幻燈日記帳

認める・認めない

指の隙間から零れだすあの日のこと



前日の夜からずっとソワソワしていた。
理由は今日が『ひみつ』の売上の最初の入金日だからである。
綱渡りの日々、これがインディミュージシャンよ、
とか思いながらもちゃっかり鳥もも肉とか炒めて食ってたな。
布団からパソコンをひらき三井住友のHPにログイン。
入金を確認。目がドルマークになるが、
そのお金をメンバーに配分、ギャランティなどの計算を改めてして、
自分の手元にいくら残るかを割り出すと、悲しいぐらいの額だった。
だが、不思議と不満はなく、とてもいい気分だ。
支払いをいくつか済ませ、銀行の窓口が閉まらないうちに家を出た。
そもそもATM以外でお金をおろしたことがなかったので、
銀行の人に訊きながらおろおろしながら無事引き出せた。
いままであまり多額の現金を扱ったことがなく、
書店のレジ締めでもなかなかお目にかかれない額の現金がいま目の前に。
頭の中でハマショーのMONEYがかかっては消えていく。
この生々しい額の現金を前に気の利いたこともできず、
プレッシャーのあまりに銀行の相談室みたいなところを貸してもらって、
メンバー、スタッフに渡す封筒に現金を入れていった。
巷では新生ポップバンドのレ・アナーコが放った、
"OKANE WO MOYASOU"の話題で持ち切りだが、このお金は燃やせなかった。
くたびれた鞄のなかで封筒は意思を持っているかのように思えた。
入金があったら必ずやろうと思っていたことがあった。
近しい人は知っていると思うのだけれども、今の私は、
中敷きがべろんべろん、かかとのスポンジまで出てしまったボロボロの靴、
ドラムのスティックを入れておくと端からこぼれ落ちてしまう鞄。
このふたつをどうにかしなければならない、と佐久間さんとずっと言っていた。
ぼくひとりでは鞄も靴も見つけるなんて不可能に近いので、
中央線沿いで生まれ育った恋人にナビをしてもらった。
鞄はすぐに見つかったが靴が難しい。
あんらー、このアディダスの靴いいですねーと思って履かせてもらったのだけれど、
アディダスの靴はデブに互換性がなく、つま先を靴に当てた瞬間に、
「あっ、この靴、絶対入らない…」とわかってしまったとき、
この世の闇をみたような気がした。
靴屋は5件ほど回って最後に行ったお店でいい靴があったのでそれを購入。
とてもいい気分でした。ココナッツとタワレコをひやかした。
中央線に乗って中野駅で降りる。
待ち合わせまであと少しあるのでまんだらけを見た。
実家に置いてきてしまった萩尾望都さんの「キャベツ畑の遺産相続人」とかを、
210円とかで購入。すぐに待ち合わせ時間になってしまった。
今夜は『ひみつ』の売上入金を記念した祝勝会なのです。
いつもの中野の焼肉屋を押さえ、わいわいと肉をつつきました。
流通会社の人が大盛りのごはんを2杯行って、
すぐおなかいっぱいになっていたのが可笑しかったです。
結構長い間談笑したりしたあと、有志で集まりファミレスで大富豪。
メンバー全員集まってする大富豪は結構久しぶりで、とても楽しい時間だった。
終電ギリギリで帰宅。自転車に乗ってつい自分の作った歌を口ずさんでしまった。
(今日はお金を中心とした話になってしまって申し訳ないです。
あまりこういうことは書かない方がいいのかもしれません。
ですがこれもバンドマンとしての、無職としての私の日常です。
どうか、ご容赦いただけたら、と思います)