幻燈日記帳

認める・認めない

探求の端っこ

20日

 

(藤井)洋平ちゃん(敬意を込めて)とLIVE HAUSでツーマン。家を出る前に「洋平ちゃんと一緒にやるのにセックスの歌ひとつもセットリストにないのはどうなんだ」と思い、慌てて部屋で「イケナイコトカイ」を練習した。吉祥寺にでて簡単な用事を済ませて、下北沢に向かった。洋平ちゃんはリハーサルの段階からキれていてめちゃくちゃにかっこいい。今夜この人の前で演奏するのか、なんて思いながら自分のリハーサルを済ませ、JETSETに盤の歪みを直すサーヴィスの申し込みに行った。1度に2枚まで申し込みができるサーヴィスだったので部屋にある歪んでしまった盤から、もう10年以上前に買ったけど歪みにつきPLAY不可、いつかDJでかけたい、とCOMPLEXの"BE MY BABY"を選び、ちょっと前に京都の中古屋で5000円ぐらいで買ったのに盤がぐにゃんとなってしまっていたTMBGの"The Eles"を選んだ。なぜか少し緊張する。豊田道倫 / パラダイス・ガラージのベスト盤のアナログを取り置きして店を出た。

LIVE HAUSはそこそこの人の入り。ギターを乱暴にかき鳴らしてセクシーに決められただろうか。観にきてくれた写真家の宇壽山さんがアップしてくれています。確認してくれ。

澤部渡(スカート)による岡村靖幸カバー『イケナイコトカイ』からの『静かな夜がいい』弾き語り @ 下北沢LIVE HAUS 2023.10.20 - YouTube

洋平ちゃんのライヴは最高。1月にレコ発ワンマンがあるらしい。こない手はない。

 

21日

名古屋へ向かう。翌日に控えたライヴのための前乗り、ではない。豊田道倫さんと小西康陽さんのライヴがあるのだ。渋谷WWWでのライヴには自分の仕事の都合でいけなかったから余計に観に行かなければ、なんて気持ちがノってしまった。大学生の頃に夏休みに青春18きっぷで大阪、名古屋と豊田さんのライヴを今の妻とおっかけにいったのは何年前だったろうか。妻はもう社会人で、お金も持っていたはずで、大阪で落ち合うようにして私はひとり鈍行列車に揺られ、シートン動物記を読んでいた。そういう夏だった。あの夏と同じ、会場は名古屋の得三。共演は灰野さんだった。小西さんのライヴが衝撃的なほどに素晴らしかった。音楽が本人の手でほどかれ、また編まれていく、そんなライヴだった。豊田さんのライヴもめちゃくちゃよかった。大好きな「うどん、食べるか」ではじまったのが嬉しい。一時期ほど、熱心なリスナーではなくなってしまったから初めて聴く曲もたくさんあってドキドキした。四谷三丁目の駅の話をしてから歌われた「フィッティングルーム」という曲は学生の頃に私を戻してくれた気がする。それがいいのかわるいのかはわからない。今池にいるのに、新宿を思ってしまったのだからもしかしたらわるいのかもしれない。でもこれが豊田さんだよな、なんて気持ちがグッと入った。

 

22日

ライヴの前にレコード屋に一軒だけ寄ることにした。以前来た時、Revelationのレコードを買えたラジオデイズというお店にホテルから歩いて向かう。地下鉄の駅でいうと3駅ほどだっただろうか、とても気持ちのいい天気の日だったような気がする。店に着くと開店の少し前だった。向かいにあった無人の古本屋で時間を潰して、定刻になって入店。ラジオデイズはほどよいサイズのいいお店で、それでも窓が大きいのが気分がいい。大きい窓があるレコード屋は好きだよ。新入荷を見ていると、深すぎるブルーのジャケットが目に飛び込んできた。写真家でギタリストのスティーヴ・ハイエット「渚にて…」だった。まどろっこしく説明するならば、ムーンライダーズ関連作のレア盤だけど、バレアリックな作品として再評価が高まり、AORシリーズとして1000円で再発されたアルバムだ。私も再発されたときにはじめて手に取り、聴くことができたが目眩がするようなギターの音の世界がたまらなく好きだった。窓越しに街が見えて、手に取ったレコードには深すぎる空が映っている。この空が町田洋さんの漫画にでてくる夏の青空のように思えて、つい買ってしまった。レア盤とはいえ、再発も進んでいたからか、比較的安価で手に入った。嬉しい買い物だ。

ライヴは調子良かった。年内最後のフルバンドだからなのだろうか、ちょっと寂しい気持ちすらしていた。藤原さくらさんにも会えて、遠くで自分が弾くギターの音も聴けた(Chelmicoの"Love Is Over"のギターはオレなんだぜ)。車に乗せてもらって東京へと戻る。車の中では再びどうやったら売れるのか、の話になった。優介がふいに「いやでも、やりたいことやれててなんとかなっているんだったら今のままでもいいんじゃないの?」(大意)というので気持ちが揺れる。そして結局メントスコーラから始めるしかない、という話に落ち着いた。

 

23日

ナイポレの収録。週末のライヴも控えていたので豊田道倫/パラダイス・ガラージ特集。私には愛憎入り混じった濃厚な思いがあるから一時間やったら大変なことになる、と判断して番組の半分だけにした。いただいたお便りもyes, mama ok?やムーンライダーズの話だったので結果的には濃い話になってしまったが、ぜひ聴いてほしい。

2023年10月27日(金)20:00~21:00 | NICE POP RADIO | α-STATION FM KYOTO | radiko

 

24日

シティポップレイディオの収録を終え、半蔵門から新宿に向かって歩く。以前、先輩ミュージシャンから教えてもらったお店で中華を食べ、四谷三丁目の駅に向かった。豊田さんが東京を懐かしむように四谷三丁目の駅の話をしていたのが印象に残って、実際にどんな駅だったかな、もしかしたら利用したことはないかもしれないから、と向かってみると、古い東京の地下鉄の駅のムードがあった。どよんとした壁の色、妙に上り下りしなければならない絶妙な鈍臭さ、そうだった、東京の地下鉄ってこうだった、と東京にいながら知った。

夜はカナメストーンのおふたり、ディレクターのメキシさんと飲み会。ラジオ番組の罰ゲームでテーマソングを作ることになった零士さんにアドバイスをするための会だった。ずっと笑って、ときどき真剣な顔をして、ご褒美みたいな一日だった。

https://open.spotify.com/show/0EnJ2fbQxIN0GnjqMdxWN5?si=92d200ec00e44c6e

 

25日

一日中、部屋にこもってナイポレの選曲を進める。「6周年なんでデビューや結成から6年経った音楽の特集」というお題を受け取り、各種ライブラリー、インターネットに張り付いて選曲をしてあるひとつの結論に辿り着く。6年続けるのって本当に大変。気持ちが塞がりながらもエモくなっていく近年稀に見る経験だった。