幻燈日記帳

認める・認めない

青少年のためのブロッサム・ディアリーとその周辺入門



レコードストアデイのときにJETSETでトーク&DJのお誘いを受け、
『青少年のためのブロッサム・ディアリーとその周辺入門』と題して、
1時間ほどのトークをしました。使用した曲のリストになります。
レコードストアデイなのでヴァイナルを持ってるものからの選曲でしたので、
重要な曲が抜けていたりしますがご容赦ください。
レコードコレクターズに特集記事を書いていた高田敬三さんと、
僕にブロッサムのレコードをくれたAさんに特別で一方的な感謝を。


1. The Rootin' Theme
ー62年にルートビアのCMに使われた曲です。
 この曲をきっかけとして翌年の「Sings Rootin' Songs」に繋がったと聞きました。
 オープニングとして使用させていただきました。
 YouTubeにあがってないので貼れませんが可愛らしい曲です。
 2003年くらいにリイシューされた国内盤アナログには、
 こちらの復刻7インチがおまけでついていましたが、
 CDにはまだなっていないようです。
2. Lullaby Of Birdland / Les Blue Stars (1954)
ーここからブロッサム・ディアリーの活動を時系列に追っていきます。
 (一部かける曲順を間違えたりしていますがその度書きます)
 http://www.youtube.com/watch?v=6lG442lakJ8
 動画ではなぜかブロッサムの名義になっていますが、
 一応ブルースターズの音源です。
 結成にはボブ・ドロウなどの力添えがあったとかなかったとか何かで読んだ気が…
 確証がないので書くべきじゃないんですが…
3. Just One of Those Things
ブルースターズとヴァーヴからレコードを出す間に、
 一枚、ピアノのアルバムを吹き込んでいます。
 後の夫(割りとすぐ離婚)となるボビー・ジャスパーと一緒に演奏しています。
 56年にはBlossom Dearie Plays "April in Paris"を。
 同年にヴァーヴから"Blossom Dearie"をリリースしています。
 が、どちらもわたくし所有していないのですっ飛ばして、
 57年のアルバム"Give Him The Ooh-la-la"のオープニング曲を。
 http://www.youtube.com/watch?v=JUllYrpEAk8
4. Doop-Doo-De-Doop (A Doodlin' Song)
ー58年に発表された"once upon a summertime"から、
 サイ・コールマンのペンによるナンバーを。
 一緒に歌っているのは誰かしら、
 ギターを弾いているマンデル・ロウという説もありましたが、
 近年発売された日本盤のライナーノーツで、
 ブロッサムの証言によりサイ・コールマン本人だということがわかりました。
 http://www.youtube.com/watch?v=l2dsDtuHTRI

5. One-Two-Three
ーここから少し話を脱線させまして、サイ・コールマンにスポットを当てます。
 サイ・コールマンは作曲家であり、アレンジャーであり、
 ヴォーカリストでもあり、ジャズ・ピアニストです。
 いくつかある側面から最初はジャズ・ピアニストを。
 YouTubeにリンクなかったのでAmazonMP3のリンクを。
 http://www.amazon.com/One-Two-Three/dp/B004A8F1DE
 非常にシャレた構成、演奏の曲です。
 1955年発表のCy Coleman Trioという作品に収録されています。
6. Speak Low
ー次はアレンジャーとしての仕事を。
 76年発表の"The Party's On Me"収録です。
 このアルバムはまだCDにはなってないのですが、
 ダンスレコードとして非常に優秀だと思っています。
 76年なんてエレピ全盛だろうにアコースティックピアノで押す姿勢も素敵。
 YouTubeになかったので中古レコ屋の試聴ファイルでお楽しみください。
 http://www.breakwellrecords.com/product/2325
7. If My Friends Could See Me Now
ーそしてサイ・コールマン特集はここでおしまい。
 最後はヴォーカリストとしてのサイ・コールマンを。
 ミュージカルで自身が作曲した曲を歌う、という66年発表の自作自演盤、
 "If My Friends Could See Me Now"からタイトル曲を。
 同年に上演されたミュージカル"Sweet Charity"のナンバーです。
 映画、有頂天ホテルでYOUさんが歌ってたそうです。
 http://www.youtube.com/watch?v=hjst0w3fcgk
