幻燈日記帳

スカート澤部渡公式ブログ

クール・クール・アンド・アンド・ザ・ザ・ギャング・ギャング



昨年の4月、私は体調を崩した。その結果、楽しみにしていた予定をいくつもキャンセルすることになる。そのひとつに初めての岡山でのライヴ、というのがあった。京都でワンマンをやって、その後に思い出野郎Aチームのイベントに出る、という予定だったのだ。スカートは沖縄でライヴをやったことがあったけど本州という意味では神戸より西へ行ったことがなかった。知らない街へ惹かれるのは私も例外ではなく、京都のワンマンだけではなく、岡山でのライヴを楽しみにしていたのに!で、弾き語りながらも藤井隆さんのイベント、"Youth Banquet!"が決まりひとりリベンジに燃えたのでした。とにかくお客さんが暖かく迎えてくれて、弾き語りのライヴとしては今まででも3本の指に入る出来だったのではないでしょうか。とてものびのびと演奏できました。その後のカラオケ・ギタリストとしてのステージも充実したものになり、特に黒沢かずこさんとの"Body And Soul"はカッティング・ギタリストとしての意地を見せるけるように弾きまくっていました。イベントが充実したものになると打ち上げも充実します。滅多に飲まないお酒が2杯も飲めて、普段本当に食べない魚(のどぐろ)を藤井さんのレポート付きで一口食べてみた。その時はあまりに久しぶりに食べる魚のイキフンを脳が拒否して「食べれるけどこれ以上はちょっと……」と言ってしまったのだけど、魚を食べた時に口の中に残り続ける独特の臭みがほぼなかったため、今頃になってもしかしてあのまま普通に食べ進める事ができたのではなかったのだろうか、と少し後悔している。いつか突然魚が食べれるようになったりしないだろうか。というのは時々考える事なのだ。


18日。その日の最終の新幹線で帰ろうとしたのだけど3連休の最終日ということもあったのかほぼ満席だった。19日と20日にはスタジオ仕事が入っているので、この日になんとしてでも帰りたいと思っていたのだけど、19日の朝出てそのままスタジオ入るしかないか、と先方にスタジオの時間を問い合わせたら、その予定が吹っ飛んだ事が判明。その場で延泊が決定した。いつもスタッフでついてきてくれる恋人を今回は置いてきてしまっているのでそのことを報告。チェックアウトを済ませ、宿の周りを散策する。少し歩いたら岡山城の方に出て、ゆるやかにカーブを曲がる川を眺めて立ち止まる。歴史になんの興味もない男が気軽に行っても楽しめないな、ときた道を引き返した。商店街の方に出て、初日にYEBISU YA PROの店長に教えてもらったお店でランチ。行列ができていたが実は初日も来て行列で諦めていたのでリベンジのため、夏の光が照りつけても20分ぐらい並んだ。トマトと野菜が乗ったラーメンにデミカツ丼。特にラーメンが素晴らしく美味しかった。上等な食事を済ませ、レコード屋を回り始める。宿のそばに店が2軒ぐらいあり、それぞれでいい買い物が出来た。特に2軒目は新品のCDやレコードも多くあって、その中にポール・マッカートニーの"Driving Rain"のアナログ盤が新品のデッドストックであったのだった。ほくほく顔でもちろん購入。


