幻燈日記帳

認める・認めない

シャンデリア・ゴー・ゴー

17日

ワンマンの最終ゲネ。曲順なども変更なし。いい調子だがめちゃくちゃ疲れる。

 

18日

ツアーの支度に明け暮れる。

 

19日

メンバーより先に関西に入る。この日は台風クラブ石塚くんとラジオの収録。少し早く入ってレコード屋を見たり、気になっていた蕎麦屋へ行く。春が近い京都はいわゆる「うららか」の予感というやつで、大変気分が良かった。どこまでも行けそうな気がするよ、とはよく言ったもんだ。まだなるべく歩く、というのは続いていて、荒神橋から烏丸御池まで歩いた。あまりにも「うららか」の予感なもんだから飛び石を歩いて鴨川を渡った。

楽しい収録が終わり、ひとり夜の街を彷徨う。京都の夜は早く、目当てだった店は開いていたのだが、入ったら「ごめんね、今日はもうおしまい」と断れてしまった。この店、3回ぐらいそう断られている。つくづく縁がない。しょんぼりとして適当に歩いて見つけたラーメン屋に入った。これはこれでうまい。

α-STATIONが用意してくれた宿が本当に素晴らしい宿で、ベッドなんて縦で寝ても横で寝ても問題ない、という塩梅だった。部屋に備え付けられたレコードプレイヤーで今日買ったレコードを聴こうと思ったら盤が歪んでしまっていることに気がついてしまってちょっとしょげる。

 

20日

京都を出て大阪へ向かう。道中は萩尾望都さんの「一度きりの大泉の話」を読んだ。自分が好きな作品の多くが隅に追いやられながら描かれたものだと知る。私が母からの薦めで萩尾望都さんを読みだした頃、すでに萩尾望都さんは少女漫画の大家で、母から当時のムードの話を聞いたことがあってもどうにも信じられなかった。しかし、本人から当時の回想を読んで、そのムードがより立体的になる。

大阪について、食いっぱぐれた昼食をなんとかしよう、とクアトロまでの道を歩きながら考える。すると、私の大好きな会津屋があり、そこでたこ焼きを買って会場入りした。メンバーと落ち合い、(萩尾望都さんの漫画をその時は読んでいなかったのになぜか)「一度きりの大泉の話」を読んでいた佐久間さんと本について少し話した。

久しぶりのレコ発ツアーということもあり、開演まで落ち着かなくて外に出てレコードを見た。地図も見ないでユニオンを目指す。するとどうだろう。SEEEDSに着いていた。お店の人と話して、ドド・マーマローサとアート・ヴァン・ダムのレコードを買って、ギリギリに会場に戻った。慌ててシャツを着て、ステージに向かう。大阪は前回のトワイライトツアーと同じく横ばい、人の入りは寂しい。でもその分、真剣に聴いてくれるのが伝わったし、それに応えていいライヴが出来た。特に歌はこの日が多分一番良かったし、ずっと歩いていたからか、身体が柔らかかった気がした。

 

21日

大阪で一泊。打上げも楽しくて、珍しく二次会にまで出た。名古屋のライヴは前日の反省を反映出来て、いい出来。しかし、「駆ける」始まる直前、カウントの裏に何かが崩れるような音が聞こえて(どうやら製氷機の音だったらしい)、気持ちを整理するのが大変だったし、アウトロで盛大に間違えた。他にも謎のコンコン、という音がときどき聞こえて集中力が乱されるなどして自分のメンタルの弱さを改めて知る。(謎の音はボーイ以外は全員聞こえていたようで、しかもすり合わせていくと全員違う聞こえ方をしていたようだった。そして録音にはその音は入っていなかった)集客こそトワイライトツアーと同じく横ばい、人の入りは寂しい。しかし演奏は調子もよく、お客さんの盛り上がりもまるで東京、ホームのような盛り上がりだった。

 

23日

網戸の交換。ずっとガタガタですぐ外れてしまうので困っていたから助かった。

夕方前に吉祥寺に出て本屋へ向かう。今日はほそやゆきのさんの「夏・ユートピアノ」の発売日だ。こんなに嬉しい気持ちで本屋に行くのはいつぶりだろう。新刊コーナーに本が並んでいるのを見ただけで気分が高揚した。他にもいくつか新刊を購入する。

『夏・ユートピアノ』(ほそや ゆきの)|講談社コミックプラス

窓を開けて漫画を読む。20ページの「昨日は濃い霧が出ていて あんまり外に出たいような日でもなかった」と語るコマがある。そこが印刷されることによって裏のページのコマもほんの少し透け、20ページの淡さがより強調されたような気がしてぐっとくる。アナログのレコーディングでいうと転写のような感じだろうか。物語に入っていけるような気がして最高だった。73ページから数ページ続くピアノの内部の描写も美しい。この日記読んでる人には絶対読んでほしい。

 

25日

東京公演。袖で緊張しているとTchotchkeの「Dizzy」に乗せて佐久間さんが手拍子しながら出ていったのを見て、なんてやさしいドラマーとバンドをやっているんだろう、と少し泣きそうになった。大阪・名古屋と空いている会場を見慣れてしまったからか、大勢のお客さんを前に身体が固くなるのを感じる。実際、序盤は声は出ているものの、どこか声がまっすぐ出ない感じがあった。でも熱いお客さんと仕上がった演奏にほぐされていき、最終的にはいいライヴになった。終演後、メンバーで牛角に向かい、ひたすらメシを食い疲れを労った。

 

28日

渋谷で会食があるため向かう。電車の中でほそやゆきのさんの『夏・ユートピアノ』をあらためて読み返した。連載のときも、買ってすぐ読んだときも、気持ちが揺れるところが違うのだけど、今回は響子がピアノの弦を切ってしまったときの回想のところで気持ちが大いに揺れた。しかし揺れた理由がわからない。そうして何度も考える。これがいいんだ。渋谷の駅で降り、スクランブル交差点で信号を待っていると、青になったのに動き出さない。はて、と思ったらみんな写真撮影をしていた。よく見ると海外の観光客の方々だった。3年前のような光景に驚いた。