幻燈日記帳

認める・認めない

見つめるちから

4月1日

ゼキさんと焼肉を食う。

 

2日

珍しく積極的に人と会う日が続いていて、川辺くんとトリプルファイヤーで飯を食いに行った。あまりに楽しく、酒を飲んでこなかった人生だったからこういう夜をいくつ取りこぼしてきたんだろう、と寂しくなった。

 

3日

ダウ90000の単独ライヴを観終わったゼキさんを車に乗せて馴染みのファミレスで閉店まで語らう。あそこのあれがああだったよね!なんて話し合うのは楽しい!という当たり前の感情に落ち着く。ドラゴンボールとかスラムダンクとか読んでおけば、エヴァとかたけし映画とか観ていたら、と人生を振り返り、いくつそういう会話を取りこぼしてきたんだろう、と寂しくなった。

 

6日

下北沢THREEで生活の設計と砂の壁と対バン。砂の壁はあゆくんから教えてもらって聴いていたけどライヴが良かった。そうそう、ライヴってCDにおさまらない何かがあって、それが目先の言葉でおさまらない何かだったよね、経験を積むとその何かが「熱量」とか名前が決められていってしまうけど、そうならないものがあったのが良かった。

私は最後に機材費を払ったライヴが下北沢THREEだったからその思いが乗ったライヴになったと思う。あの頃、本当に傷ついてもうライヴをやめてしまおう、これからはスタジオバンドになるんだ、と決意を書いた日記がずっと下書きにあったのだけど、はてなダイアリーはてなブログに移行したときのどさくさに消えてしまった。時々思い出しては読んで、ダメージを受けるぐらい生々しいその日記、世の中に出さなくてよかったけどこうしてもうあの時の気持ちが具体的に残っていないのは寂しいよね。

生活の設計のライヴはPICOの「I LOVE YOU」のカヴァーが最高に決まっていた。最近発表された「キャロライン」はあらゆる過去の集合体から現在の街をつくってそこから未来を見るような曲で、胸が熱くなる。最後のメロディが大好きなフリッパーズを引用していてそこがグッとくる。

Sending to your Heart / 恋してるとか好きだとか (Remastered 2006) ‑ by Flipper's Guitar | Spotify

 

某日

しばらく曲書きの毎日。ゼキさんとアンドウくんと3人で飯を食った。

 

10日

シマダ選手権。物販には8062年のカレンダーが販売されていた。これは優介のライヴのあと、王将キメてるときにボーイが「カレンダー作りたいんですけど余ったら売れなくなるじゃないですか」と言っていたのを佐久間さんが「先のカレンダー売ったらいいんじゃないの?」と言い出し私が「凄すぎる発想だよ。今まで未来を売ったケースは多くはない。あってもいつかくる未来に追い越される。しかもその未来は遠くない未来だ。さらに、それは誰も未来を買ったことがないということでもある。でも未来のカレンダーを作ればそれが達成される。何千年も先の未来を印刷物という形で提供できるなんて信じられない。これは希望でもある。私は猛烈に感動している」と捲し立て、製作されたカレンダーはそんなに売れなかったらしいです。責任を感じるのでみなさん物販で見かけたら買ってください。

 

11日

ひらやすみの7巻が発売される。すぐ本屋にいって買ったのだけど自分の顔がこう印刷されているのは、なんというか照れる。

 

12日

喉に違和感があり医者にかかる。見た目はなんともないのだけど心配だったのでカメラを入れてもらうと、見事に声帯がむくんでいた。明後日からの関西行脚がどうなってしまうのか。緊急の薬は処方する、とりあえず1錠で様子を見て、だめだ、と思ったら2錠、しかしもし三日連続で服用してしまうようなことがあれば本当は来院して欲しいけど無理そうだからともかく絶対に電話はください、とにかく安静にしたまえ、というので自宅でやるべき仕事をキャンセルして薬膳的なものを食べてデトックスを試みたり、白湯にマヌカハニー溶かしたり、あらゆる方法で自分をセーブ、なんか怖い薬も飲んで不安の中眠りについた。

