8月20日
カクバリズムの夏祭りでDJ。社長とバック・トゥ・バックで盛り上がる。Advertisingで大盛り上がりしたのは今年の夏のいちばんいい思い出のひとつといっていいっしょ。
全出演者最高だった。毎年思うけどもっと人来ていい。キセルは私の考える国の宝です。涼しい顔で心の深いところまで入り込んできて掻き乱す。でも不快感はない。いくつもある「音楽ってそうじゃなくっちゃ」の大いなる一つ。
22日
美術部のマブ、石村まなみがアメリカから帰国して国内でレジデンスで制作をやって、それの展示をやっている、というので本人と友人(ジューリア / 演劇部に顔出してた時期に演じてた彼女の役名がジューリアだったから今でもそう呼んでる。俺だけ)と妻の4人で長野に向かう。我々からしたら比較的早めの時間に集合して、昼過ぎの到着を目指してゆっくり長野に向かった。途中、アメリカ暮らしも長くなったまなちゃん(石村)が「AC……あ、ごめん、エアコン」というのを2回繰り返したので全員が同時に「ACでいい」といったのが非常によかった。休憩のために寄った道の駅で果物とナイフを買ってそのままアッチアチのベンチに腰掛けて食べる、みたいなワイルドな振る舞いは人数いないとできないから楽しい。
事前にまなちゃん(石村)からは「あたしも運転するよ〜」と言われていたのだが、後部座席から「ミラー、ガコンってやっちゃって」と聞こえてきたのでひとりで運転することを決意したのだった。
石村の展示は壮観だった。この土地で製作されたという作品と、美術館自体の持つパワー見たいなものがかけ合わさって大変素晴らしかった。同級生として鼻が高いぜ。ちょっと休憩をして、渋温泉を回ることになったのだけど、これが嬉しかった。去年渋温泉でライヴをやったときに、宿の風呂はいくつか入れたのだけど、渋温泉の醍醐味でもある外の温泉は回れなかったのだった。ここぞとばかりに3箇所回った。疲れを取り、無事ひとりでの運転を完遂することができた。
某日
トレーニングルームでエアロバイク漕ぎながら息も絶え絶えDuolingoやってたら、以前にも一度声をかけてくれた青年から再び声をかけられた。「スペシャル」のツアーを観てくれたのだそう。「スターみたいでした」って言われたような気がした。エアロバイクとDuolingoに全ての感覚を捧げた私が導き出した幻聴かもしれない。俺にもスターみたいに振る舞えた瞬間があったってことなのか……?とデヴィッド・ボウイを思い浮かべる。想像力は年々衰えていくものだとしても、貧困にもほどがある。
23日
台風クラブのワンマンを観に行く。最高。普段のライヴではバンドの演奏の中にある石塚くんの歌がしっかり響いていて、堂々と歌っていて、そこが本当に良かった。
某日
NICE POP RADIOのために「灯りは遠く」を弾き語る。レコーディングのときぶりに演奏するから、最初のコードを探るのに時間がかかった。ちょっとだけ変な開放弦の響きがあって、譜面にどこ押さえたか今後は書こう、と後悔。
27日
Fievel Is Glauqueを観に行く。彼らを初めて聞いたのは忘れてもしない、中野駅のホームだった。SpotifyでBlossom Dearie Singsの最後の曲を再生して、スキップ、するとこのアルバムがお好きなあなたに、と言わんばかりにおすすめを提示してくれる。そのおすすめの中にFievel Is Glauqueの"Go Down Softly"があって、私は一発でやられたわけです。サブスクで現行のアーティストを好きになる、みたいな機会がまだギリそんなに多くないので少し戸惑いながらも作品を聴いていくわけです。するとどうでしょう、彼らの音楽はものすごくいい意味で捉え所がない。ポップでありながらポップにおいて重要な何かが欠けているような音楽で、好きで何度も聴くんだけど、聴くたびに頭のなかで同じ形でとどまってくれない。想像力の血の音楽もそういうものだけど、そういうポップさ。なんといびつなポップさ!その彼らが来日っつーわけなので大変。ライヴもべらぼうによかった。頭の中の形のままの曲もあれば、ちょっと変わっている曲、そもそもわからない曲が全部混ざるとどーでもよくなって、フラットになっていくのが本当に気持ちよかった。ふにゃんとしているのに芯があって実にミョー。いい夜でした。
Go Down Softly ‑ 曲・歌詞:Fievel Is Glauque | Spotify
某日
楽曲を書いた声優の土岐隼一さんの歌Recのために初めていくポニーのスタジオで録音。土岐さんが来る前にパラダイス・ガラージ/豊田道倫トリビュートの歌も録音。3月に「ひとつ欠けただけ」のストリングスを録音した際に一緒に録音していた弦楽四重奏、これが私の夢でした。私の夢という点でいうなら、あとはムンズの"Carsex"をジャズトリオで録音すれば完璧です。とにかく感無量。
