幻燈日記帳

認める・認めない

おおきなオムレツ

アルバムの作業がいよいよ大詰めで毎回苦労する詩に今回も振り回されている。あっちに行ってはこっちに戻り、そうではなかったと書き連ねた文字をぐしゃっと塗りつぶす。メロディがなければ書きたいことなんて山程あるのに!と適当にペンを走らせてももちろんなにも出てこない。この曲にはこの風景、というのを頭に浮かべてそこにめがけて作業をする。でもそのプールに水が張ってなかったら?

ある時、ピチカート・ファイヴの「カップルズ」を聴き返していたら「むこうとこちら」というフレーズが耳に入ってきてハッとする。読んでいなかった樹村みのりさんの「菜の花畑のむこうとこちら」をすぐに注文した。本屋で働いているときに注文できたはずだったのにどうしてしなかったんだろう。ぼくの手元には「雨」という作品集だけがあった。深夜のファミリーレストランで苦手なコーヒーを啜りながら、なんて自分は寂しい場所に居るんだ、と思ったら気が滅入ってしまった。どこまでも西に続きそうな街道沿いの24時間営業のファミリーレストランで、なかった場所を想い、誰かのセンチメンタルが自分のセンチメンタルになるのを待つ。屋上のサーカスの娘を、神戸に住むあの娘のことを考える。