幻燈日記帳

認める・認めない

はごろもひろば

レコーディング再開。とりあえず歌入れから。ストイックすぎる現場ゆえか、もともと歌入れにはスタッフはあまり来ないけど最少人数で歌ってないとき以外はマスクしたり、アルコール消毒は徹底したり。喜ばしいのかもわからずあたふたする初日が過ぎ、2日目でまあ働かないとどうにもならないもんな、とちょっとだけ気持ちが落ち着いた。最後のレコーディングは3月末、そのままニューシングルのプロモーションに出ている間にアレヨアレヨと状況が変わり、4月頭に予定されていたレコーディングはすべて延期、そして今に至った。初日のレコーディングに長袖のシャツを着ていったらあまりに暑かったので、2日目の今日は半袖のシャツを着ていった。長袖のシャツをボタンもしめずにフラっと出かける季節がとても好きだったから、なんとも言えない気持ちになる。車を走らせているともう暑く、窓を全開にしてスタジオに向かった。今日は2曲分の歌を録った。1曲歌い終わって汗だくになってしまった。ぐったりとスタジオのソファに倒れ込み、汗が冷えた頃、目が覚めた。夕暮れが迫る街に繰り出し、スーパーマーケットのお惣菜を食べ、また歌入れに戻る。懐かしいような、まったく別のもののような、入れ物だけが同じで、中に入っているものはまた違った温度になってしまっていないか、そんなことを考えた。その後も歌入れには時間がかかったが、日付が変わる前には家に帰れた。CALLの頃は4曲ぐらい朝から晩まで録音して4時ぐらいに家に着くこともあったなあ、なんて思い出す。コンビニで買った弁当を食べておそらく明日から売られる「在宅・月光密造の夜 Vol.3」の音源を調整、コード譜をpdfにしたりしていたらこんな時間。

足らぬ布田CITY

水中、それは苦しいの新譜の惹句に「ジャンルは炙ったイカでいい」とあり椅子から転げ落ちるほどの衝撃を受ける。90年代から活動する水中、それは苦しいをはじめて聴いたのは高校生のときで、確か同級生で現ココナッツディスクの中川くんから教えてもらった。アコースティック・ギター、ヴァイオリン、ドラムスという編成で、どうとも説明し難い音楽性。それゆえに音楽とはなんなのか、ということを改めて考えさせられ続ける存在なのだが、そこを逆手に取り、八代亜紀の「舟歌」を引用してジャンルを放棄し、新しいアルバムの惹句にするのだ。ムーンライダーズのメンバーが全員30代になってから制作された"DON'T TRUST OVER THIRTY"をはじめて聴いたときのような爽やかとは言い難い、独特な感触の感動だった。

数日前から下腹部に違和感があり、あらゆる最悪を想定した後、意を決して医者に向かう。レントゲンを撮り、エコー検査等を受けているときに4年前に似たような症状で医師にかかり、石あるから気をつけな、と診断されたことを思い出した。バイトの帰り道ごとに500ml缶のマウンテンデューを飲んでいた10年前を懐かしみながら「これからはあまりジュースは飲まないようにしよう」と決めたものだが、あれから4年が経ちまあまあ普通に飲んでることも思い出した。4年前と比べてめちゃくちゃ悪くなっているという感じではない、とのことでちょっとだけ安心。採血は記録更新。最高記録は6回目にして断念、というものだったが、今回は9回か10回か忘れたぐらいかかってようやく採血できた。ヴェテラン医師と若い医師、どちらも女性だったのだけど、腕を見ながらふふふと笑って「血管ほそ〜い」と言われる。マゾヒズムの有効性について考える。何度やってもうまくいかず。でもいいんです、じゃんじゃんぶっ刺してください。私が悪いんです。そんなに痛くない、とわかっていてもこれから注射針を刺される、と思うとどうしても緊張してしまう。総勢3名の医師が入れ代わり立ち代わりでやっと採血が終わった後にはぐったりしながらもどこかハイにもなった。

