幻燈日記帳

認める・認めない

うそ台本



SE:スパークスの「ディス・タウン」で3人が入場してくる。各々の準備を済ませる。
澤部:みなさんこんばんは、スカートです。
1 ウーリッツァー
ガラス越しに見えたような灯り/言葉を出したくなかった/街の中で僕だけが一人/影を持たない/真夜中に聴いた古いレコード/旋律が遠くなる/胸の奥の方/空回る鼓動に耳をあてたんだ/探していた言葉は砕け散って/あてもない沈黙を裂く/約束さ/夜が明ける頃には/誰もいない街の裏側で逢おう/真夜中に訊いた/あとどれくらいで言葉は軽くなる/触れただけの指先/筆跡をたどれば/いつしか忘れるよ/星空に届きそうな痛み/言葉は意味を持たない/僕を殺す/ひとかけの痛み/明日またここで逢おう/翳りのない/鮮やかな痛み/いつかまたここで逢おう
2 雨の音がきこえる
ずっとここにいたのね/甘い煙草ですっときめて/気にもとめないことかな/赤いピアスをそっと取った/慣れないことばかりで/もっていかれそうだけれど/おおう、おおう、おおおー/ああもうやだ!/ああもう!こんな!!/少しだけ怖くなってしまうんだよ!/ああもうやだ/窓越しで見た/君の後ろ姿?/もう嘘はつけない/重いギターで線をひいて/からくりは解けない/返事帰ってくるの/ま/つ
3 こんな感じ
光と影を/今ここで結ぶ/星空に手を伸ばし/思いつく限りの言葉を出す/気まぐれな夜には/ただマッチを灯す/気管支を貫く呼吸/近づくにつれて/多分もう/肩越しに見えた鏡/君からの/ひとつだけの解として/手の中に余る約束/紡ぎだす言葉には/僕らまた/逢える約束を交わし/点は線へ/加速して僕の上を/過ぎてゆくだけだった/ただ深い夜のなか/手探りで探る/つじつまを合わす/口実?/言い訳じゃなくて?/きっともう/落ち着いた配色の行為/僕からの/ひとつの皮肉だとして/目の前で変わる指先/必ず明日には/ああ
4 百万年のピクニック      
頬の向こうに/船が過ぎる/問いかけのような 空が消える/風下に立って/袖が膨らんで/防波堤の先/窓がみえる/伸びていく影/元に戻せる/手段はもうない/波は低く/声も弱い/気まぐれにしたって/できすぎてるよ/肩の向こうに/街がみえる/歩き続けたら/こんなにも遠く/なってしまうものか/街の向こうで/雨が煙る        
澤部「いやー青山。二回目ですね」
和田「そうですね」
武苅「そうですね」
澤部「前回は大変だったんだよねー、キックペダルが外れちゃったりね」
和田「そうそう、たけちゃんのコンタクトが外れたりね」
澤部「あと僕の差し歯が外れたり」
武苅「競馬の予想も」
和田「年末ジャンボも」
澤部「今回こそはね…。気合入ってますよ…。」
武苅「そう、昨日の夜に澤部から電話来て、「たけちゃん、明日、世界が僕たちのものになるよ!」だって」
和田「わーわたしも昨日おんなじこと言われた。」
澤部「僕ね…やってやりますよ…」
和田「澤部くん…頭に蛾が止まってるよ…」
澤部「え?え?え?うそ?え?うそ?どこ?え?いやだ、取って!やだ、取って!たけちゃん取って!」
武苅「(澤部の頭を見る)うわーおまえ白髪混じってんじゃん」
澤部「そんなこといいから、いやだ、とって!やだ、とって!礼加さん取って!」
和田「(澤部の頭を見る)わー澤部くんツムジ4つあるんですね」
澤部「もういい!(一番前のお客さんに)ちょっとあなた取って」
最前客「(嫌々取り、トイレに駆け込む)」
澤部「さて蛾も取れたところで次の曲」
5 コーヒー