8. Charade
ー話をブロッサムに戻します。
 ヴァーヴ時代に彼女は6枚のアルバムを残していますが、
 少し駆け足にしないと4人のミュージシャンを紹介するのは難しいので、
 Blossom Dearie Sings Comden and Green(1959)、
 My Gentleman Friend(1959)、
 Soubrette: Blossom Dearie Sings Broadway Hit Songs(1960)、
 はそれぞれ所有してはいましたが割愛させていただきました。
 で、かける曲順をここで間違えています。
 本来だったらこの次にはLasy, Crazy...をかけなければなりませんが、
 64年にキャピトルから発表された"May I Come In?"から。
 編曲はジャック・マーシャルによるものです。
 今回のために少し勉強したのですがジャック・マーシャル、
 結構曲者みたいで今後掘りがいがありそうです。
 曲はヘップバーン主演の同名映画に、
 ヘンリー・マンシーニが書いた曲です。
 http://www.youtube.com/watch?v=qFI1lBi5j1c
9. Lazy, Crazy Days of Summer
ー時期が前後してすみません。
 63年に発表された"sings rootin' songs"から。
 ルートビアの販促用?に作られたレコードです。
 珍しいもんだからってかなりプレミアついてたそうで、
 まともにCDになってるのも日本だけとか。
 内容は1963年の曲を歌う、みたいなコマーシャルな内容。
 ちゃっかりサイ・コールマンのI've Got Your Numberも収録されてます。
 ブロッサムはこのアルバムでピアノを弾かず、歌に専念しています。
 リンクはこの曲がなかったので1曲目の「酒とバラの日々」を。
 http://www.youtube.com/watch?v=LqI5lBQJ0xo
10. You Turn Me On Baby
ーキャピタルとの契約も1作だけで次はイギリスのフォンタナに籍を移します。
 66年に"Blossom Time"をリリース。
 ロンドンのクラブ、ロニー・スコッツでの演奏で、
 その翌年にも"Sweet Blossom Dearie"という、
 同じロニー・スコッツでの演奏を収録したライヴ盤を発表しています。
 この当時の演奏が如何に充実していたか、ということの証明のように、
 "Live In London"という2枚のCDも2000年代に入ってからリリースされていて、
 音質は悪いのですが、素晴らしい演奏が聴けます。
 で、このYou Turn Me On Babyはサイ・コールマンのペンによるものです。
 Prizeというミュージカルからの曲だったと思います。
 この曲はリンクが見つかりませんでした。
 今なら1100円でこの素晴らしいライヴ盤が買えます。
 このアルバムは必修科目と言えます。なのでAmazonのリンクを…
 と思ったら既に在庫が切れていました。
 言わんこっちゃない!!血眼になって探しましょう。
 きっとまだ在庫あるところにはあるでしょう…
 タワレコの在庫はこちらから確認できますので、
 是非ともご利用ください。八王子、町田、秋葉原には1枚ずつありそうですね。
11. Sweet Lover No More
ー"Sweet Blossom Dearie"からもう一曲。
 盟友デイヴ・フリッシュバーグの曲です。
 ドラムはタンバリンに持ち替えて非常にグルーヴィーな演奏で聴かせてくれます。
 こちらはYouTubeにありましたので聴いてもらうのが早いかと。
 http://www.youtube.com/watch?v=wDwGhyWefCg
12. You Can't Go
ーここで話はまた脱線。デイヴ・フリッシュバーグに。
 先ほどの"Sweet Lover No More"も彼の曲でした。
 デイヴ・フリッシュバーグはジャズミュージシャンで、シンガーで作曲家。
 サイ・コールマンもそうだし、後述のボブ・ドロウもそうですが、
 かなりシャレた感性のミュージシャンだと私は考えています。
 この曲が収録されているのは"Oklahoma Toad"という70年のアルバムです。
 彼が発表してきた作品の中で唯一のポップス寄りのレコード。
 プロデューサーにはマーゴ・ガーヤンの名前も。
 http://www.youtube.com/watch?v=PlqoqQJ6GMw
13. Stevedore Stomp
ーシンガーソングライターとしての前曲から一転、というほどでもないですが、
 デューク・エリントンのナンバーを演奏した曲を紹介しました。
 77年発表の"Getting Some Fun Out Of Life"収録曲です。
