幻燈日記帳

認める・認めない

牡丹

18日

 

昼間打ち合わせ。夜ミックスチェック。2曲分あげた。いいものができたはず。

 

19日

 

0時過ぎに終わり、1時ごろに帰宅し、荷造りをする。作詞の締切がヤバすぎるので3冊本を詰め込んで3時に就寝。6時起床で7時半新宿集合で新潟に向かう。行き道は社長が運転してくれて助手席で眠るのみのはずが、後部座席の会話が面白くて全然眠れなかった。「昨日あげたラフミックス聴きました?問題ないですかね」と佐久間さんに訊くと「もうURLの文字列見ただけでいいミックスだなってわかったね」と言っていて最高だった。

新潟についてリハーサル入る前にみんなで寿司を食べた。みんなで外食するのはいつぶりだろうか……と考える。去年の4月に予定していたワンマンのための仕込みで佐久間さんとなおみちさんの3人でスタジオ入ったあと、「これから先どうなっちまうんでヤンスかね〜」とか言いながら焼き肉を食べたことは覚えている。寿司屋はたこがめちゃくちゃうまくて、駅前なのにこれだけしっかりしているんだから新潟は恐ろしいところよ。

スタジオに入り、東京へ帰る社長を見送る。かえでさんに会うのも1年ぶりだ。それまではなんだかんだどこかで会ったりしたこともあったけど、こういう状況なもんだから(NICE POP RADIOのゲストにも来てもらったけど)なんだか感慨深い。合計6時間ほどみっちりリハーサルで感慨も吹き飛ぶ。今回のライヴのために買ったEBOWもRATも調子よくそれっぽい気持ちにさせてくれる。

くたくたになりながら宿のある柏崎を目指し、そこでメシを食うか、新潟でメシを食うか、で新潟でメシを食うことにした。少し前から宣言していてなかなか叶っていなかったみんなとご飯を食べるのが叶ってうれしいので焼き肉を食べることに。Google Mapで「焼肉」とだけ入れてみて近くにあった店を目指す。東京は21時ぐらいにはもう深夜1時ぐらいの雰囲気になっていたけど、はじめて来る街の20時がどういうものかよくわからず、少し戸惑う。真夜中みたいな雰囲気だったけどもとからそういう街なのか、コロナの影響でこうなってしまっているのか。街並みもあまり東京と変わらないような気がして不思議な気持ちだった。少し歩いて焼肉屋についた。適当に選んでしまった店だったけど何頼んでも盛りがいいし、めちゃくちゃうまい。上ロースに至ってはは2回注文した。

車に乗り込み、柏崎を目指す。助手席にDJの佐久間さんを乗せて深夜の高速道路をひた走る。X聴きたいね、という話になり「紅」を聴いていたら、2車線だったところが工事か何かで1車線になっていて、めちゃくちゃ怖かった。ヒーヒーいっているところにXが演奏を畳み掛けてきてそういうゲームかな、と思うほど。3分ぐらいだったとは思うんだけどとても長い時間のように思えた。1時間ちょっと走ってホテルに到着。バキバキの心と体で締切のことは一旦忘れ、シャワーを浴び、2時間に1回目を覚ましながらもなんとか眠った。

 

20日

ホテルでの朝食を食べ、会場に入る。開演時間が早いから入り時間も早い。楽器をセッティングして、音出し、リハーサルと順調に進む。そして久しぶりの会場に気が遠くなる。スカートは今日ここにいるこの大勢のスタッフ(の仕事に対して)に1年間ギャラを渡せていないんだ、と改めて思ったのだ。今日だって事前のPCR検査などを経てのライヴになった。どうしたらいいのか正解がわからない。でも1年半経ってこうやって板挟みになるのにも慣れてしまったようで、不思議と落ち込んではいなくて、やれたことへの喜びの方が(今は)勝っている(と思っている)。去年の9月のワンマンは楽しかったんだけど、ツラい気持ちになる瞬間も多々あって、それを思い出す瞬間なんていうのも確かにあったのだけど、どうあれみんなと会えて音楽やれたのだからいいか、みたいなことを思ってしまう自分もいて、あらゆる意味で退行している、と気づく。

終演後、翌日に予定があるため新幹線で帰るなおみちさんと別れ、やはり食事は摂らないと、と会長に近所のいい店を教えてもらって向かってみる。ここも何頼んでもうまく、盛りがいい。東京の居酒屋に居る勢いで頼んだから全員腹パンパンになっていた。つくづく東京に居るのは損なのかもしれない、なんて考え込む。

