幻燈日記帳

認める・認めない

サンキ・ュー

某日

 

街裏ぴんくさんの独演会に行く。何度見ても知らない角度の話が永遠に続く。頭の中を覗いてみたい、という常套句があるけれども、ぴんくさんの頭のなかを覗いてみたいよ。関係ないけどパンドラの箱ってあらゆる悪いものが出て、最後に希望が残る、って美談ぶってるけど、悪いものが出たということは希望ぐらいでは帳消しにならなくない? 帰りに渋谷の街を歩く。シブヤツタヤの地下1階のコミックフロアに寄った。コロナ禍以降多分寄るのははじめてなんだけど、あまりの変わりようにめまいがした。寄り付かなくなってしまったぼくが一体どんな文句が言えるんだ、というのはわかっているのだけどこころはぐんにゃりとする。おきらくボーイ先生の「オガペペ」を手にとってレジに並ぼうとしたら、成年漫画のコーナーが1/4ぐらいに縮小されているのに気がついた。店舗別の特典とか気にしなくなってからはここでさくっと買えるのがありがたかったのに。これから先、いつかの日常が戻ってきてもシブツタの地下は戻らない。

 

某日

 

仕事で渋谷へ行き、帰りに渋谷の街を歩く。お惣菜を探し求めて東急本店に向かうもすでに閉店。かつてエロ本屋があった通りをわざと通って駅チカの東急へ。少しだけ買ってなんかアガらなくて西武百貨店の諸国銘菓だけ流す。美味しそうなようかんがあったのだけどお酒の入っているやつでぼくよりもアルコールがだめな妻とシェアして食べることもできない、と思ったのだが妻から「(どうぶつの森の世界は)サンクスギビングデイだからなんでも買えばいいじゃん」というので買うことにした。西武百貨店の諸国銘菓が東京でいちばん好きな場所かもしれない。古いデパートの地下。階段降りたらすぐのパラダイスだ。

 

カーネーションの新譜が欲しくてタワーレコードに向かう。6階にいけばどうにかなるかな、とエスカレーターをのぼっていくと、パイドのコーナーに置いてあったので6階だけで事足りた。他にもアナログ出るから待とう、とおもっていたはずなのに実際店頭で見たら手を出さずにはいられなかったブライアン・ウィルソンのピアノ盤、グソクムズの7インチなどを購入。グソクムズの7インチが990円で泣いた。世界はまだ美しいのかもしれない。

 

某日

 

ダウ90000の寄席を見に行った。仕事が入っていたので見に行けなかった「あの娘の自転車」でやっていたという噂のバーカウンターのネタも見れた。本当にすごい構成で、加賀さんが外に出て「さいこーーー!」っていうのもうなずける内容だった。ママタルト、かが屋ラブレターズ、ダウ90000という流れが実に最高。

 

某日

 

仕事の帰り道、伊勢丹に寄る。6年前に急性扁桃炎で入院して以来、伊勢丹で売ってる1番高いマヌカハニーを買うことにしている。1年ぐらい前に買ったのがなくなってしまったからそれを買った。14900円。まじかよ。正気じゃない。でもいい。これはおまじないなのだから。今年の夏、伊勢丹のアプリを入れるだけ入れてこっそりポイントをためていたのだけど今日、そのポイントは30万円以上買い物してないと特に意味ないと知って膝から崩れ落ちる。おれのセレブライフは遠い。

 

そのままタワーレコードに向かった。先日の渋谷で無果汁団の新譜を買いそびれていたのだ。エレベーターでCLOSEと表示されている7階と8階に念を送り9階で降りる。4フロアが2フロアになったもんだから結構なカオスになっていて少し混乱した。さすがにスカートの面陳はなくなっていたけど過去タイトルすべて置いてあってうれしい。本当に嬉しい。無果汁団の新譜を無事購入し、ついでに上の階も……と見に行くとそうだった、世はレコードの日だった。かえぽの7インチとLOVE JETSの7インチ、ハッピーズ、ダイアナ・ロスの新譜などを購入。会計をしているときにふと店の奥の方を見てみるとかつて新宿の街を見渡せたおおきな、おおきな窓が塞がれているのが見えて、そうか、ここは新宿のタワーレコードの10階だったんだ、かつてのニューエイジの試聴機があったときよりもいい景色が見れたあのタワーレコードの10階だったんだよ、ということを思い出してこころがぐしゃぐしゃになった。TOWER VINYLができてお店をみたときのうれしい気持ちを忘れないように生きていこう、そう唱えた。泣きそうな気持ちで会計を済ます。店内ではoasisのライヴ盤が流れている。どういう気持ちでエレベーターのボタンを押せばいい?考えあぐねいていると駐車券にスタンプを押してもらうのを忘れていたと気がついた。安心ともつかない妙な気持ちで店内に戻って店員さんに駐車券のスタンプを押してもらったら声をかけられる。うれしい気持ちとかなしい気持ちがないまぜになっちゃってぼくからも「改装してはじめてきたんですよ……なんというか、ちょっとさみしいですね……」と弱音を吐いたら「でも!CDの在庫数は前と変わっていないんですよ」と教えてくれて少しだけ気が楽になった。車に乗り込み、買ったばかりのダイアナ・ロスの新譜を聴きながら家に帰った。ぐしゃぐしゃのこころに染みまくった。

 

Thank You - song by Diana Ross | Spotify