幻燈日記帳

認める・認めない

熊本にいくつもりじゃなかった

結果から言うと熊本には行かなかった。妙なノリにみんながあてられている感じが楽しかった。そこにいる誰かに翻弄されている訳じゃなく、そこにいるみんながなにかに翻弄されている感覚というのはなかなか味わえない。(実際は私が翻弄されているだけであったとしても!)

部屋をチェックアウトしていくつかのレコード屋で買い物。JUKE RECORDは最高。スティーリー・ダンの「うそつきケイティ」、「綿の国星」イメージ・アルバムとかを買う。いくつか回ってLIVING STEREOさんに。お店の方が知ってくださっていていろいろ聴かせてもらう。80年代に活動していたインディーバンド、The Rachaelのレコードや、店頭でかかっていたAlberto Herreroというキューバのポップシンガー?のレコードを購入。帰りの便に向けてそろそろ動き出そうか、というところでポニーのTさんから連絡が入り、そのまま福岡のラジオの生出演が一本決まる。悩んだが平日ということもあり、宿泊費が安かったため延泊が決定。生放送が終わった後ポニーのTさんと打ち上げ。90年代の音楽の話で盛り上がった。素直に就寝。

9時過ぎに起きてバスに乗った。知らない街の知らないバスはいい。福岡市博物館長くつ下のピッピ展を見に行く。テレビ局に収録に行ったとき、ロビーにポスターが貼ってあったから軽い気持ちで見に行ったのだった。リンドグレーンは「カッレくん」シリーズが好きだからきっといいだろう、と見に行ったがやはり楽しい。でもピッピを読んでなかったのはさすがに暴挙だったかもしれない。なぜならカッレくんの原画は一枚もなかったし、原書と同じだと勝手に思っていたイラストは日本のイラストレーターが描いたものだとその場でわかった。それでも展示されている絵のたとえば牧場の何気ない景色だったり、お菓子やさんで買い物していたり、知らない物語のひとコマに大いに刺激を受け、もうすぐ展示が終わりだ、という頃にリンドグレーンの葬儀の案内状に添えられたイラストをみて心が大変な事になった。イラン・ヴィークランドが描いたそれは、菩提樹を抱きしめる少女の絵だった。胸がいっぱいになった。自分がそこから何を思ったのか、というのがもはや説明できない。そのさきの展示をみては戻り、また少し戻ってはその菩提樹の絵に戻った。そのイラストに添えられた解説を何度も読み返した。「神戸在住」でピカソの絵をみた辰木桂はこういう気持ちだったのだろうか。多分違うのだけど。

展示を出てグッズを見る。あの菩提樹のイラストを使ったグッズはないのか、と見て回る。たとえばポストカードがあれば僕は作業部屋に貼るし、いくらでも出す、という気持ちで見て回るがやはりなかった。いくつかポストカードやグッズを手に持ち、レジへ向かう。レジを打つ方に図録を指差し「このイラストのグッズはないですか?」と訊いてみるも「今出てるやつで売り切れているものもないし、見ていないのでないですね〜」といわれてしまい、そのまま図録も買った。こうして私の長い6泊7日+1は終わっていったのでした。