どんな風に目を閉じて/眠れたのならいい/深い闇の中から救い出してくれよ/嵐のように日は過ぎる/そこからみていてよ/転んだら笑ってほしいよ/ / / /あの川の対岸に立って/ふるえる指/もうだめそうか/気になっているんだ/町のなかをひとりで/だれかを待っている/どんな風に笑ったの/ちょっと息がし辛い/ほんの一瞬でもいい/映し出してくれよ/夢のように日は過ぎる/あなたと話したい/些細な事だっていい/笑いかけてくれよ/もうすぐ大雪になって/小さな足跡に積もって/不思議だけど/ほら/また/ばらばらのことばで/ゆっくりほどけてくようだ/重なる声/袖をつかんで/まだずっと答えを探している/ひとりで/あなたを待っている/どんな風に目を閉じて/眠れたのならいい/深い闇の底から見つけ出してくれよ      
6 彗星問答
ハローハロー/雨ですべる歩道橋/役にたたない傘/腕から手のひらにかけての/それまでがながれていく/のは?/火を灯すように眠れたらいいのに/「ハローハロー」/光は円をなでて/ソファは弧を描く/肩からこめかみにかけての残酷さ/背中の痛み/ああ/電話も通じない/ちりばめて/あしらった/ゼリービーンズの嵐/ほどく鍵は?/めくばせは?/だってほら今/だって/ほら/今/ハローハロー/草臥れた本の中/昔のことだけど/秘密にしたかったことばかりだ!/これからは/きっとこれからは///…///燃やすように/笑えたらいいだろ/ちらばって/抜け出した/酷い後悔の嵐!/行く先は/目的は?/だってほら今/だっ/てほ/ら今!/!
武苅「昨日シャボン玉で遊んでたらさー」
和田「ちょっと待って!たけちゃんシャボン玉で遊んでんの??」
武苅「うん、週4で。」
澤部「週4!?なんで?」
武苅「何でって…安いし…」
和田「いやいやいやいや!他になんかあるでしょ!」
澤部「そうだそうだよ!けん玉とかやりゃあいいじゃん!」
和田「ちょっとまって!澤部くん、もしかして、けん玉やってんの??」
澤部「うん、やりますよ、週6で。」
和田「いやいやいやいや!逆になんで一日やらない日があるの!」
澤部「やーほら、けん玉って全身運動でしょ。手も使うし膝も使う、目も使うし。疲れるんだよ。」
武苅「そうかあ…けん玉もいいかもなぁ…」
澤部「けん玉はいいよお。今度、9月の大会にチャレンジしてみようかなと思ってるんだ。でもシャボン玉も楽しそうだね」
武苅「シャボン玉もいいよお。今度、日本文化用品シャボン玉安全協会、通称:にっしゃーん会に入ろうかと思ってるんだ」
和田「…もう曲やるよ、ワン・ツー・スリー・フォ…」
澤部「礼加さん今いいとこだからちょっと待って!にっしゃーん会にさ、阪本って人いない?」
武苅「うん、いるもなにも、」
和田「…ワン・ツー・スリー・フォ…」
澤部「だからちょっと待って!」
武苅「いるもなにも、終身名誉会長だよ。知ってんの?」
澤部「うん、昔よく一緒に飲んだ」
武苅「え、マジで!」
澤部「あいつもまだしがないシャボン玉ビギナーの頃だよなーよく俺に「澤部さん、シャボン玉って男のロマンっすよね」なんてさー」
武苅「へー阪本さんにもそんな時代あったんだ。」
澤部「うん今のたけちゃんそっくりだよ…ちょっと待って…新曲できた。礼加さん、カウント」
7 月の器
給水塔にのぼって暗い街を見渡せば/背の低い建物がいつもよりよく見える/最終電車の灯り/川面に火を点し/乾いた空気の所為で街灯に燃え移る/ほら/僕の悪いところ全部を/見ていないふりをしたんだろ/見え透いた嘘や駆け引きは君の手を離れて/大切にしてた面影を/わすれてしまっていた/ずっと/ずっと/ガラスの瓶の底で深い色が交わり/まるで尖ったナイフのようだ/執拗に傷つける/ほら/僕は間違ったまま光をみつけるの/指先の鼓動に触れて戻れないとわかる/いくつか見える光源は/反射し続ける/ずっとららら/ずっとらら/ずっと/ずっと、や、ずっと/ずっと