Last December

プリンスの"the rainbow children"のアナログが届く。改めてプリンスに向き合うきっかけになったレコードだからアナログでの再発は本当に嬉しい。裏ジャケットにはられていたステッカーをきれいに保存するべく切り取っていたら鼻血が出た。8分近くあるラスト・ナンバー"Last December"は一瞬の気も抜けない大名曲で、何度もその音楽の中を跳躍して、見たことあるような、ないような、だがしかし在るべきところに戻ってくる。この快楽と言ったらない。そうして遠くのミネアポリスに思いを馳せる。"baltimore"を歌ったプリンスが今、もしいたらどんな気持ちでいたのだろうか。つらい出来事や棚上げされてしまったことがあまりにも多すぎていろいろついていけない。

Last December, a song by Prince on Spotify

なにか食べるものがないか、と冷蔵庫を見たが、何もなかったのでスーパーにいった。道中、ワイヤレスイヤフォンを拾ってしまい交番に届ける。なにかをなくしてつらい気持ちになるのも今の私には耐えられそうにない。どうか落として不便に思っている人がいたら見つけてほしい。あなたのワイヤレスイヤフォンは駅前の交番にちゃんとある。

夜はシンリズムくんとトーク。配信されているということを忘れたかのようにいろいろ喋りすぎた気がする。反省もしています。

4800円の呪い

ナイポレの収録のために自分のレコード棚を隅から隅まで見渡してみる。昔、はじめていったあるレコード屋で勧められるがままに買ったはいいのだけど4800円もしたレコードがある。聴いたこともないレコードに4800円ものの大金をポンと払ってしまった、という罪悪感(5/28追記:これには語弊があった!聴いたこともないレコードにお金を出したことに罪悪感が生まれたのではなく、「流されて買ってしまった」という罪悪感だった)がなぜか自分の中で育っていき、とても後ろめたいことをしてしまった、とまともに向き合うこともできていなかったのだけど4年も部屋のレコード棚になにくわぬ顔をして収まり続けたのなら、それはもうただのレコードだ、となり針を落とす。4年経っても4800円、と思い出すのだからまだフラットではないにせよ、Discogsで600円ぐらいで売られているLPだったとわかっても、複雑な気持ちになり続けても、こんなに素晴らしい曲が入っていたのか、という圧倒的な事実に触れ、最終的には笑顔になれた。この4年間の無意味な闘いは一体なんだったんだろう。

デモを整理して、譜面を書いていく。6月からは録音も再開できそうで、支度を少しずつしているが、どうにも体と頭が追いつかない、と部屋の片付けを少しだけした。

在宅・月光密造の夜 Vol.3

自宅ライヴ配信シリーズ、リクエスト大会仕様でお届けした「在宅・月光密造の夜 Vol.3」、怪我なく終了しました。現在、回していたLogicに張り付いてミキシングをしています。今回はリクエスト大会、と謳いみなさんから事前に頂いたリクエストを中心にセットリストを組みました。基本的には1位から3位は全曲やる、過去2回の配信ライヴで演奏していない曲を中心に選ぶ、というルールでやりました。それに加え、当日リクエスト枠も用意した結果、以下のようなセットリストに。事前リクエストでの順位が出ているものは備考も加えカッコ書きのなかに書きます。

1. スミレとヘルメット(一番乗りリクエスト) 2. ストーリー(1位) 3. 花百景(当日リクエスト) 4.返信(同率3位) 5. いつかの手紙(同率4位) 6.さかさまとガラクタ(当日リクエスト) 7. 私の好きな青 8. どうしてこんなに晴れているのに(同率3位) 9. S.F.(2位) 10.ラジオのように(当日リクエスト) 11.花束にかえて 12. ガール(同率4位) enc1. 古い写真 enc2. 彗星問答 enc3. 月の器

という非常に特濃な配信になりました。一見さんが楽しめたかどうかだけが心配です。1位だった「ストーリー」は11票、2位の「S.F.」は10票、3位の「返信」「どうしてこんなに晴れているのに」は7票でした。「いつかの手紙」「ガール」は6票で同率4位でしたが「暗礁」「君がいるなら」も同率4位でした。「私の好きな青」は3.5票(2曲投票している方がいたので0.5扱い)、「花束にかえて」も3票でしたね。「古い写真」に5票も入っていたのでアンコールで取り上げました。「彗星問答」の知名度で4票入ったら実質1位だよね、と思いながら演奏しました。「月の器」も4票入っていて驚きました。ちなみに「スミレとヘルメット」は3票、「さかさまとガラクタ」は1票、「ラジオのように」は4票でした。全体で222票のリクエストをいただきました。みなさま本当にありがとうございました。

