幻燈日記帳

認める・認めない

MDLP4

某日

TOKYO FMでラジオの収録。シュガーベイブ『SONGS』を特集する、というもの。家を出る直前に作家のA氏から「収録に際して澤部さんが持ってるアナログ持ってきてくれたら映えるかも」と連絡があり、それもそうだ、と以前池袋のココナッツで買ったエレック盤を持参。一度、居間のソファに忘れかけたのだが、妻が気がついてことなきを得た。TOKYO FMに入ると、隣のスタジオでサンソンを収録していることが発覚、スタッフふくめ騒然となる。しかし、達郎氏はスタジオに入っておらず、ホッとしたような、ちょっと残念だったような。収録は言葉を選び、悩みに悩んで、ある箇所なんて4回ぐらい録り直したりした。番組内でも言ったけど、自分にとって『SONGS』は特別なアルバム。すべての環境や状況が整ったアルバムではないけれども、これほどまでに輝く、という意味で、私の人生と照らし合わせてみてもひとつの救いのようなアルバムといっても大袈裟ではない。改めて自分にとってこのアルバムがどれぐらい大きいものかを再確認するような回になった。頭をぐるぐると回転させてへとへとになって収録が終わった頃、なんと達郎氏がスタジオに入られた、というではないか。収録が同じ日になったことは以前にもあったけど、たまたま手にエレック盤のソングスがあって、という機会はきっと二度と来ない。 その場にいるTOKYO  FMスタッフのネットワークを総動員してなんとアタックに成功、サインをいただけることになった。達郎さんは「こういう時は自分の作品持ってくるもんだよ」と笑いながら、持参したサインペンを指して「このサインペンは10年経ったら消えちゃうから」と言ってマジックインキのサインペンでサインを書いてくれた。次があるなら絶対に新作を持っていこう、今作っているアルバムを絶対いいものにするんだ、という気持ちを強くした。そしてあまりの事態だったからココナッツディスクに寄って矢島さんに自慢してから家に帰った。

 

某日

佐久間さんと二人、まだ録音が済んでいない残りの3曲のアレンジを固めていく。ふにゃんとしていた06はやけっぱち感満載のキレのいいナンバーに昇格、バラードの08はABだけのシンプルな構成だったが「こういう曲なんだったらCメロあったらもうちょっと売れそうな感じにもできるんじゃない?」と提案を受ける。なるほど、それもそうかも。佐藤優介のバンド、歯の治療でベースを弾くことになり、音楽の理論を少し勉強した、という佐久間さんからコード進行の性格を読み解いてもらい、Cメロがどこに行ったら気持ちがいいかを探っていく。3時間の大決闘も虚しく、Cメロはまとまらなかったのだが、Bメロの収め方を変えることによってよりAとBそれぞれのメロディが立つような構成に変えることができた。(07は事前のやりとりでほぼできてたので割愛)終わっってトンカツ食って解散。めちゃくちゃ疲れた。

 

某日

6,7,8それぞれ録音。それぞれ違う化け方をして心強い。作っているときは07がリードかな、と思っていたけど06がめちゃくちゃいい。

 

某日

小西康陽さんにインタビュー、という嬉しすぎる仕事。こないだの達郎さんのこともあったから、それを話のタネにして『カップルズ』のLPを持って行ってサインをしてもらった。うれしい。脱線もしつつ、泣きそうになる程胸が熱くなる話も聞けたし、恩師牧村憲一さんの話も出た。充実していると思います。帰り道、渋谷に出てハイファイに寄ろうと決めてどうやって出るのがいいのだろう、と検索すると、すぐそばにバス停があったから、それに乗って渋谷を目指す。バスに乗って景色が動いてすぐにわかった。学生の頃、心臓の病気で入院された牧村さんを見舞いに行くときに乗っていたバスと同じ路線だった。流れる景色は不思議と変わっていないように思えた。違うことがあるとすれば今は音楽で生計をなんとか立てられている、ということ、あの頃より私はみんくるが好きだ、ということぐらいだろう。いろんな思いが胸に押し寄せる。ハイファイは定休日だった。

次号「BPM」は1冊丸ごと小西康陽!歴代作品紹介、インタビュー、対談などで魅力に迫る - 音楽ナタリー

 

