幻燈日記帳

認める・認めない

a will

月曜日。
がっつり授業を受けるつもりが、余裕の遅刻。
いい加減申し訳ない気持ちになって来た。
なぜ遅刻してしまうのか、を考えたら、
とても簡単な答えに行き着いた。
この授業のやった内容の大半を、
僕は1年のときの必修の授業でやっているのであった。

昼休み。
カップそばを食べていたら、今井君が、
なんと誕生日プレゼントをくれた。
中身はなんと稀代のエロ漫画家、ガビョ布の、
「日本全国豆投げ音頭」だった。超うれしい。
一番最初の漫画のタイトルが「豆をまけコノヤロー」という、
なかなかアナーキーなもので、
内容も一言も二言も多い、すばらしいものだった。
エロマンガじゃないマンガにエロいことやられたら
エロマンガの立つ瀬がねーだろ!!」
という叫びには感動した。

音楽美学の授業に出る。こちらは遅刻せず。
20世紀に入る、入らないのぎりぎりのライン。
トリスタン和音とか、そういうことを初めて知る。
僕はクラシック音楽に関する知識が欠如しているので、
こういうはなしを聴くと、興奮してしまう。

そのあと、大学をあとにして、高円寺を目指す。
昆虫キッズのライブに参加するのだ。
10月の段階に「なんかやってもらうから」と言われたきり、
音沙汰がなかったので、本番の1週間くらい前に、
「で、なにやりゃいいんですか」って訊いたら、
「適当に。そのうち曲順送るから」と言われ、
結局、曲順が送られて来たのは前日の夜だったが、
なんの問題もなくステージを楽しめた。
共演は、ニーネとマヘル・シャラル・ハッシュ・バズ。
その日使用した楽器は、当日新宿で買ったタンバリンが主。
他には、本番の1時間前に「鍵盤ハーモニカふける?」と訊かれ、
「ええ、まあ」と答えてしまい、吹くことになった、
鍵盤ハーモニカと、あと、佐久間さんの左利き用のギター。
赤いシャツにムーンライダーズのTシャツ、赤いアルミのタンバリン。
出番のことはあまり覚えていないのだが、
(覚えていてもかきたくないものである)
それ以外のことは書けるので、書こう。
ニーネは昔からあまり好きでなく、
1年くらい前に、小倉の最高なバンド、
ムンズとのツーマンをレッドクロスで観たが、
ムンズが最初に演奏して、その後に、ニーネだったのだが、
これがもう本当に、うそ!?って思うくらいによくなくて、
一緒に観に行った中川君(元気だろうか。
前に豊田さんのライブに何故か彼女らしき人と来ていたが、
あまり会話はできなかったのが悔やまれる)と、
「全然面白くないね」と言って3曲聴いて帰ってしまったことがある。
(その帰り道に中川君とムーンライダーズのはなしをしたのも覚えている。
「ドント・トラスト・オーヴァー・サーティ買ったんだよ!帯付きで、
1000円だったけど、買っちゃった」とほくほくした顔で言う、
中川君が忘れられない。今、彼は、どうしているのだろうか)
しかし、ニーネに対する周りの評価は高く感じる。
岡村靖幸のトリビュートに参加していたり、
豊田道倫とツーマンしたり、と、本当に謎な存在である。
ニーネにはロックンロールの基本としての「大音量」はない気がするし、
かといって趣味の良さや、ポップさも感じられない。
ギターの音も全然グッとこなかったし、
ドラムの人に至っては、リハの方が全然よかった。
ベースは格好よかったけれども、
どうも、言葉に依存したような、いやなものに感じてしまう。
僕は言葉を伝えるための音楽にはどうも疑問を抱いてしまうので、
そういう価値観のズレもあるのかもしれない。
リハーサルで「おれもそう思う」とサビで何回かうたう曲があって、
悪い意味で鳥肌が立ってしまったのも覚えている。
それでも大塚さんは「汗がよかった」と誉めてくれた。
僕はニーネのいいところがひとつも見つからなかったと言うのに。

マヘルはやはり最高だった。
工藤さんに言ったら殴られると思うが、
もしかしたらこれが「偶然性の音楽」の新しい形かもしれない。
しっかりと書かれた譜面。それをうまくコントロールしきれない、
ステージ上にいる、人、人、人、そして楽器。
でも、それが本当に素晴らしいのだ。
まとまりの演奏になっていたとしても、
その曲の演奏を急にやめて、
工藤さんがトランペットの人に「最初の音、ラね」っていう、
そういうのが素晴らしいのかもしれない。
たとえばマヘルがすべて譜面通りに演奏出来る腕利きの集まりだったら、
それは必要とされない気がする。
前に観たときは、割と長い曲をやったりしていたが、
今回は10秒くらいの短い曲をたくさんたくさんやっていた。
そしてときどきすべての音がひとつになったときの快感があった。
工藤さんが帰っていく時に、僕は聴き取れなかったのだが、
恋人とその弟(熊谷知華と熊谷耕自)が、
「工藤さんが『澤部君お疲れさま』って言ってたよ」と聴かされる。
なにかの聴き間違いだとは思うのだが、
なぜあの工藤冬里がぼくの名前を知っているのだろうか。

火曜日
由雄先生の授業の提出を遅らせていたら、
由雄先生が大いにキレられた。
MAの作業なのだが、家ではまったくできない作業なのだが、
家が遠い僕にとっては休日を大学に充てるだなんてことは、
苦痛以外のなにものでもなく、それなら、と、
選んだ道なので、怒られても仕方のないことである。
提出は不完全なものになってしまったが、
興味深い課題なので、点数とか関係なく、個人でやってみよう、
と少しだけ思った。

録音の授業。
このふたつの矛盾したことばの並び。
僕は先週とは打って変わって3時間ギター弾きっぱなし。
は、いいすぎだけれども、ずっと弾いていた。
僕の曲ではないので、創り手の方が、
満足のいくものが録れているといいな、と思う。
ギャランティとしてもっさんがパイの実雪見だいふく
倉持さんがオレオをくれた。いい商売だぜ、はは。

家にすぐ帰ってアルバイトの苦行に立ち向かった。
後半の30分は人がほとんどこなかった。