幻燈日記帳

認める・認めない

ゆめサンバ

某日

ラジオの収録のあとに整体入れようと思ったが妙にタイミング合わなくて諦める。

 

某日

ミツメとサニーデイのツーマンを楽しみにしていたのだが締め切りの関係で諦める。

 

某日

ムーンライダーズのリハーサルが始まる。自分でもどうなるんだろう、と思っていたのだがいざ音を出してみるとなるほど、こういう形になっていくのか、とワクワクする。ある日、慶一さんがとっかえひっかえにいろんな歌をうたっていて、最初はザ・バンドビートルズビーチ・ボーイズを経て、どこかで加川良になり、斉藤哲夫になった頃、しびれをきらした(ように感じた)くじらさんがはちみつぱいの曲を演奏はじめて、そこから演奏にながれていったのがとにかく最高だった。「センチメンタル通り」から「マニア・マニエラ」はたったの9年のできごとなのか。

 

某日

ナイポレの収録。直前で(深い理由じゃないんだけど)事情あり選曲テーマ変更。限られた時間のなかでどれだけ面白いものにできるだろうか、と思ったがひたすら私がぶち上がる回となってしまった。先週の妙な曲特集とは違ったベクトルでリスナー置いてけぼり回にはなると思う。最高に楽しかった。つかの間の休息にもなった気がする。

 

16日

ムーンライダーズのライヴ。1stセットも2ndセットも多分すんごくよかった。今回のライヴのためのリハーサルは最初の曲から順番に手をつけていった。「スカーレットの誓い」はレコードと同じDのキーではなく、普段のライヴでやっている通り、Cのキーでやる予定だったのだが、「温和な労働者と便利な発電所」をあわせ終わった後に、Dのキーでやった方がいいんじゃないか、と感じてしまい、「Dでやってみませんか?」と提案してしまったのだった。「出過ぎた真似をしたかもしれない」とちょっと心にひっかかっていた部分もあったのだが、本番でのあの感じはちょっと言葉では言い表せない高揚感だった。

 

17日

福井へ前乗り。移動している途中に社長から連絡が入り、当日に入る予定だったスタッフの家族にコロナ陽性が出てしまい、社長も野音の階段で転んで負傷してしまった、と伝えられ、一人旅が確定した。東京駅から米原、そこから敦賀でのりかえ。このまま素直に小浜線に乗っても良かったのだが、ちょっと時間が空いたので敦賀の街の地図を見る。少し離れたところにブックオフがあるな、と気づいた頃にはタクシーに乗っていた。ミツキヨの「強烈ロマンス」が落ちていたので購入。タクシーで駅の方に戻り、運転手さんから教えてもらったRecoyaにも載っていなかったオーディオ渡辺というお店でレコードを見る。MPSのジャズのアルバムなど、いくつか購入。いい店だった。時間があまりなかったのでいつかまたじっくり見たい。ギリギリの時間で小浜線に乗り、小浜駅を目指す。車内で平方イコルスンさんの「スペシャル」の3巻と4巻を読む。ずっと不穏だった気もするけどぐっとその色が濃くなる。そして過ぎていく田舎道が「スペシャル」の世界観に少しずつ重なっていくようだった。小浜駅に着き、海っぺりのホテルに着き、チェックインをした後、タクシー運転手さんにおいしい、と勧められたごはん屋さんに入る。確かに何食ってもうまい。自傷に近い気持ち(私は魚が食べられない時期が長かった)で注文した刺し身の盛り合わせもどれも美味しく、自傷に近い気持ち(私は酒を飲める時と飲めない時がある)で注文した日本酒も美味しかった。店を出るときにそのお店の女将さんから「あなたはね〜〜〜癒やされる!」と強い言葉をかけていただく。うれしくなって15分ほど歩いて最寄りのコンビニでガリガリ君を買った。夏の海でおれは心のバイブル、ムービックから出た方のたかみち先生の画集の世界に入り込むためにはそれが必要だった。コンビニから出ると女性ふたりに声をかけられて、話を聞くと明日共演するバカがミタカッタ世界のおふたりだった。偶然の出会いに嬉しくなり、海岸線で食おうと思っていたガリガリ君をふたりと別れた後に食べた。人がひとりも通らないほどの真夜中ではなかったはずだったが人はひとりも通らず、足音とときどき走る車の音だけが響く。海っぺりに戻ってくると、さすがに3組ほど人がいて、花火をしていたり、座って話しているようだった。私も少し離れて石垣に腰をおろす。灯台もなく、対岸のあかりがにじむ。カーブに沿って等間隔に強いあかりがあって、きっとあれは街灯なのだろう。街灯のあかりが飛び石のように海の中で弱くなっていく。明日はライヴだ、という気持ちにだんだんなっていった。マニア・マニエラ再現ライヴとどついたるねんのワンマンの間に挟まれたライヴはどんな気持ちで臨めばいいか、わからなかったのだ。

ホテルに戻って平方イコルスンさんの「スペシャル」の続きを読んだ。あまりにも、あまりにもな物語の終わり方に涙が止まらなかった。おまけ漫画の最後のコマのセリフが胸に刺さって仕方がない。ほのぼのナンセンスユーモア漂う漫画だったはずが、どうしてこうなった、とも思うのだが、以前平方イコルスンさんが書かれた「無理」という短編がすごく好きだったので、あの作品のヒリつく感じがそこにあって嬉しくもなった。

 

18日

ライヴは調子がよく、調子が良すぎてコードも歌詞も間違えた。ときどきなる。コロナ禍初期に開催された川辺くんとのツーマンで「視界良好」を歌っているときに「このままこの感じで歌い続けられたらぼくどうなっちゃうの」と思ったことがあるのだが、そのときとまったく一緒の感じ。そしてなによりどの曲を歌っても「スペシャル」のふたりの歌に思えてくる。我々は不測の事態に備えて、リスクを考えながら練習するのだが、頭がスパークしちゃった状態に備えることができない。どうしたもんか。