荷物が重くなってきた頃、岡山から倉敷へ移動。乗る電車を1本間違えて20分遅れて、更に眠ってしまって目が覚めたら絵に描いたような田舎の景色が広がっていた。これはヤバい、相当遠くに来てしまった、と駅名を確認すると倉敷のひとつ次の駅だった。すぐに倉敷に戻ってグリーンハウスというレコ屋に向かう。2階建てのきれいなお店。新品20%OFFの文字に目もくれずめちゃくちゃやっすい中古盤をひたすら掘っていく。ジャズにしてもポップスにしてもやっすい。新入荷のところにプリプリのアナログ盤"Kissで犯罪"から"LET'S GET CRAZY"までの4タイトルがコンプされていた。ぼくが持っていた"LET'S GET CRAZY"はレンタル落ちだったということもあり、全タイトル購入。しかもどれも美品。ぼくはゆうせん盤の"LOVERS"も持っているので、東京インディーシーンでプリプリのLPをコンプしてる唯一のミュージシャンなのではなかろうか、なんて…。中古のCDは今回はいいかな〜とか思ってたのに実際棚見たらこちらもめちゃくちゃやっすい。もってなかったリマスター版を中心に購入。やっすいだけじゃなくて東京で見たこともないようなレア盤が結構あったのも驚きだった。300枚しかないはずのものがここに…!とかんがえると胸が熱くなる。


大満足なところにお店が自転車を貸してくれて自転車で15分ぐらいのところにある分店へ。知らない街を自転車で走って行く。太陽が照りつけている訳ではないのがとてもいい。のどかな風景が広がっている。東京に生まれて田舎も東京(シティボーイアピールみたいになってしまうので説明するとぼくの出身は板橋区の高島平なので決してシティボーイではない)だとこういう風景が現実的でないぐらいで、その現実的でない風景の中を限りなく自分の現実と近いアイテムで裁っていく。風すら追い越せるかのような錯覚。ドブ川さえも清流に思えた。渡された地図を確認することなくデタラメに走り続ける。また錯覚がぼくの襟元に駆け寄ってきて「ぼくはどこでも生きていける(のかもしれない)!!」とペダルを漕ぐ足により一層力が入った。コンビニに自転車を停めて麦茶を買ってどぼうと飲む。街には夕暮れが近づいていた。遠くのほうで祭りばやしが聴こえてきて、自分のライブラリーにはない郷愁に襲われた。分店でもレコードをジッと見つめる。自分のCDも置いてあって嬉しい気持ちになった。フランスの子供が歌う7インチを内容何も知らないのにデタラメに買う。会計の時にお店の方に声をかけて頂いた。「去年のエビスヤプロで見ましたよ、ギターお上手ですね…」なんて言われてガラスのハートがバリンと砕けた。誤解がないように言っておくと「お前それ俺入院していけなかったライヴですからね」と怒っている訳ではない。初めて来た岡山で初めて行ったお店の人にここまで気を使わせてしまっているのか、とたまらない気持ちになってしまった。「えへへ、そうなんですよ。あんまりこないんでまた来れて楽しいです。また近いうちに来たいです」なんて音楽の話もそこそこに切り上げてしまった。


暮れそうな街を背に再び自転車にまたがり、きた道とは違う道を通って帰ろうと思ったら街道沿いのでかいラーメン屋の店頭から祭りばやしが鳴っていると発覚。郷愁を不意にされ、何かがはじけ飛んだ。地図など見ない、見覚えのある道など通るものか、とデタラメに自転車を走らせたら見事に迷い込んだ。整った住宅街の路地をいくつも抜け、街道に出て事なきを得たが、自転車を借りたお店の営業時間ギリギリに到着。店主であろう人が外に遊びに行っていた猫を抱きかかえてお店に迎え入れていた。倉敷観光らしいこともせず日が暮れ、だがそれぞれの収穫に満足し、駅前のスタバでiPhoneの充電&宿の予約。祝日から平日への宿泊なので安く泊まれた。


19日。延泊したものの持て余してしまっている。お察しの通り行き当たりばったりでここまできた人間だし、一人旅というのはあまり記憶がない。そこで前日からチラチラ頭に浮かんでいた考えを実行することに。香川に行ってうどんを食べるんだ!


