9日
下北沢SPREADでyes, mama ok?のライヴ。口径の小さいドラムは叩きにくいのだけど、妙なグルーヴが出ることもある。めちゃくちゃ楽しかった。最近のyes, mama ok?楽しすぎる。
10日
私が14歳の頃にDJを聴いて衝撃を受けまくった臼山田洋オーケストラ a.k.a. うすやま氏に呼び出され、ナタリーで雑談。コミナタのイイヤンさんやオリュウさんなんかもきてわいわいやっているとものすごい感慨が押し寄せてきた。みなさんと一緒にだらだら深夜のモナレコードで過ごした13年前の私も私だったが、今の私が私でいることの尊さよ。雑談では私の「爆裂愛してる」への異常な愛情が爆発。本当にすごい曲。M!LKは「イイじゃん」を楽しいヴァイラルヒットとして接して楽しんでいたけど、「好きすぎて滅!」でなるほど、となっているところに「爆裂愛してる」が届いた。「音楽」として最高のものがこの八方塞がりの日本に届けられたのだ。コード進行、歌詞、メロディ、アレンジ、歌い方、全てが本当に一級品。リリースされてからずーっと聴いてる。本当にずーっと何回も聴いてる。スパークスとかムーンライダーズとかカーネーションとか好きになったときもハードに聴き倒したけどこんなにもなんども聴いた曲なんてかつてあっただろうか。ともかくナタリーのスペースは雑談好きにはおすすめ。
https://x.com/natalie_mu/status/2042551471032668235?s=20
11日
そのうすやま氏をナイポレのゲストに迎えて収録。本当に「音楽を好きでいてよかった」と何度も涙ぐんだ。4回聴いた。5回だったかもしれない。
12日
片想いとNRQのライヴを観に行く。NRQを見るのは少し久しぶりだったけど相変わらず最高。NRQはもちろん録音物も最高だけど、片想いの演奏も相待って改めてエリック・ドルフィーの「When you hear music, after it's over, it's gone in the air, you can never capture it again.」なんていう言葉も頭をかすめる。
15日
音大の授業初日。どんな立場の学生がいるかもわからなかったので丸腰で向かう。それで話を聞いていってどういうふうにしていくかを考えよう、とした。実際直接会ってみると、「こういうことができたらいいな」と思っていたことはそれぞれの環境や経験からちょっと難しそうだったり、その逆で「こういうことができるな」というのが見えた。そういう経緯もあって初回はすっげえ時間が余った。とにかくずっとひえ〜って言ってる。打ち合わせで大学に行った時、校舎そのものがひとつのノスタルジーの大きな塊のように見えて、それがとてもグロテスクに映った。しかし実際最初の授業を終えた頃にはノスタルジーは影も形もないではないか。私はなんていい加減で、なんて都合のいい人間だったのだろうか。
16日
スカートの打ち合わせ。「スペシャル」出来たのに今年のフェスにひとつも呼ばれてないっていうことはもうそういうことっすよね〜と弱音を吐くなどする。むう。
18日
スラッシュパイル主催の「このヤッホイがすごい」を観に行く。ここ最近、行くお笑いのライヴごとに爆笑を掻っ攫っていくヤッホイとは一体なんなんだ……という時にちょうどいい催し。めちゃくちゃに面白かった。お笑いと漫画の未来はずっと明るい。
某日
ライダーズの録音ラストスパート。自宅作業をわずかに残し終了。すごいものができている。
25日
どついたるねんのレコ発出演。リハーサルを済ませてどついたるねんと話していると、昔は共演ってなるとカヴァーやってたね、なんて話になる。そういえばそうだった。特に印象深いのはSHELTERでBiSや昆虫キッズと一緒になった時に演奏した光GENJIの"STAR LIGHT"や、バラサブックス建て替え・解体GIGで演奏したCHAGE and ASKAの"SAY YES"あたりだ。そうしたらカヴァーやらなくちゃね、と楽屋で歌詞カードに入っていた曲を数曲さらって首を傾げる。果たしてナンバーガールの"タッチ"や大滝詠一さんの"君は天然色"でいいのか……?と…… あの頃のフィーリングで好きな曲を歌うならM!LKの"爆裂愛してる"しかないのでは、となって楽屋で慌てて耳コピ。環境が環境だったから精度も高くないし、開場の時間が来ちゃったから通して練習できなかったけどステージに投入。実際歌ってみると全く言葉が途切れる瞬間が訪れず、想像以上に大変だったけどなんとかやり切った。続けて光GENJIの"STAR LIGHT"を歌うともう喉が終わっていて笑った。どついたるねんのライヴでギターを弾いた時に一発で声を飛ばしたことを思い出した。終演後、ひたすらに龍角散ののど飴を舐めることでことなきを得た。安心した。
くじけなもどついたるねんもよかった。どついたるねんはすごくいい意味でバンドになっていた。異形の3人組だった時期も見ていたから、嬉しくなっちゃった。
30日
還付金が入る。人間として戻ってくるべきところにやっと戻って来れたような気がする。
5月1日
