幻燈日記帳

認める・認めない

滝がみえるか

某日

 

詩をなんとか半分書き上げた。冬のファミレス、窓際は寒い。

 

某日

 

仕事で作曲のため、久しぶりに深夜のリハスタを借りる。寒い夜に車で近くの24時間営業のリハスタを予約もせずに飛び込んだ。平日の夜だからひとも少ないかな、と思ったのに意外といて、隣の部屋と向かいの部屋が個人練習のドラマーで、どちらもツーバスを踏んでいてカルマを感じる。リハスタを出て店員さんと談笑。もうほとんど昔通りのにぎわいだそう。どうやっていつもどおりの顔をしよう。

 

某日

 

「海岸線再訪」店着日だ。なんて美しい店着日。昼間一本ラジオのゲストに出演したあと、ポニーのYくんと一緒に渋谷、新宿とタワーレコードを巡った。シングルだというのに展開作ってくれて嬉しい。渋谷店でグソクムズのLPを購入したら特典引換券をくれたので、Yくんを待たせて一階の特典引換所に並ぶ。ところが列がまったく進まない。どうやら様々なリリースが重なり、アイドルの複数枚まとめて買う人の列になってしまっているようだった。JO1の特設レジの列は6階にまで伸びていたから特典引換所の対応できる人が限られているなんていうことはよくわかった。それでも学生が友人同士で制服で特典を求めて行列をなす様は、6階のレジにはなかった光景であったゆえに強烈に美しいものにも見えた。ところがいよいよ進まなくなり、20分以上待ってあと2人というところで急になにもかもバカバカしくなってしまって列を抜けてしまった。特典引換券を見ると当日の渋谷店でのみの引き換えに限る、と書いてあったのでクシャッと丸めて上着のポケットに突っ込んだ。おれにできた唯一の抵抗ということだったのだろうか。Yくんと再度合流して新宿店に向かった。夕方のラッシュの時間ということもあり、道は大混雑。電車だったらものの10分でついただろうに、と少し恨む。新宿店で試聴機を拝み、自分のコーナーを見る。「海岸線再訪」の太田麻衣子さんによるイラストが本当に頼もしく面陳されていた。その後ろにだいたいの旧譜が続いていて嬉しい気持ちになる。11年やってきたんだな、とも思えた。そうしてまた凪なのかもしれない、とちょっと思った。11年もやってると、やってることが当たり前で、何かを投げかけても「あっ、そうですか」ってなってるって(いうのはもう『サイダーの庭』の頃には思っていたけどよ!!)いうことに慣れつつあって、良くないことだ、と強く心に刻む。(ナタリーのインタヴューで「駆ける」の反応が凪すぎて心が折れたって話したけど、相席食堂のスペシャルでかけてくれたことは絶対に忘れない。)Yくんと別れて10階に移動。レコードとCDを物色。SOTAROの「パレード」とクリアランスコーナーに転がっていたフォーレとかを買って店を出ようとしたらめちゃくちゃいい音楽が流れ出してディスプレイを見てみたらポール・ウェラーのアルバムということがわかった。これまでポール・ウェラーの音楽をまともに聴いたことがなかったから本当に驚いた。フル・オーケストラの編曲でおそらくドラムすらない、そういう編成のなかでイギリス的なポップ・ミュージック。ビートはないけど曲に十分すぎるほどのビートがあって興奮。店内をうろうろしてそのCDを手に取る。今年開催されたライヴ盤だということがわかった。おお、そうだったんだ、こうして今なにかが決壊してポール・ウェラーのCDを手にとっている自分がいる。ポール・ウェラーのCDを手にとっている自分がいるんだ。

車を出してすっかり暗い街を走る。買ったばかりのポール・ウェラーのCDを興奮しながら聴いて、ココナッツディスクにも顔を出した。「海岸線再訪」がしっかりと新入荷の棚に並んでいて、家主やPERFECT YOUNG LADY、madobeとかと一緒に並んでいる。とても充実した新入荷の棚だよ。この一瞬に立ち会えたのが嬉しい。中古盤や取り置いてもらっていたレコードを買って家に帰った。

 

某日

 

確認してからじゃないと進められない仕事の返事がこない、ということは、と駆け込みで和田誠展に行く。若い頃の作品の大胆さによろめく。学生時代に制作されたポスターが素晴らしく、もしこれが家にあったらどんなに素敵だろう、と思ったが、そのポスターは売店にはなかった。いままで制作された演劇や映画のポスターがずらりと並ぶところでは自分のポスターにはやっぱりこれからも年号を絶対に入れるんだ、と改めて気合が入った。