8 スミレとヘルメット
マンガのように/なめらかに愛し合う/ばらの花束/美しく交差する/もっとちかくにきてよ/もっとはなせたのならばいいのに/ぼくのことをちょっとだけ/わかってくれるだけで/ああ、いいのに/ああ、いいのに/あー/ぼくのことをちょっとだけ/わかってくれただけで/ああ、いいはず/ああ、いいはず/あー/きみと初めて/まともな恋に落ちる/月の道筋/窓からの逃避行/マンガのように ////あいしあう/ばらの花束/映画の街に戻る
和田「じゃあ次のライブ予定を、澤部くん」
澤部「え、僕ですか!?いやですよ恥ずかしい!次のライブ予定言うくらいなら、半裸で法事に出席するほうがましですよ!礼加さん言ってくださいよ」
和田「やだよ、早く言えよタコ」
澤部「いやですよ!たけちゃん言ってよ!」
武苅「それは澤部の役目でしょ。」
和田「そうだよ、はやく」
澤部「もーいやだって言ってるでしょ!」
和田「何、そんなにいやなの?わかった、じゃあ、あたし言う」
澤部「え」
武苅「ちょっと待ってよ、じゃあ僕言うよ」
澤部「え」
和田「あたし言う!」
武苅「僕言う!」
和田「あたし言う!」
武苅「僕言う!」
和田「あたし言う!」
武苅「僕言う!」
(客もそれに乗り、続々と「わたし言います!」の声が)
和田「あたし言う!」
武苅「僕言う!」
澤部「じゃ、じゃあ、ぼくが…」
全員「どうぞどうぞ」
9 花百景
思い出の色をした/甘いことばからにじんでいるよ/何が欲しい/砂になってしまった/そんなことばさえ気付いているよ/これまで/悪い夢を見てたんだ/ミントをかじったら/いろいろ溢れてくるけれど/手の中で数えた/どんなことばより近づいていくよ/君のそばへ//怖い夢を見てたのか/部屋を片付けたら/ここには何一つなくても/面影の色をした/暗いことばまで思っているよ/君が欲しい/ラララ/ラララ/ラララ
10 魔女
傷をかばいながら/本を燃やしながら/羊たちはうたう/光をここにあつめて/もう二度と逢えなくても/思い出せないように/窓を開けたら/また風が吹き込んでしまうから/はじめからやりなおさなきゃ/月の光に邪魔をされて/花や星の色のうたう声は/明るくて/動物たちも/ビルや森も/僕たちより/うまく出来ているね/もう少し悪い人になれたらいいのに/文字を砂に変えて/わかるだろ/梯子に腰をかけて/怖い呪文となえて/このままでは困る/と思ってたんだ/けど/な/あ
11 シルクスクリーン
夜が浸かる/淡く沫く/アルコールつけといて/一晩置いといて/朝になれば素敵な音楽さ/夜が浸かる/赤く証く/シロップにつけといて/一晩置いといて/朝がくれば素敵な反抗さ/目をつぶって/言葉を紡ぎだすんだ/なんだか横暴かもね/でもどうだっていいんだ/ねえ僕を助けてよ/紅茶につけといて一晩置いといて/朝になれば素敵な映像さ
(澤部気付くと血まみれ。救急車が駆けつけギグ終了。爆音でショパンの幻想即興曲がかかる。客ドン引き)

sawabe-records@hotmail.co.jp

澤部渡:guitar, vocal, written
武苅祥太:bass
和田礼加:drums
熊谷知華:chorus, vocal
スカート:arrange
熊谷耕自:photo