いくばくかの金を握りしめてココナッツで何枚かレコードを買う。キャロル・キングがダニー・コーチマーらと組んでいたユニット、 The Cityのレコードを買った。このレコードは正規リリースの日本盤で、たとえポイントが20倍でもタワーレコードの通販で買うわけにはいかなかった。このアルバム、The Cityのこの唯一のアルバムは街のレコード屋で買いたかったのだ。レコード袋を抱えて部屋に帰って、ターンテーブルに乗せて、針をおろすとTHE CITYが流れる、みたいなことがしたかった。正直、端から端まで大好きなアルバム、何度も聴いたアルバム、ではない。それでも、このアルバムが持つムードというのは前夜のそれで、そのムードに大いに共振する。実際に針をおろすと、60年代末のロサンゼルスと、90年代初頭の東京が2026年の練馬区の端に満ちていく。これはきっとレコードでしか感じられないものだったと思う。本当に嬉しい。
某日
うれしい人に呼ばれてうれしいラジオの収録。(書いてる時はまだ公開されていなかったけど、日記を公開する頃にはもう放送が終わっていた。上白石萌歌さんでした〜うれしい〜)たのしく話せた。収録が終わって「散漫なジム通いも1年続いたのにまったく痩せるどころか太った。もう水を飲んでも太るんだと思う」と軽口を叩いて地下鉄に乗り込む。移動のお供は「11人いる!」だった。
新宿で降りて麻辣湯を食べたがちょっといいところのランチビュッフェみたいな値段になってて笑ってしまった。因果。
4日
妻の実家で母のVHSをデジタル化。「佐代子ベストヒット」「RC SUCCESSION in 武道館」と書かれたVHSだ。子供の頃に観てキョーレツだった「い・け・な・いルージュマジック」のトップテン出演時の映像や、デヴィッド・ボウイのサタデー・ナイト・ライヴの映像や、ボウイの"Heroes"に海外の青年が窓のそばに座ったり日常的なシーンが続く映像をもう一度見れるかもしれない、と思って、まず「佐代子ベストヒット」を再生してみると、テープが切れてしまったようでデッキから出て来ない。慌てて天板を外してあーだこーだやりながらテープを無事に救出。ネットで修復方法を検索し、その通りにやってみたらなんとまた見れるようになった。しかし、ビデオはなんてことのない1984年のベストヒットUSAが2回分記録されているだけだった。「佐代子ベストヒット」のVHSのケースには「カンボジア難民救済コンサート イアン・デューリー スペシャルズ RC」と書かれていて、この「ベストヒット」にカンボジア救済コンサートも入っていて、サタデー・ナイト・ライヴが入っていると思っていたからとてつもない肩透かしを食らってしまった。それでも冒頭にAppleのCMが入っていて義母、妻と大きく声を上げた。
「RC SUCCESSION in 武道館」はその名の通り、1981年の12月に行われたRC初めての武道館ワンマンの録画だった。中学生の時、「ソウルメイツ」というベスト盤に収録されていたレア音源、"トランジスタ・ラジオ"のロング・ヴァージョンはフェイド・アウトしないで完奏されるテイクで、そのアレンジを「聴いたことがある!なんでだ!」と不思議がっていたが、なんてことない、子供の時にこのビデオを一度だけ見たからだった。ライヴが終わると「トップテン」で演奏された「い・け・な・い ルージュマジック」!!!教授にキスをして、カメラに唾を吐く清志郎!!これこれ!!これが見たかったんです!と全員で興奮してテレビに釘付けになった。それが終わると日立サウンドブレイクという番組が残っていて、それでボウイの"Heroes"が流れて、記憶にあった映像が流れた。しかしそのヴィデオはそこで終了。ボウイのサタデー・ナイト・ライヴは録画されていなかった。
母にたずねてみるとやはり3本あったはずだよ、とのこと。でも手元にあるのは2本だけ。それで思い出したのだけど、YMOやRCに興味を持った時に母が物入れから出してきてくれて見始めたのだけど、どこかのタイミングでテープが切れてVHSがダメになって破棄してしまった、ということをうっすらと思い出した。今なら修復できたのに……!記憶が正しいのなら本当にもったいないことをした……
5日
コーネリアスとスパークスのツーマンが本当に素晴らしかった。スパークスは去年ぶり、コーネリアスを生で観るのは2019年のフジロック以来。手短に結果だけ話すと、自分でも驚いたのだけど、3回泣いた。1回目は"Another View Point"だった。中学生の頃、熱心に聴いた『Point』(2001)収録の楽曲で、スクリーンには古今東西の音楽にまつわる映像が矢継ぎ早に映し出されいた。前半は数多の民族音楽、後半はポピュラー音楽の歴史を一瞬で駆け抜ける。参ってしまったのはいろんなポップ・スター、ロック・スターが映し出されていくあの瞬間の集積。後半に向けて演奏が盛り上がっていく中、反復からうまれた高揚の只中で涙が出た。「もういない人がいっぱいいる」と急に気がついたからなのだろうか。2019年のフジロックでもこの映像がベースにあったような記憶があるのだけど、2026年、あれからたったの7年しか経っていないのに意味合いが自分の中でずいぶんと変わった、変わってしまったんだ、と気がつき、我々は今、音楽の歴史の先端にいる、ということを改めて噛み締めた。