部屋に戻り、ベッドに飛び込み、ノートを開いて、iPhoneからこれから詩を書かなきゃいけないデモを流す。でたらめにペンを走らせて、「このフレーズ膨らまそう」というものを見つけていくのだが、この日はてんでだめ。ノート1ページ分、意味のない走り書きが続き、結局一行もまとまらなかった。2時過ぎた頃にすべてを諦め、シャワーを浴びて眠る。

 

21日

 

チェックアウトの2時間前に目覚ましをセットして、ベッドにノートを広げる。なんとか数行ひねり出せて、東京へ帰る。佐久間さんのDJにより軽快に帰路につけた。メンバーと別れ、まさやさんへ機材車の受け渡しを済ませ、鬼のような荷物を持ち、家に帰ろうとしたが私の目の前には京王百貨店があり、「大北海道展21日まで開催中」というのぼりがあがっていた。抗うことができず、いか飯などいくつか買って本当の帰宅。それから数時間眠り、改めてノートの整理。そして作詞に行き詰まり、この日記を書いている、というわけだ。

レイシー

何日も籠もって作業作業作業。あの曲書いて、あの曲録って、あの曲作詞して、あの曲書いて、あの曲アレンジして、かえぽの練習して。とにかく作業作業作業三昧。毎日6時間ぐらいApexやってた頃が嘘みたい。逆を言えばあの頃のApexの4時間でも作業に廻せていたらこうはなっていないのだ。

 

レコーディング当日まで歌詞仕上がらなさそう、と思っていた曲はここ最近では珍しく2日ぐらいでうまくまとまり、「海岸線再訪」というタイトルがついた。ここ最近書いている曲はどれも頼まれものばかりなのに、これでもか〜っていうぐらいスカートの曲ばっかりだし、受け取った側も(多分)喜んでくれているので本当に嬉しい。超楽しい。ただ、これは最後の1曲の曲だけを先方に送った段階での思いであり、この最後に送った1曲が書き直しになった場合は涙を流しながらかえぽのライヴでギター・ソロを弾くことになるだろう。

 

かえぽのライヴにちゃんとした歪みのエフェクターが必要だ、ということになり、吉祥寺に出向き楽器でRATを購入。最近1曲のためにエフェクター買うことが増えて、こうやって人はギタリストになるのかもな、と少しだけ淡い期待を寄せているけど、練習でヤコブくんのギター・ソロを弾いてみようとするだけで意識が遠くなった。

 

ナイポレの収録だったのだけど、ヘッドフォンでじっくり音楽聴くの、自分の曲以外だと久々だったからなんか後半ハイになってしまった気がする。聴くのが怖い。

ポウ主義

6日

 

締め切りを目の前にしてApexが冴え渡りあと一歩でプラチナというところまで来てしまった。運命のいたずらだとおもう。ギターを持つと断片は出てくるようになってスランプのときのギターを持っても頭が働かないあの感じは本当になんだったんだろう、と思う。

 

7日

 

運命の締切の日を迎え、2小節のスケッチが溜まっていくばかり。それぞれ一瞬のいい部分があるのだけど、その先につながらず、どれもうまく発展しそこねている感じがしてなんともじれったい。ギターからコントローラーに持ち替えプラチナランクにあがり、またギターに持ち替え、さらにコントローラーに持ち替え、かが屋のラジオを聴きながら「今日は終わった」と独りごちる。それならば、と吉祥寺にでかけた。夕暮れせまる街を受け、果たして今日の一日はどうだったんだ、と思い悩む。

 

ジュンク堂でルックバックなどを買って、ユニオンで取り置きをお願いしていたCDを受け取った。ビーチ・ボーイズのサンフラワー、サーフズ・アップ期の発掘音源集「フィール・フロウズ」の日本盤だ。以前、フレンズ期、20/20期の蔵出し音源が出たとき、サブスクにしかなかったから今回もないだろ、とか思っていたらなんと出ていたことを慶一さんのフェイスブックの書き込みで知る。それも今月。慌てて盤を探すも日本盤どころか輸入盤すらどこにも売っておらず。(そりゃそうだ、慶一さんの書き込みも「もうどこにもない」という内容だった。)気合で探しているとユニオンのサイトに日本盤がパッケージの角に打痕があるのでちょっとだけ安くなった中古が出ていてなんとか確保できた。大きい出費だけど本当に嬉しい。この時期のビーチ・ボーイズの良さは結構言葉に出来ない。それに向き合いたい。他にも谷口くんがツイッターに「積年の一枚を(手に入れた)」とジョージィ・フェイムの"That's What Friends Are For"の写真をあげていて、「えー、このアルバムそんなにいいんか」と探してみたら、2006年に出た紙ジャケットのボックス・セットが格安で売られていて思わず飛びついた。リリースされた頃は学生で金がなく、しばらくはプレミアさえついてた記憶があったけど、こんな値段になってしまったんだね、と優しく抱き上げた。ユニオンを出たらもうすぐ夜、といった趣。東急の地下で半額のお惣菜をツルッと買い外に出るともうかんぺきな夜がそこにあった。2時間もいなかったのにこうやって時間が過ぎてしまうんだ、ということを改めて実感してしまい、なんだか落ち着かない気持ちになった。

