12日
ビッグビューティーのミニイヴェント。ついに一連の動きが終わる。名残惜しさを抱えながらも、軽い打ち合わせでもう爆笑。そんで始まってしまえばラジオの通りの脱線に次ぐ脱線。「中野サンプラザの大きさのなか卯」で大爆笑。いつか放送されるといいですね…… 終わってすぐそばのもうやんカレーで妻、ぴんくさん、ぴんくさんのマネージャーと4人で食事を摂る。オーダーを終えて気がついたが、私が好きなもうやんカレーは昼間のビュッフェにあるほうれん草のカレーなのであった。絶対またビッグビューティーやりたい。
某日
昼間シティポップレイディオの収録。言葉が何度か途切れ、時間をかけて言葉を選んだ。そういう回は多分いい回になっているはず。移動してEPのマスタリング。小鐡徹さん、さすがの仕上がり。打ち合わせをしつつ、夕方前に終了。池袋に寄り道して沖縄物産展でもずくを買い、ココナッツでも買い物。中川くんと近況の立ち話。先日のあんずちゃんの原画展で母が「前に学校の友達と原宿のシェーキーズ来たことあったよね。あれ誰とだったっけ?」と訊かれた。「そういえばそんなことがあったような気も。松ちゃんとかかな〜。でもなんで原宿なんて行ったのか思い出せないね」とか話していたのだが、中川くんは最近の私のSNSを見ていてくれたらしく、「昔さ〜、澤部のお母さんとゆず観たあとシェーキーズ行ったよね」というではないか。そうだった。多分「ユズモア」リリース時のツアー、代々木第一体育館でのライヴがハネたあと行ったんだ。記憶のパズルはなんとか納まってくれたのだが、むずがゆい気持ちにもなる。あんなに大好きだったゆずのライヴ、きっと心を弾ませて観に行ったであろうあの日のことの一切を私は忘れてしまっていたのだ。
某日
EPに関する取材を一本。酷暑の中、長袖でなんとか汗をかかないように撮影。地獄。でも30分ぐらい外うろうろしていたけどなんとかなった。こまかくあおいでくださった皆様のおかげです。早めに終わったから吉祥寺寄って帰ろう〜とか言ってユニオン見てたら川辺くんから連絡があってこの日、ご飯行こうと約束していたのを忘れてしまっていたと気がついた。さも元から忘れてなかったかのようにふるまい、吉田も誘って、久しぶりにファミレス行こうよ、とサイゼリヤへ行く。お盆の時期といえども、(いや、だからか)混雑していて、先に到着した私は明らかに浮いているように思えた。信じられないぐらい奥まった場所で2人を待ち、閉店近くまで最近あったことを話し込んだ。吉田は先に帰って、川辺くんとなぜか歌舞伎町を少し歩く。10年前の新宿とは全然違うね。話し足りない気持ちもあったけどグッと抑えて電車に乗った。
15日
昨日、パ音からマスタリングに対して意見を受け取っていた。その部分を言われるまで全く気が付けなかった。意見というのはシンプルにいうと音圧がもう少しあった方がいいのでは、というもの。スカートのアルバムとしてまとめようとしていたから、先日のマスタリングでオッケーと私は判を押したのだが、パ音のそれはれっきとしたダンスミュージックなのであった。小鐡さんに無理を言って一曲だけ差し替えてもらう。快く引き受けてくれたし、またいいものになった。"Extended Vol.1"9/4、配信開始です。
夜はカクバリズムの夏祭り。オールボーもmei eharaさんも最高だし、社長とのバック・トゥ・バックも最高だったけど、キセルがとにかく素晴らしすぎた。2度泣いた。「ベガ」で泣くのはわかる。しかしこの日私が泣いたのは「二度も死ねない」だった。豪文さんがドラムを叩き、友晴さんがベースを弾く。ギターはオケ!ぎこちなさとも違う、絶妙なグルーヴで音楽が紡がれることに猛烈に感動したのだ。そして8月15日にこの歌を聴くというその意味。
16日
台風近づく東京。
昼過ぎ、ナイポレ収録。ベース始まりで、と選曲を進めたのだが、何周かして引き出しの手前にあった曲ばかりになってしまったけど、うまくまとまった気もする。
夜、yes, mama ok?のリハーサルに向かう。部屋を出ても大した天気でもなく、なんなら傘すら必要じゃなかった覚えがある。これなら大したことないな、と人もまばらな上りの電車で「つるばらつるばら」を読む。15年以上前の私が「もう私に向けられたものではないかもしれない」と思った理由もわかる。それでも鮮やかに曖昧に私の心は揺れる。表題作を読み終える頃、乗り換えの駅で顔をあげたらこの世の終わりみたいな空の色だった。セピア色の街だ。恵比寿で降りるとやや天気が悪い程度。スタジオに着く。ドラム叩くのも久しぶりになってしまって感覚を戻す気持ちで頑張った。ホンジョーさんと一緒にやるのは初めてで、これまたいい具合。次のリハーサル、本番が楽しみ。9/1、ロックンロール中学校の美術準備室で待ってるぜ。