 

13日

起きて喉に違和感はさほどないので1錠追加。悪くはなっていないようだ。安心した。部屋の外へ出ると寒いぐらいだった。天気予報を見ると数日の間は暑いぐらいのはずだったのだけど、天気予報なんて当てにならないからな、とジャケットを羽織る。磔磔でエレキの弾き語りもしたくてギター2本持って部屋を出た。東京駅までは妻がついてきてくれたが、新幹線の改札入って以降、あまりの人、あまりの荷物でうまく進めず目の前で新幹線が行ってしまった。マネージャーに連絡をして、遅刻を詫びる。次にきた便の自由席にいい感じに落ち着けた頃、買っていた万カツサンド開封すると末吉だった。バンドではじめて北海道に行った2016年、用意されたぐだぐだの行程で飛行機に乗れなかった過去があるのだけど、その時も諦めの万カツサンドが末吉だったことを思い出す。万カツサンドだけは俺の未来を見ている気がする。しかし、2016年も行程は最悪だったけどライヴは盛り上がったしいい思い出にはなっている。そうなればいいのだ。

Duolingo捗る道中を経て大阪に着く。遅刻して着いたがてんしばは開放感あるいい公園。お客さんもいっぱいいて嬉しい。この2日間、歌うことをセーブしていたから実際に蓋を開けてみないと自分の喉がどういう状態なのかわからなかったけどうまいこと行きそうな気がした。初めて聞く人も多いだろうから、フレンドリーな選曲にして、本当にやりたかった曲はリハーサルに逃した。春、公園といえば「離れて暮らす二人のために」なのだ。

本番は絶好調〜〜〜とまではいかないものの、快調に終えた。大阪で歌う「視界良好」は格別です。終演後にたべたこんにゃくの唐揚げ、新感覚で良かった。

ホテルの部屋にはいってドカッと眠る。目が覚めて夜中、外に出る。天王寺公園を彷徨く。静かな夜です。池があり、緑があり、ときどき人とすれ違う。昼間の喧騒とはまったく真逆の世界で楽しかった。しばらく歩いてラーメン屋に入る。チャーハンに卵焼きととびっこが乗ったむちゃくちゃなサイドメニューが最高としか言いようがなかった。部屋に戻り、わざわざ持ってきたマヌカハニーを白湯に溶かして飲んで、直でも舐めてから眠る。

 

14日

喉は相変わらずだが、悪くはなっていない。安心して薬の服用はやめた。テレビをつけると納骨堂のCMにテツandトモさんが出ていた。最高。ホテルのそばのカレー屋でカレーを食べて移動開始。この日はα-stationでナイポレの収録。終わってマネージャーアンドウくんと二人で、何年も行くたび休みだったりもう受付終わっちゃってたりしていけなかった肉なべの店に落ち着くことができた。うまい。アンドウくんはセンマイが好きだということがわかった。部屋に戻ってマヌカハニーをホテルに忘れたと気がついて電話をするが見つからないとのこと。きっと捨てられてしまったんだろう。あと4000円分ぐらいはあっただろうに。少し落ち込む。

 

15日

喉は前日と同様。ひとまず安堵。早く目が覚めてしまったがお腹がすいたので空いている店を探す。最近オープンした店があるというので向かう。丸太町の駅の少し手前、ふらっと歩いていたけど見落としそうになるようなお店で、汁そばみたいな感じといえばわかるだろうか、ミスドの飲茶のめっちゃおいしいやつで最高の朝食になった。

10時チェックアウトのところを11時まで延長して部屋でダラダラしてゆっくり身支度してから京都の街を歩いた。最近できたというフェイスレコードを見ていたら最高のディスコ・ミュージックがかかりだして慌てる。ディスプレイされたレコードには女の子が3人写っている。穂口雄右さんとも、筒美京平さんとも、馬飼野康二さんとも、林哲司さんとも、船山基紀さんとも違う気合いの入ったディスコ歌謡でクラクラする。最高すぎる。A面4曲目のサビが衝撃的すぎて「これください」とついにレジに告げた。その後、ホテルの部屋でクレジット確認したら大村雅朗さんの名前と宮川泰さんの名前があってのけぞる。どちらもあまりディスコのイメージがなかったから新鮮に響いたのかもしれない。B面は船山さんの名前も穂口さんの名前もあったがA面の衝撃と言ったらないぜ……

磔磔に入り、リハーサル。いつもはすっと終わらせてしまうけど念入りめにやっていたらあっという間に時間が来てしまった。柴田さんとのセッションのリハーサルも楽しく終わる。スカートを名乗る私が「あなたはあなた」を歌うことの意味よ!

