幻燈日記帳

認める・認めない

ジャズ束

15日

ギターポップレストラン出演。yes, mama ok?でもう10年以上出入りしているイヴェントだけど何回出演してもギターポップレストランという名称に体が慣れない。yes, mama ok?以外にも今回は弾き語りの出演もあり、直前にムーンライダーズのライヴがあったことも加わって完全に頭がスパークした状態でステージにあがることに。お客さんの調子も最後まで掴めず、木の棒でぶん殴るようなライヴになってしまった。yes, mama ok?は本番開始直前に「今回は来なそうだ」となっていたキラー氏が突然登場。奔放さとポップネスに満ち溢れたライヴになった。終演後、yes, mama ok?で打ち上げ。2日後に迫った曲出しの打ち合わせまでに曲を書かなきゃいけないから、って早めに出ちゃいますが、と参加したのだが遅い時間までずーっと話し込んだ。うれしい☺️

 

16日

ツチカさん、tofuくんを迎えてナイポレの収録、の前にスタジオに入って作曲。区切りの悪い時間にスタジオに着いてしまったのでドーナツ買って時間を潰した。夕暮れ迫る吉祥寺はいい。ギアをいれるためにコーヒー飲みながらギターを触り、スウィートソウルライクないいモチーフがひとつできた。ナイポレの収録は作曲から上手く切り替わらない部分があって変な感じになってしまった場所もあったけど、めちゃくちゃ楽しく話せたのでよしとしたい。収録終わって仮眠をとるつもりで布団に入ったのだがコーヒーが祟ったのか、頭がまわったままだったからなのか、まったく寝付けず、またスタジオに入る。昨年のPOP YOURS、PUNPEEさんのゲストで出演したときに1万人ぐらいを前にして「ODDTAXI」を歌ったときに、「普段のライヴのペースで1年間やっても1万人聴いてくれるかどうかわからないのに、たった一晩でこんなに多くの人が聴いてくれたのか」というのがいい意味でショックで、それ以来よせばいいのに売れるとは、売れる音楽とは、と考え続けて悶々としている。そのひとつの通過点に「期待と予感」はあったはずだが、結果は完全な横ばいだった。だからこそ、もっと真摯に売れるとは、ということを考えなければならない、とギターを持ってできたのが5拍子のモチーフだった。俺は世の中をナメているのだろうか。

 

17日

2曲のモチーフも携え、打ち合わせに向かうために外に出る。風は冷たいが陽射しにさらされるとまだ暑いぐらいに思えてしまった。季節はいつまで我々を翻弄するのだろうか。打ち合わせを終えて整体に向かった。随分行けていなかったからとにかく効いた。外を歩くと感覚が変わる。ワンフレーム遅く感じるのが心地よい。

 

夏の間は休んでしまっていた週に1日は1万歩あるく、というのを再び初めていて、この日もよく歩いた。根津での施術を終えて、途中、湯島にあるナワブに寄りビリヤニに似た何かを食べ、御茶ノ水まで歩いた。私が育った西台(高島平)は坂がある街で、練馬に引っ越してからというもの、坂の少なさを気持ちよく思っていたが、実際あの辺りの坂の多い道を歩いてみると、自分はどうして坂が少ないことをよしとしたのかわからなくなってしまった。途中、歩いているときに靴に何かが当たっていつもと違う感覚があった。なにかを踏んだ、というわけでもなかったのだが、そのことが妙に気持ちに残った。

 

18日

リハーサル。コロナに怯え、自分から企画を打つ度胸も体力も消失してしまったからリリースツアー以外、今年は呼ばれたライヴに出ただけだったからライヴが少ない。この日のリハーサルも年内最後のフルバンドのリハーサルだ。22日、名古屋のライヴのためだ。フリーだし、フェスモードの選曲にしたので楽しんでもらえたら最高。リハーサルが終わってメンバーとも売れるとは何かを話し合った。結局YouTuberデビューして過去にバズった定型のフォーマットに沿ってやっていくしかない、という話になった。メントスコーラとアイスバケツチャレンジから始めます。

クラブ東別院 in ドデ祭2023 : スカート オフィシャルサイト

 

19日

ゴーストワールド」の試写の招待を受け、観に行く。2001年公開の映画で、リヴァイヴァル上映が11月から決まったのだそうだ。私は未見だったが、23歳マネージャーA氏のフェイヴァリットの一本だったそうで、ホムカミ福富も好きだったよな、観ておかないと、ぐらいの軽い気持ちで観に行ったが、「売れたい」と口では言いながら5拍子の曲を書いているような今の自分に重なってしまい見事にズタボロになる。終盤でイーニドが部屋で雑にかけたレコードからある大好きな曲が流れ出してつい涙がこぼれた。その曲は無垢を持ってぶん殴られるような曲で、大好きだけどなんならちょっと畏れすら感じていた、ここ2年ぐらいの私がお守りのように思っていた曲だった。イーニドも俺だし、シーモアも俺だ。マネージャーA氏が以前、雑談のなかで「映画観終わったあと感想戦になるのしんどくて……」と言っていたのを覚えていたので、サラッと別れてしまったのもよくなかったのかもしれない。レコード屋に行って気持ちを落ち着けよう、ハイファイに行けば馴染みの店員さんに会えるかもしれない、と、イーニドが部屋で雑にかけたあの曲を聴きながら渋谷の街を歩くのだが、目の前の景色が違いすぎて今の私はイーニドにもなれなかったし、シーモアにもなれなかった、と気がついてしまった。HMVに入るつもりはなかったのに、なんとなくHMVに入って、レコードを物色して店を出たら声をかけられ、振り向くとミツメの川辺くんがいた。本当に救われた気がした。用事で渋谷に来ていてたまたまHMVにいたそうだ。そのまま上の階のルノアールに行って近況を少し話す。いい意味でズタボロになった心に友人との会話というのがジツにシミた。川辺くんも随分昔に「ゴーストワールド」を観ていたから、「こうこうこうだったんだよ!あのシーンがさ、今の自分に重なっちゃって」とか話す。「俺たちってブシュミ(シーモア)ぐらいの年齢なのかな」「作中ではどうだったかわからないけどブシュミの生年月日と映画公開の時期から察するに40代ぐらいだね。もう手が届きそうだ、ははは」。今度は飲みに行こうよ、と言って別れた。嬉しい一日になった。本やちょっとした惣菜を買ってから帰る。帰り道はいつもと変わらない。ホームに向かうと、電車が来て、その電車に乗れた。駅からバス停に向かうと、バスが来て、そのバスに乗れた。

映画『ゴーストワールド』オフィシャルサイト

チョコレート ‑ 曲・歌詞:ミツメ | Spotify