幻燈日記帳

認める・認めない

羽田発・札幌行き 札幌発・羽田行き



事前に渡された工程表を真面目に見てなかったため、1時間も早く空港についてしまった。まったく愚か者だ、とつくづく思いながらも自責の念がないことに失望し、かばんに入っていた文庫本を開くことすら身の丈に合わない、とただひたすら時間が経つのを待つだけの人間になりさがった。1時間遅くつかなかっただけいいよ、と言い聞かせマネージャーと合流。北海道は半年ぶり。弾き語りで行くのは初めてだった。ハードケースとキャリーを預ける。森さんの親父さんが使っていた12弦ギターのハードケースを使っているのだけど、このハードケースにはPEPSIのステッカーが貼ってある。森さんの親父さんは今、ドゥカティを乗りまわしているそうだ。飛行機はあっという間に新千歳へ着き、そのかかった時間の半分の時間で札幌まで出る。そしてPASMOから1000円以上ガツンと引かれるブルーズ。会場に到着すると前野健太さんのリハーサルが漏れ聞こえる。ライヴ会場でこうやってお会いするのはいつぶりだろうか。と考えたらもしかすると2012年のPOP鈴木祭りなのかもしれない。時が流れるのは早い。会場が元映画館、シートもそのままのホールだったのでとても楽しくやれた。前野さんのときにMCでガハハ!と笑っていたお客さんたちが曲が始まるとスッと集中していくのがわかった。映画を見るときのような気分でライヴを見るならば、前野さん以上の適任はいない気がする。僕は鉄さびの匂いを手のひらにつけながらの鑑賞だったので、僕も椅子に座ってしまえばよかった、と今更になってちょっとだけ思った。会場の方に挨拶を済ませて、少人数で打ち上げへ。ここで前野さんといろんな音楽の話ができた。ちあきなおみさんや加藤和彦さんの話ができる人って意外といままでいなかった気がするけど、普段あまり打ち上げにも出ないし、出たとしてもメンバーとわいわいしゃべるぐらいしかできてなかったな、と思い、普段は飲まないビールを「うん!飲みやすい!」とか言いながらちびちび飲んで、1/3飲んだぐらいでマネージャーは笑いながら「見たこと無いぐらい顔赤くなってますよ」と言った。そして半分飲んだあたりで烏龍茶を頼んだ。お互いの好きなレコードの話をして、ジンギスカンを食べる。ここは札幌、すすきの。金曜日の夜だった。愉快な夜は更けていった。


ホテルに帰り、テレビをつけるとあざらしのこどもが流氷のうえでゴロゴロする映像が流れていた。どこまで北海道らしくもてなしてくれるんだ!素敵な街だね。


レコード屋へ向かうタクシーの道中、運転手のおばちゃんが「春先は風が強くって。昔はこんなんじゃなかったんだけどね」とボソっと言った。6月も終わりに近づいたというけれども、暮らしの中ではきっと春先なんていうこともあるかもしれない。木々がしなり、電線が揺れるのを車窓から見ていた。


札幌から空港、南へ向かう電車の東側の車窓から見た木々はおそらく北の方角にしなったり、葉が茂り、枝が伸びたりしているような気がしたのが気になった。