アーカイヴは3/30までの公開です。今後、音源の販売予定もございますが、みなさまお早めに。

www.youtube.com

さざんかの宀

時間の間隔は戻ったのだが怠惰に拍車がかかりキビキビと動ける気がしない。メジャーデビューしたあたりで今までの夏休み人生を返上しているんだな、なんて思ったこともあったのだけど、今は夏休み人生より重い罰を背負わされているような気がする。

胸を撫で下ろしたと思ったのに気が滅入るニュースが続く。やっぱり「旦那が50万稼いで奥さんがパートで25万稼いで」みたいなことを言い出したときに強く反発するべきだったんだ。怒っているのも疲れちゃった、なんてちょっと前はいったけど、怒り続けないとダメなんだ、とさらに暗い気持ちになるし、幸か不幸か燃料には事欠かない。

積んでしまっていた漫画を読むゾーンは継続している。うれしい。

3回目の在宅配信ライヴが決まる。次はリクエスト大会。過去二回は弾き語りだとあまりセットリストを決めないスカートがかっちりセットリストを決めて臨みましたが、今回は事前リクエストに加えたぶっこみリクエストという構成でやることにした。もう日程もみんなに決めてもらおうよ、となり、現在アンケート&リクエストを広く募っています。スカートの過去に発表した曲のなかからリクエストをいただけたら嬉しいです。上位三曲は多分やる。そして1,2回でやってない曲を中心に選んで、さらにはぶっ込みリクエストに応えていく、みたいな。みなさんよろしく。21日の23:59まで受け付けています。https://forms.gle/YgLyanfr9PDvTJzRA

瑠璃色の求肥

締め切りは少し過ぎてしまったけれどもひとつのデモを送信。達成感があり、logic上で何度も繰り返し聞いた。

ひとつつきものが落ちたのか、さっぱり抜けていた「時間」の概念が戻ってきた気がする。いつものようにゲームをしていて時計を見たら2時だった。その時に「えっ?まだ2時?」と久しぶりに思えた。この2ヶ月近く、ゲームをしてもラジオを聴いてもテレビを見てもソファ座ってるだけでも「えっ?もうこんな時間?」といった具合であっという間に時間が経っていた気がするのだ。とにかく今はゲームばかりしていた毎日に飽き飽きしたんだよ、だなんて思いたくない。

同じカテゴリの波だったのかもしれないけれど、先週のNICE POP RADIOで「漫画とか全然読めなくなっちゃった」とか話していたのに急に読めるようになった。それに気がつくと本棚に積んでしまっていた漫画が大量にあるとわかり、それらを読んでいった。

松永良平さんから受け取った#bookchallengeのバトンが止まってしまった。7日分、7冊の本の表紙を無表情で投稿する、というものだったのだが、3日で止まりました。尾崎翠さんの河出文庫版「第七官界彷徨」とボリス・ヴィアンの詩集がなぜか出てこなくて諦めてしまったのでした。多分ひとつ前に使っていた派手なカンペールのかわいいカバンに入れっぱなしのはずなんだけどそれすら見つからない。

自粛生活に入ったときは職業的に曜日に縛られない仕事だから土日はスーパーいかないぞ、他の方々に譲るんだ、と誓ったのだが「気の緩み」なのか冷蔵庫の中を切らしてしまい、日曜なのにスーパーに出かけた。パーカーを着て部屋を出たのだが、夏みたいな天気で本当に時間の概念が抜けてしまったのではないか、と頭を抱えた。スーパーは「これが我々の知らない日曜日のスーパーマーケットだったのか」という賑わいで、少し引いた。自粛の最中というのは、実際に滅多に外にすら出なかったから、夕暮れのいつもの交差点にどんな光景が広がっていたか見当もつかない。夕飯はからあげをあげました。