幻燈日記帳

認める・認めない

サインコ

2日

部屋の外へ出る。あまりにも静かで嬉しくなる。少し前にラジオに出たときに「年始の人がいない東京が好きなんですよね」と言って、そうか、コロナ禍でもう正月に実家帰る人も減っちゃってるのかもしれない、時代遅れなことをいってしまったかも、と思ったのだが、まだ有効だったようだ。もっとも、人が少ない東京、というのは都心のことを指していたはずだったけど。

実家に顔を出す。年齢を重ねるごとに、自分の貯金のなさや、税金の支払いに苦悶し、俺の人生とは、と考えるのだけど、父は若くして家を建てた……俺に、俺の芸術にそれだけの甲斐性があったら、と人知れず嘆く。

 

7日

ドラァグ・クイーンのショウ、オピュランスを観にZepp Diver Cityへ。コロナ禍において私を救ってくれたもののひとつが「ル・ポールのドラァグ・レース」だ。私の抱える(べき)芸術を見つめなおすきっかけにもなったし、大いに影響を受けた。日本では新シーズンすらまともに見られなくなってしまったけれど、それでも4人のクイーンが来日してショウを披露する、というのでウキウキと向かった。最後にZeppに来たのは2019年のTeenage Fanclubだった、ということも思い出す。オピュランスはエネルギーの塊のような場で、きらびやかな世界だった。

 

9日

母と映画を見に行く妻を吉祥寺まで送ってココナッツに顔を出す。金剛地さんに教えてもらったツィッギー主演のミュージカル映画、「ボーイ・フレンド」のサウンドトラックを見つける。新年早々縁起がいいわね。海外の方がクラスターの超かっこいいジャケットのやつを試聴させてもらったあと、元々お店でかけてたスティーヴィー・ワンダー、それも「イン・スクエア・サークル」!に戻った時、海外の方が「クラスターからスティーヴィーなんて繋ぎ、聴いたことないネ」と言っていた笑ってしまった。店を出て吉祥寺の裏道を歩く。廃屋になった一軒家の庭に見事に寒椿が咲いている。それだけなのに心に穴が空いたような気持ちになってしまう。