幻燈日記帳

認める・認めない

Ridin' Till I Die

アンコールが終わって幕がしまったあと、ステージ上は多分みんな興奮していた。やりきった。終わって優介と「2時間ってこんなにあっという間に過ぎちゃうんだね」なんて話して、楽屋に戻る。慶一さんのがリハーサルが始まる前の挨拶で「みなさんはこれから一週間ムーンライダーズのメンバーです」と言ってくださったこともあってか、ライヴが終わってもまだムーンライダーズのメンバーのような気がするのだ。帰りの車では「この編成だったらあの曲もやったらかっこいいだろうな」、なんてことを考えたりもした。

4月から6月にかけてやる予定だったライヴはミュージカルも含めてすべて中止になってしまったから本当にやれてよかった。スカートはライヴバンドとしては感染症に負けてしまったけどその後ろ暗さを吹き飛ばす強烈なライヴになった。最高だった。45周年をむかえてこうやって一緒に演奏できるなんて2007年の年末にクアトロで見たときは考えもしなかった。あの日のライヴ、1曲目は「さよならは夜明けの夢に」だったな、なんて思い出す。10代の頃に出会った勝手に私が師と仰ぐ金剛地武志さん、豊田道倫さん、うすやまさんの3人はライダーズを通過していて、もうその時点で奇妙過ぎる縁があるんだけど、その3人がライダーズを好きだと知ったのは好きになってだいぶ経ってからだったような気がする。豊田さんのシアターpooにライヴを見に行く前にタワレコで"Don't Trust Over Thirty"の紙ジャケットを買ってから行ったら鈴木博文さんが見に来てらしてそのままサインを貰ったこともあった。あれからどれだけの時間が過ぎたでしょうか。

 

(リハから本番の日記を書いていたのだけどネタバレしまくりなので7/2からはじまる配信のあとに載せてよさそうだったら載せます)

間違い探しはもう終わりだ

相変わらずのギター持つ、曲の断片できる、集中力切れる、ボイスメモチェックしながらApexやる日々。いい断片にいい断片を足したらいいものにかな〜と思ったんだけど、いざ足してみるといまいちいいのかどうかがわからない。

 

目覚ましがなる前に目が覚めた。

 

TOKYO FMで収録のため、久しぶりに都心へ出る。青梅街道をひたすら東へ向かい、到着し、担当がいなく、電話したところ、1時間早く着いたと気づいたのだった。車を神保町の方にやり、パーキングメーターに300円をぶっこみ15分だけユニオンを見た。学生の頃、レンタルして繰り返し聴いた「タモリ」を買った。

 

久しぶりに都心にいるな〜と思ってはいたけど、さっきスケジュール帳みて愕然とした。前回都心へでたのもどうやら4月末のTOKYO FMだったようだ。ちょっと前まで舞台の稽古で毎日のように外に出ていたけどあれよあれよと引きこもりが戻ってきて、ある段階でいくつかを諦め、幾分か晴れやかな気持ちで過ごせている今よ。

 

楽しい収録が終わり(6/6,13放送の"Terminal Melody"に出演です。CHAGE and ASKAさん、ASKAさんの楽曲について語っております。それはそれはキモ・オタ・キャッスル大爆発っつー感じでした)、タワーレコードでCD、レコードをどかっと買う。ミツメの新譜と言っても過言ではないあいみょんさんの新譜、諭吉佳作/menさんのCD2枚、Teenage Fanclubの新譜、アメリカン・ユートピアのサントラ、そしていつか買おうと思っていたポーギーとベスをいまだ!ここだ!えいや!と買った。物欲に火が付き、セレブ気分で伊勢丹で晩ごはん買って、吉祥寺からも新宿からも失われてしまったタピオカ屋、一芳の新大久保店によって帰宅。満たされた。機材を新調しなきゃいけなかったりするんだけど、それらの道筋を明らかにする前夜、私は誠実かつ雑に賃金を抱いた。

