幻燈日記帳

認める・認めない

台湾通信

12/6

車でマネージャーの家のそばまで行く。親父からでかい車を借りたのだけど、CDしか聴けないことをすっかり忘れていて車の中に転がっていたTMBGのベスト盤を聴いた。マネージャーと落ち合い、運転を変わってもらう。何か忘れ物をしていないかだけが気がかりだった。空港に着き、車を降りるとずいぶん寒く感じた。「12月でこれかよ」と呟く。現地で待っていた駐車場の人に車を預け、荷物をカートに写し、集合場所でみんなと合流。僕以外は海外の渡航経験のある人たちなので、なんかソワソワする。大所帯なので荷物を預けるだけでも一苦労だった。

飛行機は気流の関係や、空港の混雑からだいぶ遅れたけれども、無事台湾に着いた。飛行機を降りると「ここが!台湾!」という感慨も与えさせず移動が続く。言葉の通じない国じゃ機内で配られていた入国カードを爆睡ゆえに貰いそびれただけで大変だった。「アーーー アーーー エアプレーン……カード……」としかいえなかった時、心の底から落ち込んだ。なんとかなることなど一つもないのだ。

空港のロビーで今回の主催のスパイキーと落ち合う。僕ははじめての海外に浮かれ倒して早速自動販売機でお茶を買った。持ったことのないお札、みたこともなかった小銭が手の中にある。不思議な感覚だった。

到着したのが夕方だったということもあってか道路は混雑。1時間ほどたっただろうか、宿泊するホテルについた。それぞれの部屋に荷物を押し込めロビーで落ち合い夕食を摂りに行った。街の居酒屋のような場所で乾杯をする。その店は店内に二つ、すたみた太郎でしかみないようなでっかい炊飯器が設置してあってご飯は基本フリーだった。小さい茶碗に米をよそっていたのだが、佐久間さんが米を茶碗から平たい皿に移していたのがなんともいえずおかしかった。知らない街に戸惑いながらも楽しい食事を終え、ホテルに帰る。僕だけタピオカすすりに街へ残った。なんとか注文したタピオカは達成感というスパイスにより美味しく感じた。部屋でのんびりしたのち、眠る。

 

12/7

明日、お昼ご飯行けそうだったら11時にロビー集合で、とLINEに投げ、翌朝マネージャー以外は集まってくれた。起こそうか迷ったが「えっ、飯とか……どうでもいいから寝かせてくださいよ……」と言われたら心が粉々になるどころじゃないのでこっそり部屋をでる。メンバー+PAの荻野さんでタクシーを相乗りして牛肉麺のお店にきた。バナナTVでやってた牛肉トマト麺が食べたくて…… 食事は美味しかったし、みんなでご飯食べるのは楽しい。お腹もいっぱいだ。いい滑り出し。ホテルのロビーでなおみちさんが「もし行けたらもう1軒行きたいな」と言っていたけど、満腹のため解散。そのまま徒歩でホテル戻る組とタクシー乗る組みに別れた。

ライヴハウスに向かう。今回はTHE WALLというところ。近くには大学がいくつかあるらしく、古い街並みに時々娯楽が転がっている不思議な街だった。言葉の壁を感じつつ、リハーサルを済ませ夜市に繰り出した。それぞれ思うままのつまみ食いをする。肉まん焼いたみたいなやつ、美味しかったし、みんなと別れてから食べた麺線は忘れられない味になった。ライヴハウスに戻り、スパイキーに台湾の言葉を少しだけ、レコード屋も少しだけ教えてもらった。街へ出る。バスに乗ってみたかったがバスのコミュニケーションは難しそうだ、と判断し、電車に乗る。切符だと思っていたがゲームで使うようなプラスチック製のコインが切符の代わりでカルチャーショックを受けた。日本の電車と雰囲気が違うんだけど、ホームの感じは大阪の地下鉄とか、京王線を思い出す感じ。知らない言葉が飛び交う中、改めて海外にきたんだ、と実感した。

