幻燈日記帳

認める・認めない

気球と通信



ムーンライダーズは寂しい曲が多い。
いや、今日聴くからそう感じるのだろうか。
メールを受け取って居間でぼーっとしながら、
iPhoneに入っていたライダーズをシャッフルにして聴いたら、
最初にかかったのが"砂丘"で(いまこうやって書きながら思い出しているんだけど、
あまりにも出来すぎているのでもしかしたら自分で選んだのかもしれない)、
その次にかかったのが"パラダイスあたりの信号で"だった。
「またいつか会えるかな どこにいくあてもないし」
後ろではハイハットだけが鳴っていた。
シンプルなフィルインでリズムが入った。2009年のアルバムの曲だ。
ああ、なんていうことだ。かしぶち哲郎が死んでしまった。
いつまで経っても冷静になれず、ライダーズばかり聴くという気持ちにもなれない。
何も聴いていないときでもムーンライダーズの曲を頭の中に思い浮かべるんだけれども、
どれも「今日 僕が死んだ」だとか「Who's Gonna Die First?」だとか、
「僕の幽霊がサンタクロースにほら変装して待っている」だとか、どうも調子が悪い。
(そしてそのどれもがかしぶち作品じゃない)
気分を変えよう、とギターを持ったら新しい曲の断片が出来上がった。
そしてふとくちをついて"スカーレットの誓い"を歌っていた。
悪い予感の歌詞ばかりちらついていたのでとてもうれしかった。
湯船に入りながらiPhoneをいじりながら、
(最近防水スピーカーみたいなやつを買ったので)
かしぶちさんのHPを見たらただただ真っ黒い画面が広がるだけだった。
公式webサイトまで喪に服すことはないけどかしぶちさんらしいダンディズムだな、
と思ったけれどもすぐそれはiPhoneで見てるからだということに気がついた。
どこかぼーっとして過ごして夜には昆虫キッズのライヴを観に行った。
ロックバンドなんだからそりゃ当たり前だ、と言われそうだけど、
とにかく音量がデカくて、最後の最後までは見れなくて、
上のラウンジで音も流れていたのでそこでゆっくり見ていた。
一曲目の"メモリーズ"は本当に素晴らしくて、
ああ高橋君はこうやって歌いたかったんだ、という強い意志を感じた。
あとやっぱり"ASTRA"の爆発力たるやすごい。
新曲群も素晴らしく"ASTRA"の少しあとに演奏した曲がとても残っている。
少し話し込んで帰りの井の頭線でぎゅうぎゅうにされながら吉祥寺に着いた。
やっぱりずっとかしぶちさんのことを考えてしまう。今夜もとても寒い。
2010年の年末に見たライダーズのライヴは、
かしぶちさんとくじらさんが還暦を迎えたため、
ふたりがそれぞれ赤を取り入れた服装を着ていた。
あのとき、かしぶちさんは赤いマフラーを巻いていた記憶がある。
そんなことを思い出した帰り道だった。