スタジオを出るとひどい雨。でもここからさらにリハーサル。翌日に控えた「SUMMER SONIC 2024」、PUNPEEさんのステージに参加するからそれのためのちょっとした確認のため、別のスタジオに向かう。地下鉄を降りると雨も止んでいて、高速道路の隙間からはいわゆる有名な「ジンライムのようなお月様」も見えた。確認も超スムーズに済む。PUNPEEさんからの提案でカヴァーすることになったフィッシュマンズの「BABY BLUE」も気持ちよく決まった。しかし、体にこびりついているぐらいに思っていた歌だったのに、いざギターを弾きながら歌ってみると、また違ったギアに入る。歌おうとしても歌詞が曖昧になってしまうのだ。何度も聴いて、頭の中でもあれほど反芻してきた曲なのに、その頭の中にあるものを頭の外に出そうとすると違った形になってしまっていたのだ。不思議な体験だった。単純に自分以外が聴くことを想定しないで歌っていただけかもしれないけど。慌てて歌詞をチェックする。そうだった。これがこう。消えてから浮かぶ。うんうん。で、そして次はこの言葉。「今にも僕は泣きそうだよ」。
17日
夕方までぼんやり過ごす。さすがに緊張するけど同じ幕張でも不思議と(以前PUNPEEさんに招かれゲスト出演した、幕張メッセでの大きなイヴェント)POP YOURSの時よりも気分は落ち着いている。調子の悪い車(ワゴンR)に「ごめんね」と声をかけ、千葉に向かった。ドライヴは好調。車降りると海沿いだから多少の涼を期待したのだがクソ暑いだけだった。あっという間に移動、あっという間にステージ横。海辺のステージだったが、暑さに加えて潮風のベタつきが加算されてなかなかの歯応え。しかし、PUNPEEさんのステージが始まりさえすればそんなバッド・コンディションも吹き飛ぶ。ステージ脇から慎重にチラチラ見る。どれぐらい人がいるか把握できない。ステージ上手に向かうスロープのすぐ横は浜辺で、視認できない夜の海はこんなに怖いものなのか、と怯えた。PUNPEEさんに呼び込まれ、ステージに出ていくと埋め尽くす人!人!人! 「ODDTAXI」のパフォーマンスも上手くいって、「BABY BLUE」が始まった。PUNPEEさんが「サマー・シンフォニー」をキックして、私が歌い出した途端に花火があがった。そして光に遅れて音が鳴り出し、観客も気がついて歓声が上がった。なんという景色だろう。まず、大勢の人がいる。それは残念だけどスカートでは見たことのない景色だ。そこに花火まであがった。私はその景色から様々なものを受け取った。今起きてることを受け止め切れるかギリギリだ、これ、って思ったのだけど、この感覚はこないがの松本伊代さんの「NEW ERA...」もそうだし、いつぞやの風呂入っている時に真夜中のFENから流れてきた「ONCE IN A LIFETIME」もそうだ。あとあれだよ、ちょっと長くなるけど書きます。あれは2015年の慶一さんのライヴにゲストで出演した時、私はトーベヤンソン・ニューヨークのライヴもあったのでリハーサルをアンコールのリハーサルまでは出れず、自分の出番の最小限だけで済ませてしまっていたのでした。実際の本番、アンコールで私は矢部さんと幸宏さんのドラムセットの間に立っていました。曲は(優介アレンジの!これも重要!)「エイト・メロディーズ」。私は賑やかなコーラス隊の一員だったのだが、矢部さんと幸宏さんが同じフィルインを叩き出したあの瞬間。あらゆるプラスの感情があの一瞬に過入力を起こしたので、最後の例はちょっと違うかもしれないけど、ともかく、そういうご褒美としか言えない瞬間。自分が努力して、努力して手に入れたものは本当に素晴らしい。ねうちのあるものだよ。私にだってその成果を愛おしげに眺めることだってある。でもこういう瞬間にはどうしたって勝てない。
18日
仕事が終わらない。でもどうにもならない。思い切ってパソコン音楽クラブのワンマンに出かけた。開演時間を間違えててちょっと遅れちゃったけどDTMスペシャリストのカードも買えた。夢見たいな光景だった。音楽も映像もお客さんも全てがハマっていた。そしてTBちゃん(tofubeats氏)から「最後、映像が川辺くんとパソコン音楽クラブの2人を3人3分割で並べてチャーリーズ・エンジェルみたいにするらしいですよ」と耳打ちされ、そいつはヴァイラル・モーメント!!と思ったが、実行されずふたりで肩を落とした。
19日
昼は仕事。近くのファミレスに向かうと冷房が壊れたため新規入店ができない、という。なんとなく西荻窪に出て今野書店。お店に入って胸いっぱいに本の匂いを吸い込み、漫画を数冊買う。それから高架下のサイゼリヤに向かった。ノートを開くが怖いほど何も思い浮かばない。漫画を読んだりして3時間ほど経った頃、諦めがついた。今日はダメです。部屋に戻って妻とトリプルファイヤーを観に出かける。序盤から中盤の感じ、なんだろう、なんだろう、って思っていたんだけど、高校生とか大学生の頃に読んだレイ・ブラッドベリの手触りだ、と気づいて空恐ろしい気分になる。なんてバンド。しかし、(後で気がついたのだが)これはなんてことはない、「下半身モヤモヤ・みぞおちワクワク・頭クラクラ」(細野さんが提唱したリズム・メロディ・コンセプトの三本柱)なのであった!!!やってくれるぜトリプルファイヤー!今まで「EXTRA」が出て、これがトリプルファイヤーの「リメイン・イン・ライト」だと考えていた。しかし、今日のライヴを観たら、もしかしたら「EXTRA 」は「フィアー・オブ・ミュージック」なのかもしれない、なんて思うようになった。まだ来ない未来は明るい。世界を照らせトリプルファイヤー!
EXTRA ‑「Album」by トリプルファイヤー | Spotify