幻燈日記帳

認める・認めない

今日は雨の日です

12/17

少し遅刻して百軒店を歩く。街頭のスピーカーからスミスがかかっていた。BYGに着くとくじらさんのリハーサル。ドラムとヴァイオリンのトリオで優介が生き生きとピアノを弾いていて嬉しい気持ちになる。優介とふたりの出番のリハーサルを終えて、椅子に座っていると慶一さんがある歌を口ずさむ。すかさず岡田さんが「エリック・カズだね」と言う。確か"If You're Lonely"というアルバムの1曲目だった気がする。弦楽器やコーラス隊に彩られた深い孤独のアルバムのことを思い出す。今日はムーンライダーズかしぶち哲郎さんの7回忌だ。

もともとソロでの出演は決まっていたが岡田さんから「砂丘をやりたいんだ。手伝ってくれない?」と連絡を受け、二つ返事で引き受けた。ライダーズのファーストに収録されたかしぶちさんの大名曲。難しい曲だし、出番も最初だったからずっと緊張していた。「緊張するね」というと優介も「いやあ、緊張しますね」と返す。楽屋でそんなやり取りをしていると誰かに肩を揉まれる。振り返ると良明さんだった。「大丈夫だよ」なんて言ってくれて気持ちがちょっと軽くなる。ここにいる人達みんな僕にとってのスーパースターで、こうして同じイヴェントに出ているのが信じられなかった。緊張したけれどそれでも最初の出番を終える。うまく演奏できてホッとした。ホッとした途端に猛烈な淋しさが押し寄せてくる。すると楽屋で慶一さんが「みんなでやるんじゃなくて、ひとりずつかしぶちの曲を歌うとなんだか湿っぽくなるね」というと岡田さんも「砂丘の譜面を送ってもらったら当時の譜面だったんだよ。クラウンのロゴとか入って。それまで譜面ってくじらがきれいに書き直したやつをライヴとかで使うことが多かったじゃない。でもそうじゃなくてさ、曲が作られたときの譜面なんだ。だから生まれたてのアイデアが記されているんだよ。それを見たらやられちゃって」。人の減った楽屋で改めて今夜かしぶちさんの曲を歌う意味を深く考えたりした。

僕が選んだ曲は「今日は雨の日です」という曲。最近の曲をやりたいな、と迷ったのだけど優介が「Curve」を選んでくれたので、あのBYGでやるならば、とかしぶちさんが高校生の頃に作った「今日は雨の日です」を選んだ。ソロアルバムには入っていないし、お客さんからしたらピンとこなかったかもしれないけど終演後、かしぶちさんの奥さんが「すごく嬉しい選曲でした。この曲を作った頃、哲郎と私は高校生で少し遠い高校に自転車で通っていたの。自然の豊かなところだったんだけど、帰り道には哲郎の頭の中は音楽で溢れていて、部屋に帰るとすぐ譜面に頭の中の音楽を書き写していた。「冬のバラ」もそうだけど、そういう時期の曲なの」と教えてくれた。

終演後、BYGをあとにしようとしてマネージャーの野田さんに挨拶してから行こう、と思ったけどなかなか見つからず、演奏した地下にいるのかな?と地下に入ると音響の方が後片付けをしているだけで、もうすっかり静まり返っていた。

 

12/18

自主企画"Town Feeling"開催。リハーサルも快調に終えたところでどついたるねんのステージで吹くサックスを忘れていたことに気が付き一旦取りに帰った。陽が傾く青梅街道を抜け、自宅からサックスを回収。戻った頃にはどついたるねんのリハーサルが始まっていたのだけどそのステージには脱退したはずのDaBass(Coff)君と昆虫キッズの冷牟田くんが居た。あまりの状況に「交通事故に遭った僕は瀕死の状態に陥り、あまりの痛みのため、脳が頑張って日常のようなものを見せ続けてくれているんだけど、のっぴきならない状態のため、見えているものに歪みが生じてしまっているのかな?」と思ったけど現実だったようだ。DaBassが居た理由はわからなかったけど笑、冷牟田くんが居た理由は普段どつをサポートしているガガキライズ吉澤さんがインフルエンザにかかってしまったため、急遽代役を勤めることになったそうだ。また王子のギターが素晴らしかった。そういうこともありどついたるねんのライヴは最高だったし、柴田さんのライヴも最高。セットリストが素晴らしくって「後悔」で始まって最後の「結婚しました」で爆踊り。スカートは最初の3曲不調、あとは大丈夫だったけど終わりよければ全て良し精神で最高としておきたい。最初の3曲の不調は自分に時々起こる音がフラットして聴こえる怪現象が「ゴウスツ」のギターを鳴らした最初の音から起こってしまったことが原因でした。「ギターのチューニングがおかしいのかな?」と思ってゴウスツから即CALLに流れていくはずだったところを一旦止めてギターのチューニング確認したんだけどどこもズレていなかった。そこからちょっとずつ立て治っていったかな、とも思うんだけど「視界良好」が終わったあと、佐久間さんが助け舟を出してくれたおかげで今までで一番うまく「ランプトン」が歌えた気がする。バンドっていいな、と思えた瞬間でした。「新しいアルバム出るのでそれに期待して欲しくて新しい曲をたくさんやる」という今年の前半を経て、「新しいアルバム出たからそれを聴いて欲しいから新しい曲たくさんやる」っていう今年の中盤を経たので自由に組んだら今年発表した曲は2曲だけになっちゃったんだけど、むしろそれが効いた気がして嬉しかった。でも「ゴウスツ」には悪いことをしてしまった。帰り道の車ではこないだ作ったばかりの新曲を繰り返し聴いて帰った。