幻燈日記帳

認める・認めない

私が涙をこぼすからには



たとえばセーターがほつれている。
そうすると解きたくなってしまうとする。
いつか一本の糸になってしまうのが惜しいような、
そうなることを期待しているような。
好奇心に身を委ねてそこにかつてセーターと呼ばれた一本の糸が、
横たわっていたとしたら、その現実に私は耐えられるだろうか。
調子の悪い日が続いた。
駐車場に停めたら板が降りず業者が来た。
曲がり角を曲がり損ねた。
どうもぼんやりする頭を食欲で捩じ伏せた。
そしてそんなに食べるべきではなかったと後悔した。
どんなにぼんやりしても音楽も、漫画も僕をいい気分にさせてくれる。
ココナッツディスクで買ったチェット・ベイカーの、
「レッツ・ゲット・ロスト」のサウンドトラックはいい買い物だった。
漫画もここ最近積極的に店頭に顔を出して様子をみている。
そんな中購入した「子供はわかってあげない」という、
田島列島さんの漫画にやられた。
電車の中で、部屋で、少しずつ読み進めていった。
下巻の後半を今日ライヴがあったUFO CLUBの楽屋で、
本番前に読んでいたらあまりの素晴らしさについ本を閉じる。
高揚した気持ちでライヴに臨むことになった。
終演後、みんなフロアーでそれぞれの会話を楽しんでる、
ふとした楽屋の隙間に居場所を見つけた。
誰もいない楽屋なら、この漫画を読み終えるのに一番いい場所のはずだ。
強い熱を持って結末を迎え入れる。
最終話のサクタさんのかわいいことかわいいこと。
最終話のサクタさんがかわいいことすらネタバレに思えるわ。
上下巻に別れたこの傑作を貴方も読むべきだ。
甘酸っぱい青春ものはちょっとね、なんて、ひねくれた方も安心してください。
子供はわかってあげない」というパロディからして、
一筋縄ではいかない軽さがある。
(江虫浜という地名はきっとMCハマーだ)
その軽さが合う合ないはあるかもしれないが、
読んで損はきっとしないはずだ。
ふと気づいて私はその日のライヴの反省と無理矢理重ねていた。
サイケデリックな内装からは想像できなかったが、
終演後、ハース・マルティネスやジョン・サイモンがかかっていた。
反省は眠りに就かせて、目覚めた時に向き合うのが一番いい。
いつだって過ぎていく季節を思うのは寂しくもあり、楽しいものだ。
物語の興奮に身を寄せて、今夜は眠りたい。