土岐さんのレコーディングはスムーズで普段の自分のペースと照らし合わせて考え込んでしまった。指示らしい指示をしていない気もするけど、そう言う指示を一瞬で自分のものにしてしまう力があって惚れ惚れとしていました。アルバムでどうあの楽曲がなるのか、多分浮きます。でも楽しみです。11月発売。
9月5日
PUNPEEさんとBIMさんのライヴで代官山UNIT。PUNPEEさんはいつも違う景色を見せてくれる。今まではまずストーレート、シンプルに会場の規模感でそれを感じたのだが今夜はUNIT。我々も何度か立ったことのあるステージだ。ぎゅっとした客席で大盛り上がりの観客たち。毎回思うのだけど私ももっと頑張ろう、と強く心に刻む。楽しい夜だった。締切を抱え、打ち上げにも参加できず家に帰る寂しさよ。
6日
ナイポレ収録。「クイズ選曲」をリクエストされ二転三転しながら、疑問形の曲でひとまとめでどうだ、とどうにかこうにかまとめるも迷いながら走っていてなんだか締まりが悪かった。全体がぼんやりする回はそれはそれで好きなんだけどWho Are You(The Who) / あんた誰?(谷啓) / 誰だっけ?(ゆらゆら帝国) の3曲連続が良かった分、出だしも後半もうまくまとまらなかったことがずっと心にささくれのように残った。
某日
藤井隆さんとラジオの収録。これが本当に楽しかった。藤井さんと会って、話して、最近人とちゃんと話してなかったかもしれない、と気がついた。話の頭に「なんか」と言ってしまうのがここ何年かのクセになってきてしまっていて、それを是正しよう是正しようと何度も思っていたはずなのに、ここでもそれが出てしまったし、話すのが楽しい、となるとそんなことどーでも良くなってしまって「なんか」が出てしまうのだった。これをどう受け取ったらいいのか、まだわからないが、いまはもっと人と話をしたい、と思う。
12日
荻窪でライヴ。家から近すぎて遅刻した。Top Beat Clubは初めて行く箱だったけど、いわゆるキャバーンクラブのようなつくりでめちゃくちゃかっこいい箱だった。独特の反響や慣れないヴィンテージ機材に手こずりつつも「やり切るしかねえ」という強い気持ちに身を浸し、ライヴは無事完走。いい演奏をするだけがいいライヴではないが、この日はまさにそう。決して余裕のある演奏を聴かせることができた、みたいな手応えはなかったけど、振り落とされまい、と気を張り続けて独特の緊張感の中、達成感を得る、と言ったようなライヴだった。
某日
突然バービーボーイズがわかった。処分するレコードを選んでいる時、過去に「いつか好きになりそうだな」と買っていた「Black List」というLPを改めて手に取って、針をおろしたら度肝を抜かれた。「C'm'on Let's Go」のアコギの音が眩しくてものすごく引き込まれて、そこからちょっとずつ聴いていたのだけど、「泣いたままでListen to me」で「しゃくりあげてわめいてもいいんだ 殴りたけりゃ今日がその最後のチャンス」という歌詞が耳に入ってきて、最後なんて歌うんだ……!?と期待して待っていたら「言葉の通りだぜ」と締められて圧倒される。やられた。最高。しかし迫り来るライダーズのリハに備えてチャンネルを書き換える。
泣いたままで listen to me (Original Mix) ‑ 曲・歌詞:バービーボーイズ | Spotify
14日
「ほうせんか」という映画の深夜イヴェントでDJ。監督はオッドタクシーの木下麦監督で、音楽はcero。直前までレコードを選ぶ。これが大変だった。映画のトレイラーを観て、時代背景も見えきらなかったから70年代頭ぐらいから現在に至るまでの「日本の」「レコードを」「たくさん」持っていった。それに加えてついでに何かあったときのために、とUSBも持参。車で渋谷へ向かったのだが、祝前日、深夜の渋谷をナメすぎてた。超快調にbunkamuraの交差点まで来たのだけど、円山町の坂に差し掛かった途端に人が溢れすぎていて車が動かなくなってしまった。左折しようとしたら道の真ん中にペットボトルが置かれていて、これが本当に人間のやることなのだろうか、とゾッとする。ここは私の知っている渋谷じゃない。nestの隣のクラブの黒服のセキュリティがここまで頼もしく見えたことはなかった。
映画はとてもいい映画だった。物語に殉じる傑作と言っていいでしょう。静かなのに活劇のムードもあってそこが良かった。
とにかくEASTの環境で聴く「8月の現状」と「EXTRA」の音の素晴らしさは一生忘れないと思う。最高だった。USBに入っていた曲も1曲だけかけたけど、「25セントの満月」でみうとと氏がぶち上がってくれたから持っていって本当によかった。