 YouTubeのリンクがなかったのですがallmusicで試聴はできます。
 下記のリンクから。
 http://www.allmusic.com/album/getting-some-fun-out-of-life-mw0000184099
14. The Wheelers And Dealers
ーブロッサムも77年のアルバム"Winchester In Apple Blossom Time"でも吹き込んだ曲の、
 フリッシュバーグによる自作自演テイク。
 おそらくオリジナルと思われるLani Hall(初期セルジオ・メンデス&ブラジル'66メンバー)が、
 吹き込んだテイクは発見する事ができたのでそちらをリンクに貼ります。
 これまた素晴らしい。
 http://www.youtube.com/watch?v=1EYY6Ugl6dM
15. Sunny
ー話をブロッサムに戻します。
 ライヴ盤が2枚続いて1967年にようやくスタジオ録音を発表します。
 タイトルは"Soon it's gonna rain"と言いまして、
 ジョビンの曲やバカラックの曲が多く収録されています。
 スタジオアルバムでは唯一正式に再発されたこともなく、
 かといってブートでもCDでてるという話も聴きません。
 市場ではプレミア価格で取引されていますが、
 私は運良く渋谷のマンションの一室に店を構えるジャズ専門店で、
 6300円で購入しました。
 店主の話によると「2万とか3万とかつけるところはつけるだろうけど、
 本来在るべき価格にしたい」と言っていて目頭が熱くなったことを覚えている。
 一説によるによると彼女自身があまり気に入ってない、と言われていますが、
 素晴らしい曲がいくつか収録されています。
 たとえば"sunny"は前年のbobby hebbによるヒット曲。
 スリリングで上品な編曲はとても素敵です。
 http://www.youtube.com/watch?v=2GgUSdOFlHg
16. I Like London In The Rain
ー時代はまた前後してしまいますが、今回は、
 レコードをひっくり返さなきゃいけなかったので、
 間にこの曲をはさみました。1970年発表、
 "That's Just The Way I Want To Be"から最後の曲を。
 この曲は3,4年前に7インチが切られたのでそれを所有していますが、
 オリジナル盤はいままでお店で飾られたのを見ていますが、
 どれもこれも2万を越えていました。いつか必ず欲しい一枚です。
 あとこのアルバムも必修科目です。
 タワレコでの在庫状況はこちらで確認できます。
 Amazonでもう馬鹿みたいな値段ついてるから早く買った方がいいです。
 http://tower.jp/ec/StoreProcure/StoreProcureItem.aspx?iid=3116835
17. A Wonderful Guy
ー"south pacific"というミュージカルのナンバー。
 小編成で演奏がはじまるのですが、
 上品にヴィブラフォンや管楽器が彩りを添えていきます。
 先ほど挙げた"sunny"とこの"a wounderful guy"を聴くだけでも、
 このアルバムを聴く価値はあると思いますが、CDにまだなってないです。
 それどころかブロッサムはフォンタナに数枚7インチを吹き込んでいます。
 それらを集めてCDにすればそれはそれは魅力的なものになると思うのですが…
 どこかそういうCD出してくれませんかね…
 ちなみに、YouTube探しましたけどありませんでした。
18. You Have Lived In Autumn
ー1973年、ブロッサムはついに自主レーベルを立ち上げます。
 兄であるウォルター・バチェットを社長にダッフォディルを設立。
 73年には"sings"を発表。
 経費を浮かせるために彼女自身が書いた曲が収録される事になったそうです。
 プロデュースにボブ・ドロウを迎え、宅録的でローファイなテイストも見え隠れ。
 編成もベース、ドラム、ディアリーのエレクトリックピアノ、ときどきギター、
 というシンプルなものでディアリーの楽曲の素晴らしさが映える結果に。
 ジャズシンガーというよりもシンガーソングライター的なアプローチとも言える名盤です。
 http://www.youtube.com/watch?v=SbJB2kTv17E
 (Blossom's Own TreasuresというタイトルでCDが出ていますが、
 なぜかデジタルノイズが乗ったり、マスターの状態があまりよくなかったりします。
 高くても4000円くらいでアナログも買えると思いますので、
 この空気感はアナログで体験してもらいたいものです)
19. I'm Hip
ー75年に発表したダッフォディルの2枚目。
 楽曲は今までもライヴでは披露されたり、
 フォンタナでシングルを吹き込んできた、
