幻燈日記帳

認める・認めない

悲しみを燃料にして走る軽自動車



ノンアラーム生活は続く。
これは快適だが、逆に焦るときが来そうで怖い。
昼前に起きれたのでそのまま身支度をして家を出た。
空は曇天。今にも泣き出しそうなうんぬんかんぬん。
自転車は快適で風は少し涼しかった。
青梅街道を横切り、細い道にはいっていく。
住宅街の中に突然果樹園みたいなのが出てきたりする。
とても気分がいい。ラララ快速。
吉祥寺に着いた頃には長袖を着たことを後悔しつつあった。
今日はひたすらうどんを食うだけさ。
明日はもうかなり前から決まっていた用事があり、
どうしても顔が出せそうにない。
今日が最期の小川町まる金のうどん。
結局メニューは初心に立ち返り釜玉を注文。
でもそれだけじゃあね、と豚肉をトッピングした。
なんと言ったらわかるだろうか。
そりゃしょっちゅう食べてた味なんだけど、
今日のうどんはいつもよりおいしく感じた。
明日は用事があるから…とかいいつつも結局くるんだろうな、
と思っていたんだけど、ここまで状態のいいうどん出されたら、
自分のなかではかなり良い着地だと言える。
明日行かないと後悔するんだろうけど、
不思議とイヤな感じは、今のところしない。満足した。
トレイを下げ、店を出る前に大将は「またどこかで!」とも、
「そんなに遠くないどこかで…」とも言っていた。
何日か前、うどんを待ってる時に大将が「良い知らせ、××の…」
と言って調理場の奥へ消えていったのをみた。
××には地名がはいる。東京ではなく、
確かにそんなに遠くはないけど、近くはないところだった。
もしそこでまたお店を始めるんだったら、
気を張って新しく開店したうどん屋を捜さなきゃな。なんて思った。
開店のタイミングは知らなかったが、
高校2年か3年くらいの頃にチェーンの居酒屋の昼間の営業で、
二毛作的な形でうどん屋としてやっているのをたまたま見つけて、
それ以来通う事になるんだけども。
昔の日記をみたら2005年の7月8日がはじめて行った日みたい。
日記というのは書いておくもんだなあ。
どんなにくだらないことでも、青臭い文章でも、
それが積み上がっていく感じはとても好きです。
好きな店がなくなっていくというのははじめてではないですが、
やっぱりいつまで経っても慣れないです。


電車の中では中古で買ったscholaのdrum and bassの巻を読んでいた。
なぜこの本を選んだのかわからなかったが、
奥村靫正さんの展示を観に行くからなんとなく気分はYMOになっていたのかもしれない。
うどんを食べ終え、神田の駅まで歩いていった。
その途中高校生の頃好きだったロックバンドの人の訃報を知って、
少し歩くのが遅くなったし、どうにもこうにもやりきれない気持ちばかりが積もった。
今はもう熱心に聞いてなかったし、ライヴでみた事もなかった。
でもやっぱり「birdy」というアルバムは特別な一枚で、
今、そのアルバムにはいっていた曲を思い出すだけでも、
特定の景色を一発でよみがえらせるほどの威力がありました。
でもそのアルバムもお金がない時に困って700円くらいで売り払ってしまいました。
中古で買い戻そうかと思ったんですがAmazonみたらとても高くなっていますね。
タワーで買ったので特典の8cmも一緒でした。
あの頃の池袋のタワーは僕にとっては特別で、
Quinka, with a yawnとかヤマタイコクとかタラチネとかソラミミとか、
そういうCDを買ったりしていました。
今の私はまるで老人にでもなったかのような気分で、
思い出せる事だけをひたすら、ひたすらに美化し続けようとしているのです。
でも放課後の匂いが思い出せない。
旧校舎も立て替えになってしまって今はもうない。
あの先生は定年を迎えてしまったそうだし、
あの先生は亡くなられてしまったそうだ。
高校を卒業するだなんてとんでもないことをしてしまったんじゃないか。
そんな、そんな複雑な気持ちを抱えながら歩き続けると、
(日記では多少大げさに書いたけど)感傷に浸り続ける時間もないうちに、
神田駅に到着していた。
山手線に乗り込んで新橋の駅で降りる。
ギャラリーにはいるとレコードのジャケットや、
そのポスター、色校なんかがたくさん飾られている。
奥村靫正さんは好きになったレコードの、
このイカしたデザインは誰?と思うと必ずと言っていいほどその名前がある。
例を挙げるなら加藤和彦さんの「うたかたのオペラ」や、
ムーンライダーズの「カメラ=万年筆」もそうだし、
チャクラの「さてこそ」やSPYの「SPY」だってそう。
忘れてはいけないのが1980年、1981年のYMO関係。
「BGM」も「テクノデリック」もヴィジュアル面では、
「下半身モヤモヤ、みぞおちワクワク、頭クラクラ」
をうまく体現しているように思えた。 
往年の作品の原稿とかをみてキャー!とか言ってたけど、
最終的に最新作の前で私は多いに感動しました。
ヒロシマ・アピールズというシリーズのものらしいのだけど、
あまりにも緻密で、アナログ作業の固まりがデジタルなものに見えた。
イラストもロゴも、この大きさで見るから意味があるのかも。
美術にはてんで疎い私ですが大いに感動しました。
展示の中にはチェッカーズのものもあって。
奥村さんの仕事だと知ったのは最近のことなんですが、
2,3歳とかだった私は何故か自分の意志でチェッカーズを聴いていました。
僕の予想ではポンキッキでやっていたガチョウの物語から入って、
高島平にあったレンタルショップ、夢ランドで手に取り、
「絶対!チェッカーズ」の裏ジャケットに魅かれた、というのが有力。
そう考えると、不思議と線は一本になるもんで、少し不気味だ。
「体操」のジャケットイラストを使用したiPhoneケースが売られていた。
温泉マークのものも、ウィリアム・ギブスンニューロマンサーも、
非常に残念ながら売り切れてしまっていた。
(これは5用の話で4ならTAISOとニューロマンサーはまだ残っていた。
もうすぐ2年経つので先を見越して5のものを買いましたとさ)
小冊子も購入しいい顔で帰宅。
少し歩いて内幸町から三田線で実家へ。
ちょっと顔を出して、明日必要な書類を受け取り、
ごはんを食べてすぐ帰った。
電車で吉祥寺につくと雨が降ってきていて、
今日ずっとさす事のなかった傘をひらくと、
自分の傘じゃないことに気がついた。
家から同居人の同じ色の傘を持ち出してしまったみたいだ…
部屋に帰って同居人と談笑したりして、現在に、至っている。