幻燈日記帳

認める・認めない

ワム太郎



鼻歌を歌いながら浴槽を磨く。軽快かつ粗雑にやるのがモットーだ。私が作業のように蛇口をひねり上げると泡は流れていった。
湯を張り、防水ケースにiPhoneをいれてじっくりと湯に浸かる。先日ユニオンに恋人と行ったとき「私の好きなアルバムのアナログがある」と言ってティーンエイジ・ファンクラブのレコードを指していた、と思ったら、友人のツイートでなんとなく読んだ「本人が選ぶティーンエイジ・ファンクラブのベストレコード10」みたいな企画の記事に、そのレコードが2位に選ばれていた。僕はまだティーンエイジ・ファンクラブを聴いた事がなかった。なんで今まで聴いてこなかったか、というのにはいくつも理由はあるのだろうけど、単純に言えば機会がなかった。熱心に薦めてくれる人はいなかったし、好きなんでしょ?と訊かれる事も多く、そうなると妙に距離が出来てしまうというものだ。温めの湯に浸かりAppleMusicでそのレコードを探して聴いてみたら、自分でも驚くほどすんなり入ってくる。事あるごとに85年以降の洋楽でまともに聴いてるのはTMBGとレンタルズぐらいと言ってきたし、実際そうだった。それとエレキギターというのが自分の中でまだ確立されていないもののような気がしてそのあたりを処理するのに時間がかかりそうだ、と後回しにしてきた部分はある。ロックにおけるギターの理想はスパークスと思っていた。自分でもまだ整理しきれていないのだけれども、その価値観は少し揺らいだような気がする。
夜、恋人が新宿で買い物する、というのでほいほいついていった。セールになっている普段はあまり見る機会のない女性ものの洋服を見ながら「これはモダンでいいね」「これは奇抜だけどとてもキュートだね」なんて言いながら相手の購買意欲をひたすら煽っていった。いい買い物が出来たようでそれは何より。その帰りにユニオンに寄ろうと思い、ユニオンの入っているビルの1階にあるATMで現金をおろし、エレベーターに乗って気合を入れたら既にお店は閉店の支度をしていた。今日が祝日だということを忘れていた。そうだった。私はハイパー無職。曜日の感覚が退化した悲しい生き物。この気持を何で埋めよう、と店頭にあったアルコール消毒スプレーで悲しみで汚れた両手を清めた。
紀伊国屋の漫画フロアへ。欲しかった漫画をまたドカンボカン!と買ったのはユニオンの悔しさがアルコール消毒スプレーだけでは清められていなかった、という事だろう。数件探してもなかったすみれファンファーレが山積みになってて最高だよ!(私信:ゼキさん紀伊国屋にたくさんあったよ!)店内をうろうろして5冊ほど買って家に帰る。寒い部屋を先日買った暖房器具が暖めていく。レコードを聴きながら、日記を書いているので、これを書き終われば、漫画を読む、という感じです。