某日
コロナに罹ってしまった母の代わりにジョジョグッズを恵比寿に買いに行く。暑い。夏が終わってくれない。普段、酒とは一定の距離をとって生きている自分からしたら酒造関係の施設に近寄ることさえ稀だったので、いいカルチャーショックになった。
19日
ムーンライダーズのリハーサルが始まる。ANIMAL INDEX and more。優介とand moreを選曲して、メンバーおよびスタッフに投げて、みんなで揉んで今回の形になった。and moreはもちろん、ANIMAL INDEXの名の下に選曲。ふたりで動物がテーマになった曲を出して選んだ。「"アニメーション・ヒーロー"はどう?天井裏に一匹のネズミ!」「さすがに細か過ぎますよ」と愉快かつシリアスにご覧いただいた選曲になりました。アンコールは最初別の曲が挙がっていたけど、みんなと共有していく過程で誰からか他のにしたいね、なんてなって、人間がテーマになっている曲として二人で選んだ3曲が全曲採用になった。初日は緩やかに始まった。大枠を埋めるというよりも、初日から細やかにああしよう、こうしよう、と詰めていったらみっちりやってて、この日はアルバム全曲までは到達できなかった。
ライダーズのリハーサルの前から決まっていたライヴのため、リハをお休みしてつくばへ向かう。機材車の移動で良いですか?とスタッフに訊かれて固まった。以前、Kaedeさんのライヴで新潟に機材車で移動したとき、私は助手席に座っていたから気が付かなかったのだけど、背もたれが座面に対して直角だったことから佐久間さん曰く「中世の拷問」だったのだそう。それでなおみちさんと佐久間さんに訊いてみると「居住性は機材車よりN-BOXの方がいい」というので自走でつくばに入ることになった。ちょっとしたドライヴ気分でライヴに向かうなんていい身分だし、実際に最高だった。リハーサルが終わって科学館にみんなで行ったのも良かったし、適度にほぐれたのか演奏も良かったと思う。やはり畳野さんと一緒に演奏した「波のない夏」と「ひとつ欠けただけ」は印象に残った。帰りの車ではiPhoneを佐久間さんに託して「QUIZ ブランキー・ジェット・シティ」が炸裂。「センスない単車乗りばかり集まった人口わずか15人の新しい国、その彼らの単車の中で一番長いフロントフォークを持つ人物の名前は?」という問題の答えが「C.B.Jim」だったときはさすがにアハが過ぎた(クイズの元になった「Punky Bad Hip」収録アルバムのタイトルが「C.B.Jim」)し、「ガイコツマークの黒い車はある音をかき消しながら進みます。どんな音?」という問題に対して「これね、多分実在する音じゃないと思うんです」という私の名推理も光ったが結局正解には辿り着けなかった。
佐久間さんを送り届けたあと、なおみちさんを送る過程で送られてきたライダーズのリハ音源を確認。一気にモードが切り替わった。
21日
リハ3日目。この日はリハを夕方に早退して、品川まで車で出て、大阪でライヴが一本、という予定。舞台監督の笹川さんが「新横浜から乗るの?」と言って、本当だ、絶対にそっちの方がいい、と初めて冷静になれた気がする。品川ではなく新横浜から乗れば、もともと乗ろうとしていた時間も後ろにできる。駐車場も品川に比べれば豊富だろう。気持ちにも少し余裕が生まれたが、それでもリハーサルは目まぐるしくアンコール手前まで参加して、慌ただしく車を新横浜まで走らせた。「頼むからグリーン車にしてくれ」というお願いをしたらすでにグリーン車だった。ありがとうカクバリズム。眠って気がついたら大阪についていた。本当にありがとうグリーン車。イベンターさんと落ち合う。万博の混雑のため、道路の渋滞も予想できない状況にあるらしく、一番確実な地下鉄でPARCOに向かう。気持ち的にもなんだか落ち着かなくて、でもその落ち着かない感じが心地よかった。ライヴも疲労を吹き飛ばすようなものにできて、終演後にカレーを食べるレポートもやって、充足感のなか、ホテルのベッドで眠りに落ちた。カレー大作戦は10/26まで開催中。
22日
思ったよりも早く目が覚めたのでKyutaroでうどんをキメて、新幹線に飛び乗る。ふとSpotifyに目をやると「お気に入り」に「3104丁目のダンスホール」が追加されていて、膝を打った。怪盗佐久間は粋な人だぜ。私が早退して以降のリハ音源も含め、いろいろ聞き返しながら自分がやるべきことを改めて整理していく。その整理もとても捗る。さすがグリーン車。ありがとうカクバリズム。無事にリハーサルも終了。とてつもない疲労感ととてつもない開放感を感じ、妻を誘って焼肉をキメた。いい選択だし、必要な選択だったと思う。