幻燈日記帳

認める・認めない

クロスとオーバー



目が覚めると12時を過ぎていた。映画を見て宵っ張りになってしまったとはいえ、いい調子だ。実にいい調子。(締め切りを過ぎたが)柄にもなくギターなんて持ってみたりする。志が低かったのか何も出てこなかった。そういう時もあるさ!仕方がない!カネヤンごめん。調子があがらないならチョーシをあげればいい。スプラトゥーンに手を出したのだが、ここでひとつ自分に課題を出した。解約しそこねたApple Musicで今までなんとなく避けてきた、敢えて避けてきた音楽を聴きながらならスプラトゥーンをやっていい。さすがアニキ!どんな時間も無駄にはしないンすね!見直しました!なんて声も脳内からにじみ出る。でも見てみろよ、僕の足元に広がった27年分の血の染みはきっともう取れないんだ。
母親から電話があってなんとなくそのまま実家に帰ることに。兄が仙台から東京に帰ってきたから車が余ってしまった。車庫があるなら貸しておいてやる、というのでほいほいとしっぽをふって実家に舞い戻る。母からラジオを毎晩聴いている、こんなにちゃんと音楽を聴くのは久しぶりだ、という話を聞き、あまり長居はせず21時になる前に車に乗り込んだ。TBSに合わせて夜のドライヴと洒落こんだ。カーステレオ特有の前後上下の環境で急に音が変わるやつがありますよね。1曲目のチャボさんの曲でギターソロに入った途端にギターソロを押し上げるようにミッドがガツンとあがって最高にいい気分になった。
家に着いて少しゆっくりして借りてきたDVDから一枚摘んでソファに腰掛けた。「恋人よ帰れ!我が胸に」というビリー・ワイルダーの作品。ジャック・レモンが主演というので借りてみた。テレビカメラマンの主人公がフットボールの試合を撮影中、大柄な選手に体当たりを食らって脳震盪を起こし病院に担ぎ込まれるのだけど、病院に駆けつけた主人公の義理の兄がただの脳震盪のところを主人公が幼少期に負った脊椎の損傷をその時に負った傷かのように見せてチームや球場、テレビ局を相手取り大型裁判を起こす、という話。結果から言うと誰も幸せにならないコメディ映画を観たのは初めてだった。中盤まで見てとても辛い気持ちになりその日は眠ってしまった。
ブロッサム・ディアリーの「マイ・ニュー・セレブリティ・イズ・ユー」のD面を聴いて眠ったのは、チャボさんのラジオでレオン・ラッセルの「ア・ソング・フォー・ユー」をかけていたからです。


翌日、途中にしていた映画の続きを見る。今のところ、ひたすらに救いのない話なのだけど、それが綺麗に回収されるのかもしれない、と希望を捨てないでいたら、用意されていた救いもほんの僅かなものだった。ひどい気分でトイレで考えこむ。確かに笑えるシーンはいくつもあった。でも、笑えるためにそこまでするのかよ。劇じゃないか、いいんだよ、タックルしてしまった大柄な選手は責任感から酒浸りになり、最終的にはバーで暴力事件を起こしてチームを自分の意志で抜けようとしてしまう。しかもそのタックルして半身不随になったと思った主人公はピンピンしていても、いいんだ、というところに自分を持っていけなくてダメージだけを受けて森さんの家にスカートの新譜のジャケットについて打ち合わせに行った。
打ち合わせはつつがなく終わり、せっかくなので五反田でうどんを食べる。こう見えて油ものは苦手で、特に天ぷらはティーンの頃、年越しそばに添えられた天ぷらを食べて気持ち悪くなり小ゲロを吐きながら年を越したことがあるんだ。でも券売機に「まいたけ天」という文字があったら抗えないんだ。すでに鶏天ぶっかけを注文しているのに追加してしまった。うまい。店内に虚しく響き渡る「原色したいね」もいいアクセントだった。
夜はyes,mama ok?のリハーサル。どの曲やるかを決めないであの曲やってみよう、この曲やらないんですか?という感じで合わせていく。その中で金剛地さんがある曲を急にやってみよう、と言い、合わせてみた。もともと好きな曲なんだけど不意打ちだったからか「なんていい曲なんだ!」とスイッチが入ってしまった。が、案の定天ぷらの油が回り始めて壮大なB.A.D.が到来。最後の曲は瀕死でドラムを叩いた。帰りの電車でベースのタクさんとリハで久しぶりに合わせたその曲の良さを語り合って帰宅。そんな感じっす。