某日

予定や体調の問題でスケジュールが合わなかった優介のレコーディングを一日でガーッとやる。録りも録ったりその数7曲。2日に分けてやらないと、と思っていたけどさすがはジーニアス。特に07はより強力なものになったと思う。

 

11日

このどぶろっくがすごい!というライヴにプレゼンターとして出演。どぶろっくはいつも最高だけど、あまり表立って言ったことがなかったからオファーが来た時は驚いたし、嬉しかった。私のリクエストは「エグチンタンゴ」。年始のお茶の間を阿鼻叫喚に、お笑いファンを歓喜の渦に叩き込んだ傑作タンゴを絶対に聴きたかった。リクエスト集中してしまうかも、と危惧したのだけど、結果的にリクエスト被りはゼロ。これはどぶろっくの音楽性なのかネタの間口なのか、とにかくなんらかの広さを象徴していた気がする。どぶろっくは独特のエレガントさを持っている。どんなにエグめのこといってもそれが下ネタに聞こえない瞬間が来るのだ。「下ネタ」というのはどこから来るのだろう。どぶろっくを見るとそれを本当に考える。そして答えは出ない。楽屋のウキウキした感じがステージにも反映されていたような気がする。本当に楽しかった。終演後、BKBさん、どぶろっくさんと楽しく飲む。

 

14日

キネマ倶楽部でライヴ。リハーサル快調。しかし本番始まって2曲目で異変が起こる。Dm7を弾くと音がぼよんぼよん、ぐにゃんぐにゃんになる。耳が疲れると正常なキーが判断できなくなるということはあるのだけど、特定の音(DとAだった)と音価(短ければ短いほどぼよんぼよん、ぐにゃんぐにゃんになる)に対しておかしくなるようで、あまり集中できなかったが、過去に似たようなことはあった。それらのライヴのことを思い出し、自分を強く持つだけ……結果、力ずくでいいライヴにできた。ステージにはあらゆるタイプの魔物がいる。あと演奏してて楽しくなっちゃって動いてたら速攻で息が切れた。本番前の楽屋では真面目に英語の話をなおみちさんに訊く。We haven't planted the flowers in the garden yet.におけるplantedが、現在完了形でhave+過去分詞になる、というとてもシンプルなことなのだが、「植えてないのにplantedにどうしてなるんだ」ということがひっかかり、理解が追いつかなくて困っていたのだが、「そういうものと覚えるしかない。でも英語話者の日常会話に現在完了形はあんまり出てこないよ」となぐさめてもらう。その様子を見ていた森川さんが「バンドによって本番前ってこんなに違うんですね」と言っていたけど、イレギュラー回だ。それを取り戻すように佐久間さんがMC台本を壁に貼られたセットリストに書き連ねていって最高だった。

 

15日

歌Rec。昨日のライヴで調子がよかった分がちゃんと録音にも反映された気がする。

 

16日

ベースメントバーでライヴ。みらんさんと地球から2ミリ浮いてる人たちのイヴェントにお呼ばれ。みんなうまい。年寄りらしい言葉を使うなら「我々が若い頃なんてうまいバンドなんてあんまりいなかったよ」。うらやましい。それで曲もいい。刺激になる。楽屋a.k.a.バーミヤンでやっぱり体力だよ、という話になった。Amazonでジムで履くための上履きを探し始める。

 

某日

ひたすら作詞。ファミレスで作詞をしていて、安い客だと思われたくない&リスペクトを込めて注文するのでとにかく金がかかる。家計を圧迫している。しんどい。

 

21日

トリプルファイヤーのライヴを観に行く。最高。終盤はimaiさんが踊りすぎて天井に頭ぶつかりそうになってて笑った。この日は完全に鳥居真道という惑星と細野晴臣という惑星が直列に並んだひだったと思う。そしてバンドの演奏も最高。肩の力が抜けた素晴らしいライヴだった。吉田もライヴでのリズムの表現がやっぱり進化していっているのをさらに感じる。ほぼスターバンドのそれだったので、いつか床からバシュっと出てくる吉田や、ギフテッド!と歌うたびに火柱が上がるようなライヴがみたい。

 

某日

ついにジム通いを始める。初回は機材のレクチャーだった。3分エアロバイク漕いだだけで「もう漕ぎたくない」と思う。

 

某日

他はもうずーっと作詞。