幻燈日記帳

認める・認めない

チェインジ

19日

佐久間さんと優介でApexをやる。佐久間さんがボイスチャットに入ったときに音声が不調で、「どうしたんですか?スロッビング・グリッスルみたいな音でしたよ」と言うと「おじだね」となり、優介がそこに入ってきて「もはやおじいさんだ」という話に落ち着いた。

 

21日

前日の夜からソワソワする。大好きなバンドにリモートで取材。通訳の方を介して「絶対これは訊くんだ」と決めたことはきけた。人生間違ってなかった。バイト代6枚同時再発に突っ込んだ21歳の自分をほめたい。うまくまとまるといいな。

トリプルファイヤーのライヴに行こうと思ったけど、部屋で明日対談する吉田の本「今日は寝るのが一番良かった」を読むことにした。面白くって、でもときどき食らう。この視点をもって自分の過去を照らしてみると、思わぬ落とし穴にハマり、そして大きい声が出そうになる。この感じは視点こそまったく違えど冬野梅子さんの「まじめな会社員」にも通じるなにかだ。

確定申告に向けて、ネットで買った様々なものの領収書を印刷する。買ったときは「こんな紙の束、使い切らないだろ」って思っていたA4の紙がこの部屋に越してきて2束目にして真面目に使い切ることになりそうだ。1束目は管理がずさんすぎて印刷に使えないものばかりになってしまったから、いつかのボールペンと同じく、使い切ったことがひとつ大人になった証のように自分のなかでしてしまおう。こんなことで大人になったかも、って自分のものにしようとする34歳にどうして俺はなっちまったんだ。こんな気持になるのも吉田の本「今日は寝るのが一番良かった」が悪い。

 

サンキューったらないね

2/15

 

夜中、ゴミを出したら雪が降っていた。結構大粒の雪で(34年間東京に暮らしているとわかる)(この雪は積もる……)と確信し、アパートの駐車場に停まっているすべての車のワイパーをあげていった。そう、人類愛である。

その後、POSEを朝5時まで観て、仮眠をとり、仕事部屋に戻り、窓の外を眺めると全く雪は積もっていなかった。仕事でもう一度観たい動画の閲覧権が消失したのを確認して、ラヴィット!を見ながらカレーそばを食べ、そしてすぐに布団に戻った。昼過ぎに目が覚める。眠っている間に妻が郵便を受け取ってくれていた。届いたのはTex Crickのアルバム。松永さんのインスタで見て、こんなジャケットで悪いはずがない、と思い注文したものだった。それと別口で注文していたBig Thiefのアナログも届いていた。Big Thiefは以前、NICE POP RADIOで「最近みなさんどんなの聴いてる?」っていうテーマメールを募集したときに若いリスナーが「最近はBig ThiefのUFOFを聴いている」と送ってくれてから聴き始めた。段ボールを開け、シュリンクを破り、Big Thiefの半透明のファクトリーシールを冷蔵庫に貼る。理由はない。なんとなく、そうしたかったのだ。

作業部屋に戻り、原稿仕事に向かいながらTex Crick、Big Thiefのアルバムを聴いた。どちらのアルバムも「この曲でレコードの片面が終わる」、と思わせてくれて嬉しい。

 

2/16

POSEを見る。シーズン2も見始めた。粛々と仕事も進める。

夕方、吉祥寺へ出かける。今年に入ってはじめてココナッツディスクに行く。ayU tokiOの「新たなる解」の最後の一枚を購入。他にもレコードをジャケ買っていく。矢島さんにも久しぶりにあって最近NICE POP RADIOを聴き出した、と教えてくれた。とにかくべた褒めしてくれて本当に嬉しかった。スカートというバンドもそうだけど、ずっとあると当たり前になっていって反応がなくなっていくのも感じなくもない(深刻ではないからお気になさらず)のでときどきこうやって褒められると嬉しくてたまらない。絶対にゲストで出てください!と伝えてお店を出た。

