幻燈日記帳

認める・認めない

ここには誰もいない



一ヶ月ぐらい読んでいたチェット・ベイカーの伝記をようやく読み終えた。
1988年の5月13日が近づくにつれて残りのページが少なくなっていく。
どの本にも物語の終わりはある。
それは当たり前なんだけれども、この本は少し事情が違う。
読み終えて爽快、というものでもない。後味は悪いよ。
それまでチェットの最期というのは自殺か他殺なのかわからない、
みたいな話を何かで読んでいたので、
ドラッグがらみでマフィアに殺されたのかな、ぐらいに考えてた。
本を読むとチェットを殺したのはチェット自身のように思える。
それが自殺と言っていいのか、はたまた、
チェット・ベイカーがチェズニー・ヘンリー・ベイカー・ジュニアを殺したとも言えるのかもしれない。


部屋の掃除をひたすらしている。
埃に弱いので窓を開けなければならず、
マスクをしながら灼熱とまでいかなくとも、
とにかく暑い室内で掃除をしていった。
歯抜けになったCDの棚を見つめて、
ずいぶん数が減っちまった。
物を持っていたい欲みたいのが減ってきたのか?
この部屋からしたらそれはいいことかもしれない、
と思っていたのだが、部屋に散らばっていたCDを棚に戻したら、
あっという間に棚は埋まってしまった。
作業の手を止め居間の窓を開ける。
風も入ってこない。スポーツドリンクをグラスに注いで、
飲み干そうとした瞬間、汗がグラスに落ちた。夏である。