幻燈日記帳

認める・認めない

パン状態

某日

一度悪い方に考え出すとどうにもならないのは血筋かもしれない。小学生のときに兄が体調悪くて病院に行く、となったときに「俺は死ぬんだ」と泣きわめいていたのをよく覚えている。胃が痛くても2週間ぐらい放っておいたのも「今まであまり感じたことない胃の痛みだ」「もしかしたらやばい病気かもしれない」「ムーンライダーズのライヴにはせめて立ちたい」と思ったからだった。死なないまでも入院かもしれない……とさみしい犬みたいな顔で病院に向かったのは前回の日記で書いたとおり。薬で散らしていたが、こちらとしてはすっかりやばい病気判定に入っていたので今すぐ何らかの検査の予約を、と近場の消化器科に電話をかけていくもどこも胃カメラまではやっておらず、昨日かかった医者に電話で泣きつく。来週の火曜日に行けないんだけどどうしたらいいの、と言うと丁寧に別のクリニックを紹介してくれた。そのクリニックに電話をかけ、事情を説明すると翌日にキャンセルが出た、とのことであれよあれよと朝一番の胃カメラの予約が取れた。その後、様々な確認。たとえば麻酔をするかしないかの確認。するならその日いち日は運転はしちゃダメ、と言われ、明日クリニックで悩んでいいか、と伝える。なぜなら午後は急に入った仕事があったため、できれば車で移動したかったのだ。麻酔しなきゃいけないぐらいの行為ならば麻酔したほうがいいんじゃないか、と思う反面、「当院の鼻から入れる胃カメラは不快感も少なくておすすめ!」みたいなポスターもどこかの病院で見たことがある。鼻からカメラを挿れられているイラストの女性は笑っていたはずだ。

 

某日

結局麻酔はなしでやることになった。クリニックのベッドに横たわり、採血を済ます。10回は覚悟したけど助手の方2人、医師1人に代わる代わる刺され、3回目で採血することができた。「いやーそれにしても血管見つからないね」と医師が言うので、「今回採れたところにタトゥーいれておきます」と返したが、まあまあスベった。麻酔無しで胃に違和感がダイレクトで伝わってくる。この異物感を楽しむんだ、と考えるだけ考えてみた。あっという間に終わり、イラストの女性の気持ちもわかった。そうして診断がくだされる。撮った写真を見ながら解説をきく。「とにかくきれい」「君みたいに太っていると逆流性食道炎とかなりやすいんだけどその痕跡もない」「自律神経の問題だね」「胃は元気なので何食べても問題ない」「寝る前3時間だけなにも食べないようにしてほしい」であっけなく終わった。「手術だね、これ以上放っておくと危ないから今すぐ行って。紹介状書いたから。」って言われる未来を想像していたから拍子抜けしてしまった。病院から出て曇った街を歩きブックオフに入ってCDを何枚か買った。なかったかもしれない日常が手元に戻ってきたのだ。タイ料理のお惣菜だって買って帰るさ、そりゃ。