幻燈日記帳

認める・認めない

グールシュテンハウエルの裁断



ギターケースだけを持って移動。吉祥寺の定食屋で食事を摂ったあと、満たされたことによる安心感からか軽い体で店を出る。こんな暖かい日には荷物なんて背負いたくないね、最高だね、と思ったところで自分がギターケースを定食屋に忘れた事を思いだした。定食屋に戻り改めて錘のようなギターケースを背負い、店から出て見上げた空のブルーは、どちらのブルーだったのだろうか。
銚子までMVの見学に向かう。天気予報は曇りのち雨。車内でかかるFMに耳をすますと大森靖子さんの新曲が最高だった。首都高のカーブによく合う。見学と言った通り、出演するわけでもないので特に何かできることもなくひたすら小躍りしているだけの数時間があっという間に過ぎていった。夜はyes,mama ok?のリハーサルがあったので16時前には銚子を出る。電車の乗り継ぎは2回ぐらいだったのに3時間かかってPASMOから2300円ぐらいガサッと引かれたのを見て打ちのめされた。16:47分ぐらいの電車に乗って乗換検索で乗り換えが17:20分ぐらいね、ふむふむ了解、とアラームセットして眠りこけて目が覚めたら全然目的の駅じゃなくて路線図確認するんだけど、乗り合いの関係なのか、銚子側の駅名が全然載ってない。3時間かかる状況で乗る電車ミスったら何時間遅刻すりゃいいんだよ…!と思ってもう一度乗換検索を見てみたら17:20乗り換えじゃなくて18:20乗り換えだった。焦ってしまって眠気がどこかに飛んでしまったのかその後はぼーっと田舎の景色がすっとんでいくのをただただ眺めていた。
この日記だけを定期的に読んでる方もいると思うので少し説明するとスピッツの「みなと」という曲で口笛を吹きまして、それでスピッツミュージックステーションに出演するので澤部くんも…とオファーがきました。スピッツのレコーディングに参加しただけでも涙がちょちょぎれそうなのに、そこにゴールデンかつ生放送、子供の頃は毎週欠かさず見ていたあの番組に…ぼくが…出演…?という具合にお察しの通りとんでもない気持ちになりながらテレ朝入りしたんですが、どこに受付があるかも知らない、受付かと思ったらちょっと違ったり、受付通過したらしたであっ、スタジオ何階だ!とディレクター竹内さんに電話して「B1です〜」と言われB1に行こうとするもハッ!エレベーターどこ!?となり、これがいわゆる右も左も解らない、というやつか〜となりました。
ライヴの時って、誰かがわかりやすいミスをすると緊張がほぐれるのか、果実は傷つくとその傷を治そうと甘みが増すといいますが、そういうことが演奏でも起きるのか、はたまたそのどちらもなのか。(もっと言えば僕は責任が少ないというのもあったのかもしれないけれども)こんなに楽しく演奏できる事はなかなかない、というぐらいのパフォーマンスになった気がします。この日記を読んでる方だったらなんとなくわかると思うんですが27歳の時、入院したこともあったんだけどいろんな事が結構しんどくて泣きそうな毎日を過ごしていたんです。それが『CALL』のレコーディングあたりから少しずつ気持ちが晴れていって、この辛い27歳をよく切り抜けたね、っていうご褒美として28歳になった瞬間をレコーディングスタジオで迎える、というのがあった気がします。それから先はあれよあれよといい事がたくさん起こりました。tofubeatsくんのイベントで僕のアイドル、藤井隆さんと親交が出来たり、鈴木慶一さんの45周年記念ライヴに参加させていただいたり、スピッツのレコーディングに参加させていただいたり、新しい予感ばかりと思いきや今までやってきていたyes,mama ok?と川本真琴さんのライヴもしっかりこなせたのもうれしかったです。藤井隆さんのイベントにまた呼ばれて、そこで麒麟の川島さんと親交ができてラジオに呼んでいただいたり、番組のジングルを作らせて頂いたラジオ番組「Sound Avenue 905」にDJとして呼ばれたのもうれしかったですが、小西康陽さんにご挨拶させていただいて番組を見学させてもらった(うえにジングルを生でやったりする無茶ぶりも!!)のも本当に嬉しい出来事でした。嬉しかった事は挙げたらきりがありません。そして先日、『CALL』というアルバムが出ました。ココナッツディスクでやったインストアイベントも大盛況でした。そういうタイミングでスピッツさんに呼ばれてMステに出させてもらってとんでもなく話題にしていただいて。
ずっとスカートをやりながらどうすればもっと外に広がるんだろう、スピッツを聴いてる人たちに聴いてもらえたらどういうふうに聴こえるのかな。スピッツ好きな人はきっといい音楽がどういう音楽かということを潜在的にわかっている人たちだと思うからきっかけさえあればスカートもきっと気に入ってもらえるんじゃないだろうか…なんて考えていたんですがそれをまさかスピッツさんの方からきっかけをいただけるなんて思ってもいませんでした。さっき、27歳のご褒美としてレコーディングスタジオで28歳を迎えることが出来た、と書きましたが、「みなと」のレコーディングの話を頂いた時、ディレクターの竹内さんから「この曲に口笛を入れてほしくて」と音をいただいて聴いた時に「これもご褒美だ〜!」と涙が出そうになったことも付け加えたいです。この曲に参加させてもらったということが、というよりもこの曲を完成させるためのピースとして選んでもらったことがきっと今まで音楽をやってきた僕の背中を押すし、これから音楽をやっていく背中を見守れる気がしたのです。スピッツ、ある程度の世代だとヒットしすぎて逆に聴いてない、っていう人絶対いると思うんですがそういう人にも聴いてもらえたら、と思います。スピッツ「みなと」は4/27発売です。