 

8日

 

ロスタイム。しかし曲の作り具合は昨日とほぼ変わらず。ギターを持てば断片できるのに先に進めない。突破口がない感じがしてきて少し落ち込み、Apexも負けまくる。気晴らしに「フィール・フェローズ」を再生してみると、こんなに軽い音だったっけ、って驚く。慣れ親しんだ「サン・フラワー」のCDはなんというかもっと雑味があった気がする。でもやっぱり嬉しい。いい曲ばっかりだぜ。曲はまだ出来ない。

 

作業に戻る前に2枚目の"Surf's Up"のライヴだけでも聴こう……と安易にスキップして聴いたらすごすぎてないちゃった。最近聴いた音楽で一番感動した。鳥肌とかじゃなくて普通にないちゃったよ。

 

open.spotify.com

 

ダブル風車

レコーディング。この日は全員のスケジュールを合わせるのが難しかったこともあって佐久間さんの仕事が終わってからの集合。スタジオで持ってるギターを全部音作り試すつもりで早く入ったけど、最初に試したレスポールのハマりがよかったのでそのまま採用。ドラムテックの伊藤さんに持ってきてもらったドラムも、ぼんやりとしたリファレンスと解説でよくここまで読み取ってくださる……と感嘆。徐々にメンバーが集まり、とりあえず音を出す。まだどうジャッジして先に進めていたか、みたいな感覚はあまり戻らず、ぼんやりしてしまった頭でドラムの音はどうか、ベースの音はどうか、ボンゴのチューニングはどうか、とかを聴いていき細かく直しながら、はじめて全員で合わす曲だから、細かくここはこうしたい、ああしたい、なんて進んでいった。時間が時間だったから録音が始まる前に夕食を注文。この日は釜飯だった。食事を終え、いくつかテイクを録り、細かく修正をして、全体像が見えて「なにこれいいじゃん〜〜〜!」とテンションがあがった。あとは歌詞を書くだけ。社長と守谷さんと今後のことも含めて話していく中で、先行きだとか、将来だとか何も見えないけど、ようやく無理やりでも先へ進めそうで嬉しい。

 

 

 

おマンボ伯爵のご帰還

夜、寒くて長袖を着て眠った。

 

締切と締切の境目で板挟みになっている。今度録る曲の歌詞を考えなくちゃいけないのに打ち合わせたばかりの来週締切の曲のコンセプトが頭をぐるぐる回りだし、どうにもならない。久しぶりに文学に飛び込まなければ、と掃除をしていたら出てきたボリス・ヴィアンの「北京の秋」を開いてみると2017年のAマッソのライヴのチケットの半券が相当序盤のページに挟まれていた。確か2017年の当時にどこかの古本屋で買ってパラパラと読んでそのままになっていたのだ。ボリス・ヴィアンは高校生の頃に金剛地武志さんに薦められて「醜い奴らは皆殺し」や「日々の泡」「心臓抜き」とかを読んで、そのどれもがぶっちぎりでいかれてて、でも繊細でめちゃくちゃ影響を受けたのだが、いろんな本を読んだり、歳を重ねていくうちにあまり小説を読むのが得意ではない、ということがわかってしまって、次第に読まなくなってしまっていった。そうして気がつくと彼が遺した著作の半分も読まないうちに大人になっていて、なにがどうしてこうなった、と口でいうだけいってみるのだ。

 

佐久間さんと優介とApexをしてて漫画の話になり、萩尾望都さんの漫画をいくつか読んだ佐久間さんに高野文子さんの漫画を勧める流れになり、優介とふたりで「おともだちが〜」とか「絶対安全剃刀は〜」とか「いや、やっぱり棒がいっぽんが〜」とか言っていたら通話しながらその場で3冊全部買っていて、なんだかうれしくて、ちょっとおかしくて。「明日届きますね」と言うのを聞いて明け方の部屋で笑った。

 

作詞のあれこれ、作曲のあれこれに疲れたらナイポレのための選曲を進める。次の放送はああいう感じだから、こういうのをかけたらいいんじゃないか、でもこれはいつかあのテーマでやるときに取っておこう、とか、考えを巡らせる。結局どの作業も楽しいのだからつくづく天職なのかもしれない。