自転車に重りを乗せて

仕事の対価が入金された。還付金も入った。還付金はだいたい税金の支払いに消えるから気持ちの中ではノーカンだ。印税の入金額もいくつかわかった。そうすると、気持ちが大きくなる。ギターを持ってあ〜でもないこ〜でもないとやって30分粘ってなにもでなかったらApexという日々を抜け、久しぶりにココナッツディスクに行ってきた。矢島さんと近況を少し話してレコードを何枚か買う。(矢島さんのおすすめはどれも最高だった。近々NICE POP RADIOで紹介します。)その中の一枚にサニーデイ・サービスの「birth of a kiss」があった。部屋に帰るとき、階段を登ろうとしたとき、突然「FUTURE KISS」とつながっていたのか、と気づいて不思議な気持ちになった。今、それを聴いている。エレキギターの余韻の中で鈍く美しく光るその歪みがあまりにも眩しい。

 

open.spotify.com

私が夢からさめたら

仕事の作曲につかれてリハビリのつもりで別の曲を作り始めたら楽しくなってしまった。(楽しくなってきたついでに「菫画報」を読み返したりしていた。)佐々木敦さんに誘っていただいた文学ムック「ことばと」に書き下ろした「私が夢からさめたら」という歌詞にメロディを乗せようと思ったのだ。そもそもこの「私が夢からさめたら」、お話を頂いたときはもっと先の見えないスランプ中で、そのことを相談した結果、「間に合ったら送ります……」という超消極的な形で返信をしていた。何度か催促されて、もう無理だな、感じて、そのことをメールに打とうとしたとき、急に気持ちが変わってばーっと書いたものだった。少しずつ形づいていって、ここはこうじゃないんだけどな、と何度も歌って体が納得する形に落とし込んでいく。このコード進行じゃ「おれたちはしないよ」と同じじゃん、とか、書いた言葉を全部すくい上げることができなくて、詩先で曲を書く筋肉も衰えているんだろうな、とおもう反面、感覚的にはついに戻ってきた感じがする。まだまだリハビリ中だけど、動くようになったのだから、今はこれでいい。とにかく長い一年だった。でも、集中力だけはまだまだ戻ってこなくて、もうだめだな、と思ったらApexやりながらボイスメモを確認する、という日々。そんな日が3日ぐらい続いてようやく完成。2分45秒の簡素なデモを録音して、スタッフ、メンバーに送信。

たちっぱなしじゃお辛い?

創作意欲が戻ってきて、あ〜したいこ〜したいと頭の中が大変になりそうになる感覚(次ライヴやるときこういう曲あったら最高だよな〜とか、ODDTAXIのメロ決めるときにものすごく久しぶりにコード進行から作ったあの感じで作ったらどうなるだろう!とか)が久しぶりすぎて戸惑って結局1日じゅうApexをやってしまった。でもいいんだ。ちょっとずつやると決めたんだおれは。

手紙を書くようにからあげを揚げ、手紙を読むようにからあげを食べ、手紙をしまうように冷蔵庫にしまった。

NICE POP RADIOの収録。ナイポレも波があって、ちょっと前は変なドライヴかかった感じがあってそれはそれで面白かったんだけど、選曲もいい具合に凪いだ気がする。

ふりこのかげ

アフター6ジャンクションでおすすめの漫画を3冊紹介するため、漫画を読み返す。ほそやゆきのさんの「あさがくる」、熊倉献さんの「ブランクスペース」、鶴谷香央理さんの「レミドラシソ」の3冊。アトロクで紹介している漫画はどれも一生モノだぜ〜

 

あさがくる(四季賞2021春 四季大賞)/ほそや ゆきの あさがくる(四季賞2021春 四季大賞) - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ

ブランクスペース - 熊倉献 / #1 緑茶も紅茶も | コミプレ|ヒーローズ編集部が運営する無料マンガサイト

レミドラシソ 鶴谷香央理短編集 2007-2015 鶴谷 香央理:コミック | KADOKAWA

 

