幻燈日記帳

認める・認めない

ジュースのない夜

4日(6日でした)

シマダ選手権は今回もとんでもないヴァイブスだった。姫乃たま×シマダボーイズは今回も桃源郷で、表現ということはなんだったんだろう、と思いを巡らせた。爆音の中、先輩のサンプラーから頼りない軽いスネアが聴こえてきて、そこでじっと耳を傾ける。これがいい。そうして必要な情報を頭が抜き出そうとする。なにやら声が聴こえてくる。もう少し奥まで掘り進めていった先に「ジャンジャンバリバリ ジャンジャンバリバリ パチンコマン」というリリックが聴こえてきた。私は感動しながら膝から崩れ落ちた。思考にも似た想定というコップから表面張力を破って溢れ出したものが「PACHINCO・MAN」だったのだ。パンドラの箱の一番底に「PACHINCO・MAN」があった、と言ってもいいのかもしれない。

PACHINCO・MAN - song and lyrics by ブギー・マン | Spotify

 

6日(4日でした)

グレイモヤのスピンオフ企画。憧れのライヴに何故か唯一のミュージシャンとして出演することになった。あまりにかかって全員ぶん殴る気持ちで選曲、なんなら普段やらないような個人練習まで入って、この曲のここの隙間で弦をビギーってやったらギーンってなってゾックゾクするっしょ、とかやっていた。当日のリハで、普段のライヴだってここまで調整しないよ、っていうほどエレキ弾き語りのセット追い込んで組んだ。が、結局3分だけリハしたアコギで本番を迎えることになった。詳細な心変わりは近々エッセイとして書いたのでしばしお待ちを。全組客席で見ていて、全員最高だった。ムラムラタムラ氏の本番中に出番が近づいたので譜面を取りに行って、戻ってきたらもうもとにいた場所には戻れなく、舞台がまったく見えない状態だったのだけど、それでも「面白さ」が舞台が見れていたときと全く変わっていなかった。もちろん見れないことによって損なわれていたものはあった。しかし、それを補填しようと聴覚に力が入ったとき、考えている状況が頭の中に広がるとき、これが「想像力の翼」というやつだったのか、と知ることができた。「うん、質量は一緒だね」というやつだった。自分のライヴもめちゃくちゃご機嫌にやれた気がしたので観に来てくれた友人を無理矢理家まで送る、と言いながら韓国料理をつまんで遅い時間まで話し込んだ。とてもエポックな日だった。

 

某日

松永良平さんにアメリカを乞う。7月にハリウッド・ボウルで行われるスパークスThey Might Be Giantsのライヴを見に行きたいが、いろいろ現実的じゃない、70万空から降ってきたら考えよう、と思っていたのだが、なんと空からは降ってこなかったがまとまった入金があるということがわかって、妻とふたりで焦っていろいろ調べだした。しかし、いろいろ実態や経験が追いつかず途方に暮れてしまったので松永さんにいろいろ伺うことにしたのだ。ホテルは?治安は?行ったほうがいいところは?チップの感覚ってどうなの?ノートにメモをとって、GoogleMapにピンがいくつも立った。チケットは取れるんだろうか。なんだかとてもワクワクしています。

 

某日

壁の模様の一部がラリったクマに一瞬だけ見えてうろたえる。

 

某日

シマダ選手権から数日経ったある日、車の中で妻とその日のことを話し合っていて「こんなホットな時期にペッパーミルやれるって先輩はホントすごいよね、体幹がないとできないよ」と私が言うと、妻は「それは違う。もうみんなペッパーミルを忘れて始めていた。先輩が思い出すのが一番早かったんだ」と言う。車はトンネルに差し掛かっていた。かつては車が通れなかった道を走っている。丘を削り、トンネルを通し、環八がつながった道路だ。私は感動していた。急でもなだらかでもない坂を上るとドン・キホーテの看板が見える。そうすると、まっすぐに道が伸びている。その途端、私の目線はドライヴァーの目線から、大空と言うには狭い空を飛ぶ鳥の目線を獲得していた。衝撃だった。「思い出すのが早い」そんな言葉聞いたことがなかった。目から鱗だ。心に刻もうと思う。

 

某日

絶対に選挙行こう、とニュースを見て心に改めて刻み込む。

 

某日

さまざまな改悪によりPCでTweetdeck開いているときにTLみるぐらいになっていってしまった。気が滅入り、mixiのおしまいのときってこんな気持だったな、なんて悲しい目をしてみる。

 

某日

祖母の法事。祖母が亡くなった直後、お坊さんがお経を読むのが面白くて仕方なくて、何度も笑いをこらえていたっけな、としみじみ窓の外を見たのだが、お経が始まるとまだ面白かった。代替わりして若いお坊さんになってから落ち着いていたのだけど、(先代はダンディなアナログ・シンセサイザーといった趣だったが、)技術を次第に身につけていって先代に近いディープさが出てきていた。

澤部家の墓には墓石の表記揺れがある。澤邊、澤辺、沢辺もあった気がする。家系図の類は何百年前にお寺が燃えて焼失してしまったそうなので詳しいことがわからないのだけど、こういうとき名前とは……戸籍とは……と考え込んでしまう。

 

某日

加藤和彦トリビュートのリハーサルで代々木八幡に向かう。充実したリハーサルになった多くの人に知られてほしい。ハイドパーク・ミュージック・フェスティバルです。笹倉慎介→トクマルシューゴサニーデイ・サービスパスカルズ加藤和彦トリビュート→在日ファンク→EGO-WRAPPIN'→田島貴男ムーンライダーズなんていうフェス二度とないかもしれないっす。気にしてくれ〜

ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル 2023 公式サイト

 

リハーサルの合間に妻のお使いでtecona bagel worksでベーグルを買いに行ったらお店でかかっているのがBlossom Dearie Singsで「春です」「もう完全に春」と多めにベーグルを買ってしまった。