 

2年ぐらい前に枡田さんがRTして知った山素さんの漫画がモーニングの月例賞を獲ったとのことで読めるようになっていて読んだのだけど、最高だった。地に足のついた飛躍というのか、飛躍しながらも地に足がついている、とでもいうべきなのか、とにかくそうした状態というのは美しくて、心の奥にガッと染み入り、ありもしない私のあの頃が扉絵のそれと重なる。

 

時間跳躍式完全無劣化転送装置 - 山素 / 【読み切り】時間跳躍式完全無劣化転送装置 | コミックDAYS

ABBA急報

配信も開始されたのでもう一度見たくて「サラリーマン川西の夏のボーナス50万円争奪ライブ」をまた見た。やっぱり全ネタ最高。出順も良くて、だんだん誰が出てる、とかどういうネタ、とかじゃなくて、ひとつの塊としての美しさみたいな気持ちになってきた。サラリーマン川西という大きな怪物のワンマンライヴを見ていた、ということなのだろうか。

サラリーマン川西の夏のボーナス50万円争奪ライブ - TwitCasting

 

出来上がった曲がめちゃくちゃいい。前の日記でも書いていたAとBだけ出来ていた曲で、このままA-B-Inter-A-B-OutとかA-B-Inter-A-B-C-B-OutみたいないわゆるJ-POP的な構成でも強くていいよな、と思ったのだけど、夏のボーナス争奪ライブを見た結果、今作っているものはそこからずらしてこそいいものになりそうだ、とA-B-Inter-A-C-B-Outという形に落ち着いた。渾身のCメロが出来て最高。締め切りがギリギリ過ぎて遠隔プリプロも出来ないまま録音当日を迎えることになってしまったが、このバタバタしている感じは(メンバーからしたらたまったもんじゃないと思うけど)少しコロナ禍の前を思い出して懐かしい気持ちになる。そうしてまた次の締切が決まっていて、それは目と鼻の先だ。 

 

同居している恋人が2度目のワクチンを打ち終え、2週間が経った。自分の接種から2週間が経ってもあまり積極的にでかける気持ちになれなかったのはこのためで、接種の日程が決まった頃は「じゃあこのあたりには久しぶりにでかけてどこどこに行きたいね」とか話していたけど、感染状況と締切からそうもいかないかもしれない。副反応もつらそうで、モデルナの副反応は女性に多い、とニュースで見たけど、こういうことか、とおれには潤沢に冷えピタを確保することしか出来なかった。

 

すっかり秋です。かりそめの季節感と知りながら、窓をあけ、ジャズなんか聴いたりしちゃって。

曳豆

「サラリーマン川西の夏のボーナス50万円争奪ライブ」を観に行った。タイトル通り、入社3年目の営業職のサラリーマンがタガが外れて夏のボーナスを賞金に自らの賞レースを企画したライヴで、リアルすぎる賞金額に全員全ネタがバッチバチにキマりまくる壮絶なライヴだった。迷いなく最後列に着席したのだが、全席にかけてあったはずのソーシャルディスタンスを諭す札が後方の2列だけ裏に回ってしまっていて、開演時間が近づくに連れてギッチリ座るところもあって結構ゾッとしてしまった以外は最高のライヴだった。コロナ禍以降、いろんな人が出るライヴはアングラDこと松本健人がキュレーターだったしぶロフ寄席ぐらいで、そこも得体のしれないパワーがあったけど、この日もめちゃくちゃだった。とても充実した気持ちです。久しぶりのイベントがこれでよかった。

 

ひっさびさのバンドでのレコーディング。優介はこないだの奥津さんにかいた曲のレコーディングやムーンライダーズで、ボーイとも奥津さん、そして舞台でよく会ってたし、なおみちさんもライダーズであってた。佐久間さんとは優介とよくApexやってるから久しぶりの感じもしなかったのだけど、去年の9月のライヴ以降会っていなかった。プリプロも遠隔でやったし、どうなることやら、と思って心配だったし、実際序盤は自分がどうやってレコーディングのテイクに対してオーケーを出していたか、自分のギターのタイム感、メンバーのタイム感とかを忘れていて、「果たしてどうだったっけ…?」って思い続けていたけど、何回かやっていくうちに少しずつ思い出せたし、特に2曲目に録った方はドラムテックの伊藤さんの采配もキマっていい具合の音像で録音することが出来て嬉しい。今月はもうちょっと録音が続く。まだ曲が仕上がっていないのでがんばる。