最初のレコード店は先行一車という店。なぜか友川カズキフリーク店主が経営するというレコード屋。まず入口がわからない。湿った路地裏を何度かうろうろしてようやく店の入口に気がついた。ドアを開けたが雑然とした部屋が目に飛び込んできてゾッとする。無力無善寺初めて入った人とかこういう気持ちだったのかな。とか考えた。恐る恐る奥に進むと女性の店員さんがいて、店内にはクラシックが流れていた。拙い英語でやり取りをして、レコードを見ていく。欲しい!と思ったものはちゃんと値付けがされていて、これじゃ東京で買ってもおんなじだなぁ、と考えを改めた。東京じゃ買わないようなど定番を敢えて買うか、と切り替えたのだが、それもこれ、というものに出会えず、結局WIREの12インチを買って店を出た。見たことのない雨樋や、見たことのない柵を持った家を通り過ぎ、次はWHITE WRABBITというお店へ。こちらはとても綺麗な店内で日本の音楽も積極的に紹介されていた。ここでは落日飛車のCDを購入。駅に向かう途中、信号待ちで立ち止まったところでふと街の写真を一枚撮った。日本にいる時、なんでもないところで写真撮っている外国人観光客を見て「はて」、と思っていたのだが、旅情というのはこういうことだったのかもしれない。もう一度電車に乗ってPAR STOREを目指す。駅を出るとこれまで見た古い街並みとは違う、ピッカピカの街並みが目に飛び込んできて驚いた。銀座か表参道のような雰囲気。少し歩くと看板が目に入ってワクワクしながら扉を開けた。モンキー君もお店にいて、久しぶりの再開を楽しんだ。最近どんな音楽聴いてる?というやり取りで僕は田中ヤコブ君を。モンキーからは我是機車少女というユニット?を紹介してもらい、そのCDを買って帰った。モンキーとの話が嬉しくてつい伸びてしまって、最初から見ようと思っていた自分の出るイヴェンとに遅刻。どのバンドも魅力的だったけど、フレンドリーで我々みたいな引っ込み思案、内弁慶バンドには助かった。

東京でライヴをやるときとあまり変わらない気持ちで演奏できたのが自分でも不思議だった。いつもより疲れは感じていたけど、楽しく演奏できた。打ち上げは楽屋で小規模に。ケータリングにいくつか料理を頼んでくれたのだけど、そのうちの一つが松屋の生姜焼き丼みたいなやつだった。異国でみる慣れ親しんだチェーン店の名前はどう響いたのか、今となっては思い出せない。

夜遅くにホテルに帰ってきて24時間開いているスーパーマーケットに向かう。東京にいる恋人とLINEしながら家に買って帰るものを選んだ。真夜中のスーパーは西友みたいな雰囲気で、置いてあるものも日本の物も多く、商品を手に取るたびにここがどこだかわからなくなっていく仕組みになっているようだった。スーパーを出てシンとした街を歩く。

 

12/8

昨日、なおみちさんが言っていたもう一軒行きたかった店が気になって向かおうとしたらなおみちさんももうすでに着いていたようだった。いわゆる台湾の朝ごはん、みたいな風情の店で中国風とされるおにぎりやオムレツをパンで挟んだような一見キテレツな料理を食べる。どれも美味しかった。小籠包もようやくここで食べる。なおみちさんとタクシーでホテルに戻り、部屋の片付けをしてホテルをでた。この時、部屋にネックピローを忘れたことには気づいていない。みんなと別れて財布に残った小銭を全部吐き出す。余裕を持って行動したつもりだったけど出発ロビーがあまりに遠く結構ギリギリになってしまった。急いで飛行機に飛び乗り、座席についた時マネージャーから数分前にLINEが来ていた。「澤部さん以外全員もう座ってます」

飛行機は空港につき、今度はしっかりもらった入国カードを記入しようと記入台でペンを握ったのだが、ペンが出ないし、記入台はガタガタしていた。こいつは美しい国。こいつはおもてなしじゃないか。

空港で待っていた駐車場の方から車を受け取り、機材を積んでいく。帰り道は車の中に転がっていたRUNT STARのFIRST LIGHTを聴いた。っつーか、なくしたと思ってた。