幻燈日記帳

認める・認めない

バップの伝道師



家に引きこもって仕事をする。まだ発表にすらなっていない作曲仕事。あらゆるヴィジョンをとっかえひっかえして、それらを均して、耕して。そんな日々が数日続いた。昨年の誕生日はレコーディングスタジオで迎えることができて、それ相応の28歳だったが、仕事のやり取りが飛び交う中で29歳になっていた。
7日に急に入った打ち合わせのため電車で恵比寿ヘ向かい、喫茶店に入った。まだ相手は来ていなくて、空腹も手伝い、メニューからショコラケーキにするかリンゴのケーキにするかで迷ってリンゴのケーキを注文。すっきりとした味の紅茶で手堅くばっちりカロリーを摂取していたら、カクバリズムの新人、だいちゃんが到着。「誕生日おめでとうございます!僕からケーキごちそうさせてください!」と言われ、追加でショコラケーキもキメた。これがマネージメントか。打ち合わせはするすると進んだ。面白いアイデアがいくつか出た。顔をあわせて話すことの重要さを痛感した一日だった。
帰り道にタワーレコードに寄っていくつかレコードとCDを購入。恋人に何か聴きたいのあるかい?とLINEで尋ねると「Teenage Fanclubの新譜をまだ聴いていないからあったら買ってきて」とのことでヴァイナルを購入。今回の来店の目的であるサイ・コールマン「ジャマイカ」を手に取り、さらにロビン・ワード「ワンダフル・サマー」を手に取ったあたりで完全に楽しくなっちゃってカレン・ベスの「ニュー・ムーン・ライジング」とクリスチャンヌ・ルグランの「オブ・スマイルズ・アンド・ティアーズ」を購入。クリスチャンヌ・ルグランのアルバムは先日のLOFTでのライヴの際、DU金野篤氏からかかっている曲を指して「おう、これ知ってるか?」「知ってますよナシメントのトラベシアじゃないですか。誰が歌ってるかは知りませんが」と言ったら「これはクリスチャンヌ・ルグランのやつだよ」との事だった。ただそれだけのやり取りだったのだけど、僕は以前、金野氏から「わかった。澤部くんの音楽の聴き方は"枝葉があって、幹がない"」と痛いところを突かれた事がある。音楽大好きマンみたいな顔をしていたが、僕は興味のある部分だけ掘り下げていくタイプなのだ。でも面と向かってそれを言われた事がなかったので、人間としては尊敬できる部分はほとんどない金野氏だが、音楽の話となるとやはり顔つきが変わる。これはきっと何かのヒントなのかもしれない、と、クリスチャンヌ・ルグランのCDを手に取ったのだった。
8日。急遽打ち合わせ。今やっている仕事をいよいよ大詰めにするために関係者が何故か我が家に集合。見られたらまずいものを押入れに押し込め、不自然に空いた本棚にツッコミが入らない事を祈りながら、5時間ほど根を詰めて打ち合わせ。やはり直接顔をあわせて話すことの重要さを痛感した一日だった。