幻燈日記帳

認める・認めない

魔女を狩る(どうして?)

5日

 

ワンマンだ。リキッドに向かう車の中で自分の曲をひたすら聴く。少しでもライヴ感が体に戻ってくるように、とできるだけ大きい音で聴いて歌う。相変わらず扁桃腺は腫れていていくつか薬を飲んで備えてはいるけれども、一抹の不安もよぎる。だがハンドルを握りながら歌う私は調子が良さそうだった。会場についた。機材をおろしてステージを見る。リキッドルームの床には枠ができていて、そこにひとりずつ入る想定でチケットを売ったから通常時の半分ぐらいの定員。2020年の年間計画を立てたときには「8月にアナザー・ストーリー出して12月はリキッドワンマンだ!」と息巻いていた頃とは想定は変わってしまったけれども、なし崩し的にここに気持ちが戻ってこれたことが本当に嬉しい。

肝心のリハーサルでは不思議と手応えがなく、いや人はいったら音も吸われて変わるよ、昔だったらこういうときはこういうモニターにして〜とか細かくやれたけどそのへんのノウハウが全く通用しなかったようだ。臼杵さんのDJでリキッドルームが華やぎ、本番が始まる。序盤は個人的には調子よく飛ばしたんだけど、続けていくと久しぶりの大音量に耳というか脳が耐えられなくなっていってとたんに大いなる不安に胸が押しつぶされそうになる瞬間がたくさんあった。そのたびにお客さんの顔を見るようにしてみたり、場の雰囲気を感じるように努めた。そうしてらしくないんだけど「もっと自信を持ったらいいのに」と頭のなかでつぶやき、不安を振り払うようにガッと歌うシーンがいくつかあった。自分でもうまくいった確証がないまま袖にはけて素直に「今日の僕、大丈夫ですかね」と言ったら笑いながら「全然大丈夫!最高!」と社長が言ってくれたから安心する。無理矢理のアンコールも終えて楽屋に引っ込んだ。ゼキさんに声出てたね、と言われて(それはきっと不安を振り払おうとしたんだよ!)とは返せず、かと言ってどこかの椅子に座ってガッと落ち着くこともできず、久しぶりの達成感に浸ることしかできなかった。いろんな方が結婚祝いをくれた。ポニーキャニオンに至ってはタワレコの商品券!!!!!結婚してよかったです!!!!!!!

 

スカート ワンマンライブ "The Coastline Revisited Show" / 2021.12.05 (日) / TOKYO, JAPAN | KAKUBARHYTHM / カクバリズム

 

12/12までこちらで当日の様子は見れます。

 

6日

 

扁桃腺爆発。何か飲むたびに痛い。こういうときの対処法として好きなもん食うしかない、ということを知っている。なぜならその後膿がたまりまくって外科的処置をするしかなくなった過去があるから。たまごをふたつ入れた辛ラーメンをかっこむ。市販の扁桃腺の腫れを引かせる薬も飲む。そうして時間が立ったら朝の違和感は過ぎていた。

早速部屋で昨日のワンマンを振り返る。確かに喉自体の調子はよくなさそうだけどVICKS舐めながら歌える特殊能力が功を奏して問題ないし、どうしてあんなに自信がなかったんだろう、と不思議になるぐらい快調な場面が多く、フィジカルよりメンタルの方を鍛えたほうがいいのかもしれない、だなんて思う。

喉は良くなったけど一応医者にもかかった。以前別の医師にも言われたことを言われる。「寝ている間もマスクしてないとだめかもね」。自分の誕生日が刻印された領収書を受け取り、その後もどんどん復調していったので夜は予約していた虹の黄昏のMAXXブチアゲパーティを見に行く。何も考えなくていいエンターテイメントってこの世に本当に必要なものだな、と改めて痛感。カナメストーンもダウ90000も合同コントも最高だった。

 

8日

 

仕事で渋谷に向かう。楽しい収録を終えて、ポニー安田くんから「海岸線再訪」を1枚受け取って車に乗り込む。PARCOに車を停めてユニオンを冷やかしタワーレコードに向かった。KIRINJIの新譜がほしいし、パイドパイパーハウスに長門さんがいたら嬉しいな、と思ったのだ。揚々と公園通りの横の坂を下る。今まであまり来にしたことがなかったテキスタイルのお店と火薬のお店がある、ということに気がついて頭が混乱した。それもものすごく古い店だ。何度もこの坂道を通ったが、そんなお店があったことすら気がついたことがなくて、もしかして夢なんじゃないか、だとしたら妙にリアルな夢だよ、夢だとしたら店先にクレー射撃のフリーペーパーなんて置かないよな、とか納得される。夢ではないことを願いながらエレベーターに乗って6階に向かった。パイドについて見ると長門さんがいた。誰かと話していて、ちょうど別れるところだったらしい。長門さんに声をかけると「今日は多いな〜」と言ってエスカレーターを降りていった人に急いで声をかけた。TWEEDEESの清浦夏実さんだった。久しぶりの再会を喜び、本当にうれしい気持ちになった。「このあとは加納エミリちゃんも来るし谷口くんも来るんだよ」と教えてくれた。そこから少し話し込む。最近ミレニウムの「ビギン」の81年に出た日本盤を買ったらそれの解説が長門さんだった話し。壁に飾られているシュガー・ベイブのポスターの話し。ローラ・ニーロのライヴ盤の話し。「海外で昔作ったライヴ盤が再発されたんだよ。嬉しいよね。ぼくが京都で撮った写真も使ってくれたし、プロデューサーとして名前もクレジットしてくれたんだよ!Discogsで自分の名前がローラ・ニーロの作品に書かれているんだよ。もう死んでもいいと思ったね」「でもまだ再発したいアルバムもあるしね」とお元気そうで本当に嬉しくなっちゃった。ローラ・ニーロのライヴ盤といくつかのCDを手にとって長門さんと別れる。そのまま6階を流していたら浅川マキさんの80年代の諸作品がアナログで再発されていたと知る。「アメリカの夜」と「Nothing at all to lose」は買っていたけど、今回は3枚だ。しかし私には心強い味方がいる。ありがとうポニーキャニオンとレジでうなりながら会計を済ませた。他にもアナログフィッシュの新譜も買えた。

 

Miharashi - song by Analogfish | Spotify