ラジオの公開収録で柴田さんの特大エモエピソードが飛び出し、盛り上がって公開収録は終了。柴田さんのライヴもYAMAHAのCPを効果的に使った素晴らしいライヴだった。「雑感」がなんかとんでもない飛距離でこちらに向かってくる感じがあってあれはなんだったのだろう、と今でも考えている。

終演後、いただいた差し入れを柴田さんと食べる。お互いの様子を伺いながらおはぎを2つずつ食べた。おいしいものを食べた時に眉間に皺がよることを「真実の眉間」というんだ、と教わる。ガビンさんが差し入れてくれたおはぎも、小堺さんからいただいた桜餅も最高。京都愛してる。

私のライヴも昨日よりかは調子良くやれて胸を撫で下ろす。「静かな夜がいい」はいい意味でもう頭打ちだったライヴでのパフォーマンスにさらに加速がついた感じがした。何度もやるのも大切なんだなあ、って実感する。打ち上げも軽やかに楽しく夜が更けた。夜の京都の裏道をみんなで歩いている時に「もう一年ずっとこの気候がいいな」というと柴田さんが同意してくれた。そういう夜だった。

 

16日

大阪・神戸でプロモーション。前から気になっていた中華料理屋に向かってみるといっぱいで入れなかった。くやしい。たこ焼きだけ道中で押さえて南森町へ。FM802では新曲の初OAをしてもらい、楽屋のようなスペースでみんなと話す。今日は神戸終わりだからもう神戸に泊まっちゃおうかって思っているんだよ。と話すと「それなら!今夜どこかプロモーション組めるかトライします!」と言ってくれる。どうやら忙しいと思ってくれててセーブしてくれていたようだ。確かに忙しい。締め切りを4日過ぎた私がここにいるのだ。でもせっかくこうやっているのだから逃げて養生して先に向かいたいのも本当だ。神戸はKISSFMに向かって、タクシーが思っていた場所に向かっていないことを不審に思うと移転したのだそうだ。前回出た時は2020年の3月。「駆ける」のプロモーションだった。信じられないぐらい閑散とした神戸ではもうなかった。

今夜あるかもしれない追加の収録に備え、大阪に向かった。電車に乗ってしばらくした頃、明日の収録になったと連絡が入る。そういうこともある、仕方ない、と昼行って空いてなかった中華料理屋に行ってみると予約で満席になっていた。この絶望をどうやって乗り越えるべきか、とスタッフと話し合ったところ、焼肉を食べるしかない、という話に落ち着いた。

私は焼肉屋で神戸の宿を押さえ、そのまま逆戻り。どうしてここまで神戸に固執したのか。収録系で神戸で終わるということが稀だったこともあり、気持ちが神戸になっていた、とか理由はいくつかあるが集約されていくのは「神戸在住」という漫画が好きだから、ということだ。私が今のように漫画を読むようになった決定打が「神戸在住」で、数年前に御影ロマンスというイヴェントに出演した際は「桂が父親とフレンチディナーキメた街じゃん……」と嬉しくなり、夜は霧深い北野の街を意味もなくうろついたりしている。真夜中の神戸に降り立ってホームでマスク外して空気を吸い込む。ここが神戸か。静かな感動が押し寄せた。

 

17日

朝起きてテレビをつけたら「ラヴィット!」でちょうど坂道系のアイドルの女の子がビリビリイスに処されたその瞬間だったからきっといい一日になるんだろうな、って思った。

神戸旅行記はコラムで書こうとオモウッス