたかもしれない。でもどの曲も、特に「だれかれ」はとても楽しく歌えたからよかったのかもしれない。Vol.2では感情の赴くままに歌った「静かな夜がいい」も、少し抑えて、時々溢れるような感じになった気がします。中盤のよくわからない起伏も、とっちらかった今の気持ちととても重なる。後から振り返ってどうみえるんだろう。

 

youtu.be

アーカイヴは一週間。7/3に向けてDL音源も鋭意製作中です。

どうして僕は宇宙旅行

急性骨髄性白血病と肺炎で闘病をされているex.カーネーション矢部浩志さんのトリビュートの録音。このトリビュートは経費を除いた売上を全額、治療費として矢部さんにお渡しする、という企画。僕の大好きなドラマーであり、ソングライターでもある矢部さんのトリビュート、しかもこういうことならば、といつものスカートチームでの録音を相談、快諾、決行。素早く動くためにいろいろオッケーしてくれたカクバリズムポニーキャニオンにもビガップ。この日はテックの伊藤さんにも来てもらってドラムとベースとギターはせーので録り、いつもの通りドラムのオーケーテイクからベースとギターを改めて録音。そこから歌を録音してボーイはそれが終わった頃合いの時間を指定して来てもらうはずだったが録音が押してめちゃくちゃ待ってもらってしまった。優介はリモート録音。佐久間さんを送るときに「じゃあ、秋口に……」と言ってエレベーターに吸われていったのがなんとも来るものがあった。長い時間かかったけどいいトラックができています。

今回の矢部さんのトリビュートは(おそらく流通かけるとまあまあ手数料がかかるので純粋な売上をすべて矢部さんの治療費に回す、という意味で)一般流通はいまのところなしの予定とのこと。6/28までの予約受け付け。発送は7月中旬の予定だそう。現段階でもう買っている人は矢部さんへの信頼で買ってくださっている方も多いと思いますが、敢えてこの日記を読むようなきっと(広義の)孤独と上手に付き合えているスカート・マニアックスな皆さまにおすすめしたい。なぜなら矢部さんは稀代のメロディ・メーカー。すべての曲が最高なのはもう保証されている。購入はこちらからです。ちなみに日記は続きます。https://narisurec.thebase.in/

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髪が伸びすぎてどうにもならなくなったため、意を決していつも髪を切ってくれているtete coquetteのシゲルさんに連絡を入れた。すると今日空いている、と返事がありそれに乗っかった。1曲デモを送信してから出かける。公共交通機関に乗るのは3月末にキャンペーンで飛行機に乗ったのが最後。空港からはタクシーで帰った。久しぶりの電車は換気のため窓が至るところで空いていたため、大江戸線のような轟音だった。本も漫画も気分的に読めず、あっという間に原宿に着いていた。歩きなれたはずの道が違ってみるのは、実際に違うからだろう。このひと月は本当に髪が邪魔で邪魔で仕方がなかったから切れて安心した。シゲルさんにも久しぶりに会えた。お互いの仕事の上での近況を話したりして、さっぱりとした気持ちで店を出た。新宿で乗り換えるついでにユニオンへ。マサエ・ア・ラ・モードのアナログがジャケの状態が悪いとかで安価で買えたのがとても嬉しい。オルタナ館にプリファブのシングルないかな〜と見にったら店頭でプリファブのベストがかかっていた。シングルはあったが高価なため、見送り。伊勢丹の地下でエシレの生菓子を買った後、紀伊国屋に向かい、三島芳治さんの「児玉まりあ文学集成」の2巻を手に取ったのだけど、日常と非日常が交差していてどうも座りが悪く、1冊だけでレジに向かうことができず、自分でもどういう風の吹き回しかわからないのだけどジャンプコミックスチェンソーマンを3巻まで買った。リアルタイムで連載されているジャンプコミックスを買うのはピューと吹く!ジャガーぶりだと思う。どんな話か知らないのに、数人の友人が面白い、と言っていたから買ったのだ。角座を曲がりヒコロヒーさんを想い、西武新宿線に吸い込まれていく。「2ヶ月半ぶりに電車で外に出た特別な日」だと思っていたがまるでよく知ってる休日みたいだ。いつかレコードでほしいな、と思っていたレコードが安く買えて、デパ地下をうろついてKIHACHIのロールケーキでも買って帰るか〜とか思っていたのにエシレの生菓子なんかあるの!?とテンションブチあがって、普段だったら読まないような漫画を買ったりしているのにきっと今日のことも忘れてしまう。車窓が流れていって「窓に明かりが灯っていく」のにね。綺麗さと禍々しさが混ざった空を見上げてイヤフォンを外した。いつもの時間からしたら空いている電車のなかで、何を考えていたのかすら、もう忘れてしまった。パディ・マクアルーンならこんな毎日をどんな風に唄うだろう。

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