幻燈日記帳

認める・認めない

天気予報の恋人



ひたすらなんかやっていたような日々がようやく落ち着いたので、
こうしてまた私は自己セラピーの渦に飛び込みます。
かといってここ数日、なにか特筆すべき日常があったかというと、
ない訳ではないが、書こうとなるともったいぶる話ではないので、
ここ数週間であった印象的な出来事とそれに付随することを書きます。


神戸遠征
スカートはかつて遠征は4回していた。
金沢、新潟は弾き語り。
京都、京都はバンド編成。
5度目の遠征は憧れの神戸!
高校生の時に読んだきり私の心の支えと言っても過言ではない、
神戸在住の舞台である神戸!ときめきもひとしお。
私は前日気合いを入れてブックオフで退屈しなさそうなCDを安価で買いあさった。
カセットの形をしたiPodアダプタも購入したので、
CDはひたすらに気合い入れてふざけたものを買って翌朝出発。
するとなんど試してもカセットを読み込んでくれない。
こんな悲しいことはありかよ!と思いながらも手持ちのCDと、
佐久間さんが持ってきてくれたCDで時間を潰していたのだけど、
この旅で私はついに出逢ってしまった。CHAGE AND ASKAに…
「澤部君が音楽好きになったきっかけってなんなの?」
そう訊かれると「2,3歳の頃には自主的に光GENJIを聴いていたみたいです」
と話すことが多い。
確かに光GENJIはすばらしい曲が多い。
これが自分の根幹にあると思うと少し誇らしいぐらいだ。
そりゃもちろん馬飼野WORKS「笑ってよ」「COCORO」など、
中期の曲も素晴らしいが、やはり初期を彩ったチャゲアスWORKSはトンでもない。
大ヒットシングル「ガラスの十代」やアルバム収録の「あきすとぜねこ」など、
思い返しても名曲ばかり。
だが、じゃあその曲を作ったチャゲアスをなぜいままで聴いてこなかったか?
と自問自答をしてみたら、やはり国民的セールスを誇る大物ユニット、
というところからだろうか。
私のようなサブカルボーイ(自覚としてのサブカルではなく、
チャゲアスと相対的に見た客観的なサブカル)には、
300万枚のセールスはあまりにまぶしく、どうにも取っ付きにくかった。
2010年くらいの遠征で昆虫カーを運転した時、
麓さんも一緒にいて、その時「LOVE SONG」っていう曲がすごくいいんだ、
なんて話を麓さんがしていたり、つい最近、
空気公団はライヴでその「LOVE SONG」を取り上げたそうだ。
そういう経緯は後から気づくのだけど、
軽い気持ちで今回の車載CDにチャゲアスを選んだ。
神戸へ向かう高速道路でCDを再生してみると、
確かにアレンジというか音色はひどいぐらいダサいものがある。
でもそれを軽々と越えてくるASKA氏のソングライティングに、
眠気が一気に吹き飛んだことを覚えている。
買ったCDは「SUPER BEST 2」というCDで、
1986年くらい以降のシングル曲が入っていた。
「モーニングムーン」は光GENJIワークスの延長として、
聴いていたことはあったけど、他はやはり「SAY YES」くらいしか知らなかった。
でもぼくは「SAY YES」を軽視しすぎていた。
ベストを通して聴いてコード進行がヤバい曲が多い印象があったけど、
「SAY YES」はその極北かもしれない。
オンコードやディミニッシュ、フラットファイブを多用しても、
それが嫌みに聴こえないし、
それだけのことをしてもさっぱりと聴けるポップさがある。
これはもしかしたら僕が理想としていたことじゃないか。
20年以上の時を経て、私は生き別れた父に再会したような気分になっている。
チャゲアスはもしかしたら金脈かもしれない、と借りたベスト盤に入っていた、
天気予報の恋人」という曲がキリンジ級のクオリティで、最高。
「SAY YES」は300万枚売れたそうだ。
これは僕にとってはとても勇気づけられる、夢のあることです。
ストイックに作られた曲が、多くの人に届けられて、評価される。
そこだけみればただただ素晴らしいことだと思いました。
遠征中のBGMでもうひとつ印象に残っているのは、
MAXの「TORA TORA TORA」という曲です。
フックのシンセが調から外れた音をならしていて、
これは一体どういう様式美なんだろう、と思い、
ハンドルを握りながら鳥肌が立ちました。
ですがアルバム全体通して聴くと、
和音もほとんどなく耳に痛いシンセサウンドが続いたので、
少し体力的にしんどいものがありました。


神戸のライヴはとても、とても盛り上がりました。
東京でのライヴでこんなになったことはないだろう!というくらいに。
一曲目はしっとりはじめよう。と「おばけのピアノ」にしたのですが、
ストロークをはじめた途端歓声が沸いて、
こりゃどういうことだ!と動揺して3行目の歌詞を間違えてしまいました。


京都遠征
日曜日を週のはじめとするなら京都はその金曜なので、
1週間に2度の遠征をすることに。
それも京都は弾き語り。京都KBSホールという、
1100人も入るホールにて、弾き語りなのだ。
NANO-MUGEN CIRCUITという、
アジアンカンフージェネレーションさんが主催のイヴェントに呼ばれました。
前日も東京でライヴだったので(神戸の反動もあり、
曲によっては少し悔いが残る演奏になってしまったのが残念でした)、
少しからだに気を使って行きは新幹線、帰りは深夜バスという選択を。
新幹線の中で聴くのはもちろんチャゲアス
そのとき車中で「天気予報の恋人」とか「PRIDE」とかをはじめて聴いたので、
もうそれはそれはバッシバシ心に来ながら京都に着きました。
宿に荷物を置き、KBSホールへ向かった。
物販の設営でインディーバンドと、
そうでないバンドの違いを圧倒的に見せつけられた。
我々の物販はノートを千切ってそこにタイトルや値段を貼付けていったのだが、
となりのスペアザはラミ加工のプレート?に値段やらが書いてあった。
むちゃくちゃ当たり前のことなんだけど、
そんなことも気づかなかったのか!とショックを受けました。
楽屋はどうも落ち着かず、恋人をスタッフとして連れて行ったので、
交代交代、もしくは一緒に物販に入りながら、リハーサルの時間を待った。
スタッフがちょこちょこいるだけの広いライヴ会場。
こんなところで、それもきっとスカートのことなんか、
知らない人だらけ、こんなビジュアルで歌ってる人なんか、
アジカンファンは信じられないような目つきで僕を見るに違いない。
暗い気持ちになっていたらゴッチさんが声をかけてくれた。
話の内容をすごーく簡単にまとめると、
「楽しんで演奏してね」ということだった。
その一言でどこかギラついていた気持ちが一気に消え、
本番前にこんなうまそうなケータリング食えるか!
という怨みにもにた気持ちも夏のような陽気の京都の空に消えていった。
(ケータリングは本番後においしくいただきました)
本番が始まって見ると、最初にアジカンのメンバーが全員ステージに出て行って、
挨拶をして場をほぐしたりしてくれたおかげで、
思ったよりも緊張しなかったし、歌詞も飛ばなかった。
なによりうれしかったのはお客さんたちがとにかく暖かかったことです。
「夜のめじるし」や「ストーリー」では手拍子が起きて、
ぼくは前にTAGROさんのイベント「音ゼミ」で弾き語りやったとき、
「わるふざけ」を歌ったらコーラスの合唱が起きたときのような感動を思い出しました。
バンドで来れなかったことは悔しいけれども、
これが何かのきっかけになって、バンドを気にしてくれる人が増えたらいいな。
素敵なイベント、本当に素敵なイベントでした。