ユニオンで取り置いてもらったバッファロー・ドーターの新譜とメル・トーメのライヴ盤を受け取り家に帰る。メル・トーメのライヴ盤は「アット・ザ・クレッセンド」。よく見るジャケットだったけど、ぼくはずっとそれをベツレヘムから出たおなじみの1957年のやつだと思っていた。しかし、同じタイトルでその3年にリリースされた別物だと知り、さらにボートラが7曲入っているらしい、と知って慌てて探したのだった。

深夜、原稿を書きながらバッファロー・ドーターの新譜に針を下ろす。最高すぎてこれは昼間にでかい音で聴かねば、と途中で針をあげた。

ポーとなくなら

某日

 

妻が激推しするPOSEを朝5時まで見てしまった後に気がついた。仕事で見る動画のリンクの閲覧権がリンクを受け取ってから72時間で消失することを。一度見てとても最高だったからもう一度見てその仕事に臨みたい、と思ったのだが眠たい。リンクを貰ったのが2日前の11時。そこから72時間だから、今日の11時まで見られる。念のため、インターネットで「72時間」と検索し、我に返って「日時 計算」と検索し直す。やはり今日の11時まで見られる。現状動画の閲覧権が生きていることも確認して2時間ほど仮眠。眠い目をこすりPCに向かうと閲覧権が消失していた。

 

某日

 

ナイポレの収録。久しぶりの新入荷報告会。昨年から手に入れたあれやこれをどう1時間の枠に収めるべきかで大いに悩む。はじめてかけるアーティストが大半を占めてなんとなく嬉しい。

 

某日

 

誘っていただいて劇場に伺う。自分のコンディションの問題で終始ピントが合わなくて心の底から楽しむことができなかった。以前も似たようなことがあって、そのときは音楽のライヴだったのだけど、やはりピントが合わなくて、そういうときはどうしても自己嫌悪に陥る。どうして俺はこれを楽しむことができなかったんだ、とひとしきり考えて、考えて、考えて、落ち込むのだ。翌朝、目が覚めて後日あるという配信のチケットを購入した。

 

某日

 

ギターを手にしてすぐ置く日々が続いていたがやっと断片のしっぽを掴む。ウヒョー

ノーバディーズ・フール

スタッフとのやりとりの上で知念里奈の"CLUB ZIPANGU"の引用で「チョイ待ちBaby」って書いたのを慌てて消して「チョットマッテクダサイ」に変えた。ゴールデンハーフ

 

年明けに楽しみにしていたテレビが自分とは合わなかったことを思い出しては落ち込んでいる。もうひと月も経つというのに。

 

月に一度、お取り寄せでなんか頼むというのをしている。今月はPCに張り付いて岡山に行ったときに食べたスープカレーなっぱのカレーを取りうた。食べるのがいまから楽しみ。

 

筒井秀行さんの「書道教室」をちまちま読み進めていたのだけど、4話の「ジンギスカン鍋」で信じられないぐらい引き込まれた。この漫画、とにかく妙に読みづらい。なのに独特の愛嬌があって、読後感が最高に気持ちいい。

 

宇波拓さんからフリーボの「すきまから」が届いた。針をおろして数曲聴いて興奮して宇波さんにまとまらないメールを送ってしまった。

 

とにもかくにもギターを持つ。

 

Apexをやっていて今日なんか音声オンにしてる子供とマッチングするな〜と思ったら祝日だった。

みずうま

部屋で作業。修正なのだけど結構難しく、あーでもない、こーでもないとやっている間に日が過ぎていってしまった。

部屋の掃除をしようとするがうまくいかない。インスタグラムに1年放置していたNICE POP RADIOのプレイリストを投稿する際に、カメラ越しに見た自分の部屋の汚さというのは肉眼で見るよりもリアルで、脳みそというのは偉大だな、と改めて感じた。歩くのに邪魔なところに段ボールがあろうが、暮らしているとど〜でも良くなっていくものが、カメラを通して見たときに牙を向いてくるのだ。

