さっきからたまに先輩の携帯が鳴る。
きっと彼女さんだ。
本当に羨ましい。
俺は彼女が欲しいのか。
それともセックスがしたいのか。
この自問自答は死ぬまでつづきそうだ。
星がきれいです。
お月さまもきれいです。
温泉のおかげでお肌もつやつや。
なんならきみにだけ見せてあげたいぜ。
いつもの時間、いつもの場所で待ってる。
稲垣足穂が読みたくなる。
蔵王の夜はとても涼しくて、
まさに読書にはもってこいなのだが、
残念なことに今回の旅には、
あるヤク中のトランペッターの生涯のドキュメントしかない。
しかもハードカバー。
五百頁あるから退屈なときに読んでいる。
ちなみに男の名前はチェット・ベイカー。
明日は仮免の試験。
部屋では僕の権限で、
ビートルズのレヴォリューション9。
耳を傾けているのは僕以外にはいない。
なぜならそれは先輩はPSPでガンダム。
ぷよぷよやるときに、連鎖が成功したときに、
キャラクターがいうセリフを言うことで有名な、
盛田チャレンジもPSPでガンダムをやっている。
先輩はいいとして盛田チャレンジはファックである。
朝起きたら亀頭に辛子が塗ってあったら驚くかな。
ちなみに誠に残念なことだか、
今は僕がこのレヴォリューション9に耳を傾けるしかない。
僕にはガンダムが解らない。
幸なのか不幸なのか、
昔からガンダムもわからないだけではなく、
ドラゴンボールもスラムダンクもわからない。
当時からなぜか興味が湧かなかった。
だが、ピングーが大好きだった。
いまだに好きです。
どうでもいいー。
レヴォリューション9の混沌を抜けると、
グッド・ナイト。おやすみ、という、
美しいことばに彩られた歌でアルバムはおわる。
このホワイト・アルバムはまるで、
稲垣足穂の一千一秒物語のようだ。
今夜の夢はいつもと違うような気がするよ。
宿の部屋の窓から見える向かいの宿の部屋には、
浴衣を着た老夫婦が見える。
ソファにテーブルを挟んで向かい合って座り、
落ち着いた表情で笑いあっている。
街灯には虫がたかり、
月の灯りが雲の形を浮き彫りにしていく。
ああ、それはまるで恋の始まりのようで、
少し恐くなってしまうが、
やさしい音楽に思いを馳せて、
明日ある学科の試験に向けて勉強に戻ろうと思う。