 ボブ・ドロウとデイヴ・フリッシュバーグの共作、I'm Hip
 http://www.youtube.com/watch?v=QbVft-fJ3g4
20. Answering Machine
ー時代は少し飛びまして、次のきっかけとして、
 83年発表のスタジオ盤"simply"からこの曲を。
 ボブ・ドロウとのデュエットがうれしい一曲。
 YouTubeに音源なし…
21. Don't Think Twice
ー最後の脱線。ボブ・ドロウの話を少し。
 ドロウが66年に発表した"better than anything"という2枚目のリーダーアルバムの1曲目、
 ボブ・ディランのカバーをかけました。
 1枚目のリーダーアルバムは1957年の"devil may care"なので、
 9年振りのリーダーアルバム。このアルバムもジャズというよりかは、
 ポップス寄りな作品になっている気がします。
 http://www.youtube.com/watch?v=ugZrxoSXuaY
22. Tic Tac Toe
ー"better than anything"の翌年にドロウは、
 スパンキー・アンド・アワー・ギャングのプロデュースをしたり、
 ポップスのフィールドで活動していきます。
 その最たるものはおそらく"schoolhouse rock"でしょう。
 ヴァイナルをもっていないので今回はかけませんでしたが、
 De La Soulがサンプリングしたことでおなじみ、
 "Three Is A Magic Number"(http://www.youtube.com/watch?v=aU4pyiB-kq0
 や、ブロッサムが歌う"Figure Eight"(http://www.youtube.com/watch?v=EvqrAwrAs1A)
 (↑はエリオット・スミスがカバーしたりしていましたね)
 など子供向けでありながらヒップな楽曲を制作していました。
 その流れを汲んだ、と思われる"Tic Tac Toe"をかけましたが、
 これはドロウのソロ名義ではなく、Children Of All Agesというグループでの吹き込みです。
 メンバーはArnie Lawrenceや盟友Bill TakasやBill Goodwinなどなど。
 若干スピった曲も収録されていますが、
 作曲のクレジットが"Children of All Ages"となっているこの曲を紹介しました。
 CDにもなっていなく、YouTubeにも動画はありませんでした…
23. Touch The Hand Of Love
ーいささか駆け足でしたし、83年の"Positively"からの曲や、
 それ以降87年までヴァイナルで制作されたものは用意していったのですが、
 それらの曲はかけられませんでした。反省しています。
 最後に僕が特に好きな彼女の曲で締めました。
 1977年発表の"Winchester in apple blossom time"から。
 http://www.youtube.com/watch?v=EEpPCWh_eyQ


以上が「青少年のためのブロッサム・ディアリーとその周辺入門」でした。
この講義?を通して何が言いたかったかというと、
それはやはりブロッサム・ディアリーという素晴らしいミュージシャンがうんぬんかんぬん、
っつーつまんない話になってしまうのですが、
彼女の周りに居た素晴らしいミュージシャンについて語られることは、
残念ですがあまり機会がありません。
サイ・コールマンは2004年に亡くなってしまいました。
そしてブロッサム・ディアリーも2009年に亡くなりました。
ボブ・ドロウとデイヴ・フリッシュバーグは今も健在で、
どちらも精力的に活動を行っているそうです。
ボブ・ドロウに至っては6/28,29とブルーノートにて来日公演があります。
(私はそれを見逃す訳にはいきません。
お気に入りのレコードをかかえてきっと観に行く事でしょう)
私ははっきりいって熱心なジャズのリスナーではないです。
マイルスはカインド・オブ・ブルーもクールの誕生も聴かずに、
ゲット・アップ・ウィズ・イットを聴いていますし、
コルトレーンジャイアント・ステップスよりクル・セ・ママ。
トランペットならチェット・ベイカーが一番好きだし、
ピアノだってエヴァンスよりも最近ききだしたヤンシー・キョロシーが好きです。
くらべたりするものではない、というのはわかっていますが、
そんな私が夢中になるミュージシャンについて、
一度ぐらいは大きい声でしゃべってみたかったんです。
一塊のインディーミュージシャンがなにか言って、
状況が変わるとは思っていませんが、
ほんの少しでも彼らの功績を伝えようとしなければ、
いずれは途絶えてしまうような気がしたのです。
それでは、今後、CDになってない音源が、
再発される事を祈って筆を置きたいと思います。