幻燈日記帳

認める・認めない

鳩がないている

10分で取材が終わり、新宿に放り出される。マネージャーと少しツアーのことなどについて話して、別れてから伊勢丹の銀行でいくらかの金をおろした。レコード屋に向かう。そう、印税が入ったのだ。31歳にもなると手放したものが遠く感じるし、手元にあるものさえ遠く感じるときがある。手放したものにこそ愛着が宿っていた、という気もするし、手元にあるものにだけ愛情を注いでいるような気にもなる。でも、きっと、どちらも美化だろう。美化というのはどういう現象なんだ。その中間(さよならアメリカさよならニッポンに倣うときのその中間だ)に気持ちを置きたい。

ああ、若かった頃、体重も今ほどなかったあの頃、金も今以上になかったあの頃だ。遊ぶ金欲しさに、聴きたいレコードを買うために、当時ハマっていたクイズ・ゲームをするために、昼食を食べるために手放したCD、レコード。あの時レンタルで済ませてしまったCDもある。買うのを諦めたものだってあったな。入った中古レコード屋でそういったものだけを手にとっていた。雪だとして考える。そうです都市に降るそれだ。降る雪は、積もる雪はきっと最初から泥のような色をしているわけではないのに、そうなんじゃないか、今、私がやっている行為というのは新しく積もっていく雪のはずなのに、最初から砂利や泥がついてしまっているのではないか。さあ、バランスが取れない。私の目抜き通りに積もる雪は未知のものでなくていいのか、と、店内を徘徊するがもうそういうモードになってしまっていて、どうにも修正がきかなかった。この店には窓がないからだと思う。

店を出てタワーレコードで買い物。デヴィッド・ボウイの1990年の日本公演のうさんくさいライヴ盤が出ていて「どれどれ」と収録曲を見てみたらボーナスディスクに1978年の日本でのライヴが入っていた。「STAGE」というライヴ盤がとにかく好きなんだけど、ここで収録されたライヴはツアーからしたら序盤のものだと知ったのはだいぶあとになってからだった。そのツアーの最終公演は日本で、当時NHKで放送された映像もYouTubeで見れた。でもこのツアーで演奏された"Stay"が大好きなのに放送ではカットされてしまったようだった。その日の"Stay"を聴きたいと思っていたのだが、そのCDにはなんと"Stay"がクレジットされていた。天にも昇る気持ちで家に帰って悪いと思いながらもスキップして"Stay"を再生してみたらZiggy Stardustに収録されている"Star"だった。誤植だった。普通に考えたらソースはNHKで放送されたものだろうから"Stay"が入っていないことなんてわかったじゃないか、と少し落ち込んだのだけど、また改めて調べたらヨーロッパツアー終盤のロンドン公演がCDになっていると知ったから近々それ買います。やっぱり雪は白くなくては。

更に王舟の新譜、空中カメラの新譜も買った。どちらも聞くのが楽しみ。