アーント・サリーの再発を神保町の某店に取り置きしていたので取りに行った。ほしかったレコードもあったので新宿→神保町と車で流す。アーント・サリーのLPはbandcampで販売されたのを買おうと思ったらこの状況で送料が異常に高くてやめたのだけど、結局こうして店頭で手に入れたレコードの販売価格も6800円とかだった。新宿のタワーレコードでは浅川マキさんの再発と崎山蒼志くんの新譜を買いに行った。軽く店内を流してカエターノ・ヴェローゾの新譜も買った。その会計にポニーキャニオンから結婚祝いとしてもらったタワレコのギフト券を全部突っ込む。

夜は「サラリーマン川西の冬のボーナス50万争奪ライブ」を配信で見る。ダウ90000圧巻。ダウ90000寄席でも見たバーカウンター。妻は「よく昔の漫才師のネタに対してXXっていうネタがあって、みたいな話になるけど、このネタもそうなるんだな、っていう瞬間を見ていると思うね」と言う。街裏ぴんくさん、音楽のライヴを見に行って「こういうふうにギター弾けたらどんなに楽しいんだろう」って思う瞬間と全く同じ気持ちになる。イマジネーションの離散!

今日は一日遊んでしまったので明日は仕事を頑張る。そう誓う午前6時だ。

数は重要ではない

やらなきゃいけない仕事を棚に一旦あげて、風通しをよくしてから取り組みましょ、っていうわけでPCとテレビの前を行ったり来たりする。先日のライヴのエアー録音とライン録音を松田さんから受け取り、それを夜通しミックスした。

昼過ぎまで眠ろうと思ったのだが、午前中の郵便に叩き起こされた。ミックスの最終チェックを進めて、特典でメンバーに共有したリハーサルとしての弾き語り音源も添付……と思ったらやりたい形のボートラ扱いにはできなくて、妥協案としてテキストファイルにリンクを忍ばせる、という方法を取ることになった。だったら、とライナーノーツを書いた。落ち着かない心のまま、先手先手で洗濯機を回す。その合間にもう一度音源をチェックして、文章をチェックして、なんとかリリースにこぎつけた。ライナーや日記でも書いている通り、リハーサルができなかったライヴだから穴だらけ……になると思いきや、そりゃもちろんうまく歌えなかったところやコードがもつれたところはあるんだけど、そうじゃない部分ってあるじゃない、っていうことを残したかった、っていうことをライナーノーツにも書いたから一応添付しておきます。そのさらに下にはリンクも貼っています。BandcampFridayという奇祭があるんですけど、これはBandcampがこの24時間だけは手数料も取らずバンドにそのまま渡す、という催しです。去年を生きながらえたのはこのBandcampによるものが大きいっす。圧倒的感謝。日記に書いても急いで触れない人が多いだろうけど、いつであろうと聴いてもらえることはうれしいことっす。よろしくおねがいします。

 

この日の演奏はやぶれかぶれであり、誠実であり、私はとにかく楽しく演奏することができた。”MC1”で話していたメッセンジャーバッグの件で傷ついた心をファニーなものへと昇華できたのもよかったんだと思う。終演後の楽屋でカクバリズムの角張社長とタッツこと仲原くんに「今日の録音、次のライヴまでの期間限定とかで販売するのいいかもしれないね」と持ちかけ、ノってくれたのも嬉しかった。ライヴ盤はもともと「ある日の記録」という側面が大きいものだと思うが、今までスカートがリリースしてきたライヴ盤は(言葉が難しくて語弊があるかもしれないけれども)「スカートというバンドがこういうことを積み上げていった結果(ないしは物語)」みたいなものと捉えることが多かった。でもこういう演奏をした、ということを残しておきたい(ならば期間限定でなくてもいいのでは?とも思うのだけど、勢いある演奏を勢いよくリリースするにはなにかひとつそういうムードが欲しかったのだ)、と思えたのは2012年7月25日、渋谷WWWでの「月光密造の夜」以来かもしれない。これは2022年1月29日のスカートの記録です。

