幻燈日記帳

認める・認めない

おまえが旅に出るというのなら



かつて南池袋ミュージックオルグと言われた場所へ向かう。
冬が寒くて外套が薄手だと気がついた。
曲がり角を曲がっても、バス通りを横切っても、
冬の寂しさがつきまとう。深く考える事は放棄した。
池袋についてレコード屋で何枚かCDとレコードを買った。
「あっ、これもほしい、これもほしい」
と思って手に取ったレコードは既にCDで持っているものだったし、
手に取ったCDはかつて図書館やジャニスで借りたものだと気がつく。
「なんて面白くないんだ!」急にむしゃくしゃとした気持ちになり、
数枚入れ替えを敢行。
それでもボートラにつられて既に持っているCDに手が伸びていた。
ここまで来たらどうしようもない。
諦めて時間が心の隙間を埋めるのを待つしかないだろう。
オルグと呼ばれた場所は去年までと変わらなかった。看板も出ている。
階段もいつも通り。扉もステッカーだらけ。
店の中に入ると機材が積みあがっていた。
「そのうち業者が引き取りにくるんだ」と馬場ちゃんが言っていた。
スカートはここで「ストーリー」と「ひみつ」、
2枚のアルバムを録音した。
それに加えて曽我部恵一BANDの「サーカス」のリミックスや、
カーネーションかしぶち哲郎さんのトリビュート、
弾き語りのアルバムなどをここで録音している。
今月発売されるNegiccoのアルバムにスカートが、
編曲、演奏で1曲参加してるけど、
その曲のベーシックもオルグで録音した。
思い出なんて言葉じゃ足りない、でも青春だと大袈裟だ。
(きっといつか振り返るとそれが相応しくはなるのだろうけど)
最後の作業を済ませて馬場ちゃんと晩ご飯。
帰ってきてなんとなくピアノを弾きはじめると、
ひとついいコードをひらめいた。
せっかくなのでその場で作曲をはじめてしまったのだが、
1時間ちょっと経ったあたりでどうにも進まなくなってしまった。
オルグに足を運ぶことももうないことなので、
あの場で最後までつくってしまいたかったのだが、
なんとなくココから先はギターで作った方がいいのでは、
と考えがちらついてきてしまい、諦めて帰路についた。
いろんな事を考え込む。
年齢の事、創作の事。沈むシートは何の対価だろうか。
削らないと、沈まないと、先へは進めないのだろうか。
思い出なんて言葉じゃダメかな。青春だって言ってしまっていいかな。