2回目は"Turn Turn”。高橋幸宏さんと細野晴臣さんによるユニット、Sketch Showのカヴァーで、原曲はリリースされた頃から何度も聴いていたけど、コーネリアスが演奏するのを聴いて「そうか、原曲の"Turn Turn"は和音みたいな概念からはみ出したソウル・ミュージック(のようなもの)だったのか」とやっと気がついた。これにはシビれた。本当に感動した。自分のポップに対する態度として呪文のように何度も「継承と発展」と唱えてきたけど、これがまさにそれだ、と示してくれた。3回目は続けて演奏された"環境と心理”。この曲は高橋幸宏さんが率いたMETAFIVE、そして幸宏さんにとっても遺作となった『METAATEM』(2021)に収録された1曲のセルフカヴァーだった。”Another View Point"で観たものと"Turn Turn"で表現されたものがかつて”環境と心理"によって一本の線になった。私はここに辿り着いた、私はここにいる、たとえここにあなたがいなくても、今この場所に”環境と心理”が鳴っているということを強く認識することができて涙が止まらなかった。
スパークスも本当に素晴らしかった。昨年のツアーの延長でありながらレア曲も満載、もちろん定番曲も惜しげもなく投入。『Angst My Pants』(1982)収録の”Sherlock Holmes"は以前弾き語りでは聴いていたけど待望のバンドアレンジで聴くことができた!2009年のEASTぶり、同アルバムからの”Mickey Mouse"も完璧!不遇とされる時期に発表された"Let's Get Funky”も飛び出して余計にグッとくる。小山田さんゲストの"The Number One Song In Heaven"も最高。小山田さんのギターによる16分のカッティングは時々エフェクターによりゆがめられて、そのたびに重力が軽くなるような気がした。サプライズで登場したHOTEI氏の熱狂も素晴らしかった。HOTEI氏はHOTEI氏なのだけど、そのギターから布袋少年が透けていてなんとも言えないいい気分になった。置かれた状況、鳴らしている音楽、求められる姿、それらが全て違ったとしても、音楽のもと、軽々と飛び越えられることもある、と知った。いい瞬間だった。ライヴという場においてスパークスはずっと過去の宝石箱からみんなが見過ごしている輝きを再提示してくれるけれど、本編最後に演奏された"A Walk Down Memory Lane"には本当に驚いた。まず、この曲がすぐにはなんの曲かわからなかった。終演後に舞台に貼られていたセットリストを見ても「なんだっけ?」となっていたし。妻は「新曲か……?」と言っていて、私もいかにも1988年らしいクラップのシークエンスに後ろ髪をひかれながら「そうかも……」とか答えていた。ライヴハウスを出て調べてみると、1988年リリースの『Interior Design』の最後から2曲目に収められていた曲で、「あ~~~~」と声が出た。その後、あたらめて"A Walk Down Memory Lane"を聴いてみると、確かに1988年の音をしていて、その奥にあるものに気づけていなかった、ということがわかった。ライヴではBメロにいく時、FからDmに行く間に、経過音としてEが弾かれているのだけど、その経過音がギターによってちょっと強調されて聴こえて、たったそれだけのことなのにこんなにも聴こえ方が変わるんだ、いやいや、この輝きはもともとあったものじゃんな、と本当に反省した。(しかしサビのコード進行、F→F#→Gm→F#って何これ!!!ヤバすぎる!!!)当時リリースされた日本盤に掲載されている渡辺淳さんの和訳によると、"ちょっと歩いてみよう 記憶の小路を歩くんだ 細い道を照らす 時代の標識を次々と通り過ぎて そして、何が今の世の中を このようにしたのか判断しよう そして、誰がこの世の中を 良くする可能性があるのか"と歌われている。去年の来日でも印象深く演奏された"Please Don't Fuck Up My World"(お願いだから私の世界を台無しにしないで)ほどではないかもしれないけれど、現状と照らし合わせて注意深く選曲されたということがよくわかった。
アンコールの1曲目、我々は度肝を抜かれた。大好きな『Hello Young Lovers』から大好きな"(Baby, Baby) Can I Invade Your Country"がプレイされたのだ。ものすごく物騒なタイトルで、アメリカの国家をそのまま引用して、"Can I Invade Your Country"とまるで女性を口説くかのように歌われるこの曲(実際に別歌詞のヴァージョンがあって、そっちでは口説くように「ビートルズだと誰が好き?」とか言ってる)はブッシュ政権下の2006年には2006年の響き方があったと思う。トランプ政権下の2026年には2026年の響き方をする。そしてそれは"A Walk Down Memory Lane"のそれと呼応していたような気がしてならない。
(Baby, Baby) Can I Invade Your Country ‑ 曲・歌詞:Sparks | Spotify