暗い日記に戻ります。

スタッフから5/22のライヴの中止の知らせが届いた。ベルマインツとのツーマン、とても楽しみにしていたライヴだったので無念。そうしてもう無理じゃないか、という諦念がしっかりと私に降りてきた。そうだった。ライヴバンドになりたい、とここ5年ぐらい思ってきたけど、ライヴバンドになりそこねたんだ、と急に腑に落ちた。「ライヴやりて〜」って思うけど、それは「2019年12月にやったイヴェントの続きをやりたい。ものすごく手応えのあったトワイライトのツアー、フジロックの感触を発展させていって、ライヴバンドになるんだ」という野心の先にあった亡霊だった、ということがよくわかった。(もしかしたらせっかく積み上げて、もうすぐ完成するかもしれなかったライヴバンド然とした佇まいを諦めたくなかったのかもしれない。)しかし、どこかの誰かが「諦めて前を向くよ」と歌ったように、諦念というのは今の私にとってネガティヴなものではない。在宅ライヴも前回のでようやくプレハブ小屋ではなくなったような感覚があったけど、きっとそういうことだったのだろう。感染症対策をしっかりしてやれるライヴはもちろんある。年末に見たカーネーションのライヴは本当に最高で、人生に於いてとても重要な曲だった「REAL MAN」がより特別な曲にもなった。そして、対策を徹底して開催されているライヴがあることも私にとっても希望であることは疑いようのないことだ。しかし、参加する予定だったミュージカルが一本コロナで潰れてしまったという経験を得て、今は人を集めるライヴはやりたくないな、という結論に至った。そして、今、ようやく、曲が作れそうな気がしている。

 

カクバリズムポニーキャニオンとZOOMで打ち合わせ。上ほど細かくないけど「ようやく曲がかけそうな気がしています」と伝え、「人を集めてやらなきゃいけないライヴは今はあんまりやりたくない」とも伝えた。暗い日記、と冒頭で書いてしまったが、私にとってはそうではない、ということも書き記しておきたい。

続・在宅・月光密造の夜 Vol.1

ゴミ出し以外で家から出ずにゴールデンウィークが終わった。かくして燃えカスだった私は久しぶりの在宅ライヴを完遂した。タイトルは「続・在宅・月光密造の夜 Vol.1」。いい加減な建前だけを塗りたくっていって出来上がった違法建築みたいなタイトルは、この現状を表しているようで気に入っている。去年の3月以降、なかなかうまく気持ちが整理つかなくて、そうしている間に社会と私がどんどん離れていくような気持ちになり、こんなときになにやったらいいんだ、とうまいことやれなくなってしまったし、たまにライヴがあってもやればやるほど辛くなるんだけど、それでもやっぱりめちゃくちゃ楽しい、が折り重なっちゃってぶつかり合っちゃって毎回感情がぐちゃぐちゃになって終わるのが常だった。でも今回は(例えば5/22のnestのライヴにみんな来てね、って心のそこから言えないとか、そもそもなんでこうやって在宅でやらにゃならんのか、とか思って辛い気持ちにもなるんだけど)楽しい瞬間の方が勝った気がする。「ストーリー」でめためたにギター弾きすぎてチューニング狂ったり、アンコールでリクエストの「回想」をやろうとしたら歌いだしのメロディが思い出せなくなるという謎の現象も起きたけどそれこそ「ストーリー」とか「おれたちはしないよ」から「沈黙」の流れやってるときとか「遠い春」やってるときは純粋に楽しい、という気持ちが湧いてきた。このまま気持ちが開けていったらいいな。

 

選曲は過去4回の在宅ライヴの選曲とかぶらないようにしたいな〜っていうところから始まったけど、そうなると一見さんお断りになるし、やっててノらなさそうだったのでリズムボックスを使っていい感じになりそうな曲を8割、リズムボックス使わなくてもいいけどやっておきたい曲(「君がいるなら」とかね)を2割選んでそこから絞っていった。CR-68はテンポのつまみがめちゃくちゃシビアでちょっと触っただけでがつんとあがってしまうから、テンポを動かさずにパターンを変えるだけ、テンポを変えるのも終わりの方だけ、とか決めて(「CALL」を一曲目にしたい、というのがまずあったけど)曲順も組み立てていったので、最終的なセットリストがあまり見ないような感じのものになっていってなんだか面白かった。