幻燈日記帳

認める・認めない

ジェットのコールでミュータント・デイ



深夜に見た映画のせいではないだろうがとても良く晴れているのが布団に潜っていながらもわかる。些細なことなんてどうでもよくなりそうな一日だ。だがもう一本映画を見る。ジョン・カサヴェテスの「フェイシズ」だ。ざらっとした質感のフィルムに映る顔、顔、顔。見辛えな、なんて思ったけどそれもすぐなれて引き込まれていく。ソファに腰掛けた男が女に手を差し出し、女に対してカメラ目線で語りかけ、カメラが女の視点なのかなと思ったが男が女を自分のそばに座らせようとした時、もうカメラは女の視点ではない役割になった瞬間、ゾクゾクした。物語の中ではカメラもまた人間に成りうるのかもしれない。もしかしたら当たり前の手法なのかもしれないけど、僕には新鮮だった。
細かいやりとり。アルバムの全体像が自分でも見えなくて気持ちが悪い方角へ舵を取りかける。見えないのはアルバムの全体像だけではなく、いい音楽が世の中に溢れすぎてる事、それを楽しめる経済状況にある人ってほんの一握りなんじゃないの、という事、その一握りに自分が入っていけるのか、という事。すべてを背負いだしたらキリがない。いつかの二の舞いになってしまう。と、気持ちを少し軽くするために「僕がやりたいようにやればいいじゃん」と口に出してみるも「やりたいことってあるの?」と天邪鬼がすぐにちょっかいをだす。いいから見てろって、と言い返すことは出来ず、くしゃくしゃになった顔で水とパブロンゴールドをクイッとキメた。(全体像はつかめてなくてもそれぞれかなりいい感じなので均すと元気です)
DVDを返却するために渋谷へ出る。返却してタワレコに寄ってCymbalsの"Love You"のアナログを購入。意地になってファーストを買うことも出来たけど北園みなみくんの新作と、クリトリック・リスのファースト・アルバムを優先させてしまった。限定盤なのに!ああ!金さえあればの二十代。優介から連絡が来て冷牟田さんのソロ・ライヴだったと思いだした。そうだった。今日は12/1だった。耳が弱いので轟音は辛いな、と耳栓でもしていこうか、と思ったんだけど(他のバンドならそうは思わないんだろうけど冷牟田バンドに限っては)耳栓するのはとても失礼なんじゃないか、という考えに至り、帰路についてしまった。部屋で"Love You"を久しぶりに聴く。お金がないときにCDは売ってしまったので聴くのはもうきっと8年ぶりとかじゃないかな。"アメリカの女王"でのイントロ!ハー!!僕が大学入ってちょっと経って立教に行った高校の後輩が「今シンバルズとか聴いてますね」と言って椅子からひっくりかえるほどの衝撃を受けたことを今でも思い出すし、なんとなくそのまま世の中の流れ的に若者のあいだでシンバルズ再評価が加速していったのも現象としては不思議な気がしている。