幻燈日記帳

認める・認めない

梅雨だ。
じめじめ、するよ、
心ノ中ノ日本。
日本狭いぞ、ラリパッパ。


男はタバコを手に取った。
手のひらで転がして、
誰を傷つけようか迷っているようだった。
水影に見えたのは女の下着。
男は気分が悪くなって、
手に持っていた花束を掻きむしった。


男は鳥かごを手に取った。
手のひらで転がして、
誰を傷つけようか迷っているようだった。
水鏡に映ったのは女の声。
男は血の気を引かせて、
手に持っていた水銀を飲み干した。


家に着いたら男は抜け殻みたいになっていた。
彼は変態の振りをした凡人たちの集まりを、どうやって抜け出すべきなんだ。
最近はそればっかり考えている。
彼ははいつだってスタンダードのつもりで居たのだが、
その集まりのなかにいると、彼は息苦しくなることに気がついた。
男にとって自分が普通じゃない、ということを知ってしまう場所だったのだ。
もう誰とも話したくない、と思っているが、そうやって可能性を捨てるのは、
今後の生活に響いていく気がしたので、
男は何も言わない振りをして生活を続けていくのだ。