 

s-k-i-r-t.bandcamp.com

Mごめ

30日

 

数日前に白武さんから突然LINEが来た。「大鶴肥満を追ったドキュメンタリーの上映イベントにコロナで大鶴肥満が出演できなくなってしまったから代役をやってくれないか」という内容で一も二もなく飛びつき、出演することになった。GERAもstand.fmもどちらも聴くほどのまーごめ(マーちゃんごめんねの意)な私にとって、これほど嬉しいことはない。ママタルトはめちゃくちゃ好きで、2019年の秋、爆裂な台風が来ている中、新宿のブリーカーでやったライヴは最高だったし、それより更に前に見たグレイモヤでの「チャイニーズデカ腹ピンク大将やん!」にもグッと掴まれ、それよりも昔に何かで見たときの「エッチだるま」というフレーズは折に触れて思い出す。(檜原さんがnoteに書いてくれましたけど、2019年のM-1の一回戦の見に行こうとしたら、待ってる人が多すぎてママタルトも赤もみじも見れなさそうだ、となり、向かいのらんぶるでチョコレートパフェをしばいていたら檜原さんが気づいてくれて、AirDropでステージ上での録音をくれたのでした。この録音は広島での弾き語りライヴと「標識の影・鉄塔の影」の作曲スケッチに挟まれてボイスメモに保存されています。)大鶴肥満さんの代役ということならば、とピンクのジャケット以外を急いで手配し、無事に当日を迎えたわけです。大鶴肥満さんを追ったドキュメンタリー「まーごめ180kg」を会場で見たわけですけど、私もBMI値48前後の世界を生きている人間ですので、肥満さんがプラスサイズとして生きて来たこれまでを見ると、自分の中にも人知れずできあがった厚い壁のようなものがあって、それは常に作品として外に出ているのかもしれない、なんていうことも考えた。私は幸い、ひどいいじめのようなものを受けずに来た。(今でも顔も忘れず恨んでる人なんて数えるほどで、とりわけ今でも不幸にな〜れ、って思っている人なんて「質問するときは手あげろって言ったよな、クソデブ」と言ってきた「たかしん」っていう塾の先生ぐらいだ。)それでもやはり常に何かちょっとしたことで傷つくように世の中ができている。たとえばスペースマウンテンに乗ってみたら安全バーの締め付けが尋常じゃない、とか、かわいい靴を見つけて買ったら足の甲の高さに全然合わなくて足が爆発しそうになったり、デザインが死んだ大きいサイズ専用コーナーで喉を掻っ切って死んでしまおうか、って思ったことは一度や二度ではない。こないだのライヴでも話したような、メッセンジャーバッグを買いに行ったら肩掛けの紐が短すぎて鞄として機能しない、みたいなことが常に転がっているわけだ。そうして私の口数は減っていったのだ。あらゆる意味で生きづらい、それをどう捉えるべきか、と悩むことなんてもう飽きてしまったけれど、まーごめ180kgを見て、もう一度向き合ってみなければ、と思ったとか思わないとか。みんなも見て思ったり思わなかったりしたらいいと思う。深刻な部分ばかり書いたけど超楽しかったです。

 

終演後、真空ジェシカのガクさんに「快楽天の連載も読んでいます」と伝えると、一瞬ファン過ぎて快楽天の連載まで追ってるように取られてしまった。申し訳ねえ、罪滅ぼしに、今わたしが単行本を心待ちにしている成年漫画の作家さんを紹介します。いだ天ふにすけ先生、なまえれんらく先生、高柳カツヤ先生、シャモナベ先生です。そもそもここの幻燈日記帳という名前も、三浦靖冬さんの単行本から拝借しています。

 

劇場版まーごめドキュメンタリー まーごめ180キロ | Zaiko