マリンライナーに飛び乗りマスタリングが終わったばかりの川本真琴withゴロニャンずを聴く。きっと速度は東京と変わらないんだろうけどゆっくりと風景が進んでいく。とってもいいアルバムが出来た。きっと気に入ってもらえると思います。夏にこのアルバムが出せる。それだけでとってもわくわくするよ。瀬戸大橋を電車が渡る。遠くに見える島々の海との境界が曖昧でこの世のものとは思えないこの景色はそれでもどこかで見たことがあるな、と記憶を探るとドラクエ5の妖精の城なのでは。だいぶやってないから怪しいけど。高松で降りてからレンタカー屋をさがす体たらく。iPhoneあればなんとかなるでしょ、という次男感丸出し。うどんマップを貸し出してくれるレンタカー屋があり、そこで軽自動車を借りた。慣れない真新しい車のハンドルを握り、借りたうどんマップで見た美味しそうなお店を片っ端からめぐるつもりでアクセルを踏む。初めて意識的に見る高松の景色が風景ではじゃなくて車道というのもなかなかのものだ。軽自動車が多い。40分ほど車を走らせ、ぼんやり本やネットで見ていた店の前に佇む私がいる。地元の人はあまり食べないと言われてもそれでも僕は釜たまをオーダー。安い。うまい。感動!というほどでは正直ないが一人旅の果てにうどんをすすっているというのがたまらなく来るものがあった。FMトランスミッターでガッサガサの音になった音楽も相まって自分が居るのがどこなのかわからなくなっていく感覚が面白い。ここは秩父かも知れない。そのペースで3軒まわり、恋人に「こりゃね、うどんコミティアですよ」とLINE。スルーされる。


3軒回ったところで意外と満腹になってしまった。敗因は3軒とも天ぷらをつけたことだろう。でもこのまま帰るのもいやだ。いたずらごころに火がつき、カーナビに「ハードオフ」と入れた。近くに1軒あるので寄ってみるとめぼしいものは何もない。学生がギターを試奏していて、ひたすらリズムギターを弾いていてつい2年前(リッケン買った時)の自分を思いだした。時間もなんだかんだで差し迫ってきて4軒目に向かってみると定休日だった。調べればわかったタイムロスも人生だね。と自分に言い聞かせる。ではもう一軒うどん屋に向かう途中にもう一軒、ハードオフを見つけてもちろん入店。オーディオコーナーでチェット・ベイカーの"That's Old Feeling"が爆音でかかってて最高でした。ピッカピカの山下達郎さん"FOR YOU"を発見、購入。時間的に最後のうどん屋に入り、給油を満タンにしてレンタカー返却。そろそろ帰りの新幹線を視野に行動した方がいいのだがそれでも高松のレコード屋に行ってない!と一念発起、バスに飛び乗る。バスで何時の電車に乗ればホテルに預けてある荷物を回収するというミッションをこなせるか、新幹線に間に合うのか、と調べてみると1時間も居れない事が発覚。2店舗目星をつけていたので1軒目はジャズヴォーカルだけ見る、と入店しようとすると、店主から「今日はやってないヨ」の一言いただきまして2軒目のレコ屋へ突入。すごい量なので新入荷+気になるコーナーだけダーッと見て行ったら乗るべき電車に乗れなかった。つったって一本乗り遅れたぐらいじゃ大したことないでしょ、と調べてみると一本乗り遅れるだけで40分ぐらい違ったのだ。僕がアレスキーの7インチ買ってる間にまたもう一泊というのはシャレにならん!と17:55ぐらいにタクシーを捕まえ、「18:10のマリンライナーに乗りたいんです!」と急いでもらうとものの7分ぐらいで駅につけた。これが、金の、力……。マリンライナーで女学生がキャッキャいうのを横目にまた現実感のない瀬戸内海の島々を眺める。
19:09、岡山に着いて駅から離れたホテルに預けていた荷物を回収。それでも少しの余裕を持って20:12の東京行きに無事に乗れたのでした。


19,20とスタジオ仕事の予定がどちらもぶっ飛んだので今日は部屋でゆっくり片付けをしながら買ってきたレコードを聴いて、積んでしまっていた漫画を読んでいた。スケラッコさんの「盆の国」、TAGROさんの「イキガミさま」おすすめです。