幻燈日記帳

認める・認めない

準備が要るなら言ってください



寝苦しくて朝の7時に目が覚める。闇アカウントに「寝苦しくて起きちゃった」と書き込んだら社会人の友人からいいねがついて気がつく。社会人の朝7時は自営業にとっての深夜3時だった。恥ずかしくなってすぐにツイートを消す。なんなんだよ29歳!今年で30歳!しかし眠れそうにもないので弦のレコーディングのために譜面を書いてみる。打ち込んでいるからLogic上でスコアは表示されるんだけど、なんとなく紙に書いてみたかった。結果は惨敗。ヴィオラのハ音記号のことなんてすっかり忘れていたよ!これが音大出身の実力だよ!シンリズムくん(後輩)あとは任せた。


すると大家から着信。エアコンの室外機から出た水が非常用のハッチから漏れ出して階下の軒先にしたたっているというのだ。急いで確認するも非常用のハッチが水に濡れている様子もない。すると今から部屋に行ってもいいか、様子を見せてくれ、というので、今めちゃくちゃ部屋汚いですけどそれでもよければ、というとすぐにインターホンが鳴った。そりゃないぜ!!玄関からダメ出しを喰らい、ギタースタンドを押しのけ、埃っぽい作業部屋を通ってベランダへ。やっぱりどうにもなっていない。全て問題ないはずなのに何故。「ダメだよきれいにしないと〜」と言って大家は出ていった。今日は本当にダメ。全然ダメ。これ以上ないぐらい最低の一日の素晴らしい前触れ。それでも空腹に耐えかねて部屋を出てみると隣の部屋のドアの前に大量の段ボール。どうやら引っ越しらしい。去年の丁度今頃に一軒家を引き払った身分としてはなにか感じるものがあった。駅前の立ち食いそば屋であたたかいそばをかっこみ(魔法の言葉「お蕎麦は食べても太らない」)、SEIYUで細かい買い物もするのだが、とにかく店内の冷え方がエグい。そばで温まった身体から吹き出る汗が速攻で冷えていった。今日はもう本当にダメ。なにをやってもうまくいかない。絶対に。


でもそれでいいのか!と自分を奮いたたせる。とりあえず眠ればきっと変わる。布団に潜って全てをフラットにするんだ、もう一度、フラットに。そうして再び夕方前の世界が私の前に開けた。雨は降っていない。出かける決心をして、口座の残高を確認し、スピッツのアナログを購入しに新宿に向かった。持っていなかったLPをドカンと買う。これでしばらくのもやし生活が決定する。達成感と午前中の出来事全てをゴミ箱にぶち込めた気がして気分が変わった。シーンが変わったような充実感!スクラッチを削れば500円引きが出たよ。


LPを抱えてユニオンに向かう。海外の方が子連れでエレベーターに乗ろうとしていたのだが、なにかの手違いで3歳ぐらいの子供だけが先に乗ってそのまま扉が閉まってしまった。すぐにエレベーターは開いたのだが子供は大泣き。父親はエレベーターに乗るのを諦めていた。僕は上手に乗れてしまったもんだから訳知り顔でエレベーターが目当ての階でおろしてくれるんだけど、レコードが重いのもあるし、インディー/オルタナのフロアを上手く乗りこなせる気がしなくてすぐに階段を降りてしまった。その後も奮わず。ユニオンを出てさっきまで居たタワーで「ハヤブサ」が店頭に出てなかった事に気がついた。当然買えていないわけで急いでタワーに戻る。


7階のスピッツのアナログコーナーはぼちぼち穴が出来ていて、焦ってカウンターに問い合わせる。「ハヤブサのLPはありますか?」「7階も8階も見られました?」「少し前に買ったんですけどその時並んでなくって。気づかなくって急いで引き返してきました」「では在庫を確認してきますね」と8階に向かおうとしたので「あ、じゃあ僕も一緒に8階いきます」と言うと「?」という顔をされてしまった。とにかく今日は本当にダメらしい。「ごめんなさい、ここで待ってます」 


在庫は無事にあって改めて会計。今度のスクラッチはハズレの応募券だった。帰りのエレベーターが同時に二台来て僕は左のエレベーターを選んだのだけど、扉が閉まるまで気づかなかったのだが、既に乗っていたのはチャラい大人たちだった。男が「ロード」を大声で歌ったりして「やめなよ〜」と女子に小突かれ、地獄だ、と思った矢先、7階から5階まで全部のフロアーで止まるのだが誰も乗ってこない。大人たちのひとりが「なんだよ〜このエレベーター各駅停車かよ〜」とつぶやくとその中の誰かが「お前のせいだろ」と笑いながら突っ込んだ。きみたち楽しそうでいいね。OSHMANSのフロアでエレベーターが開いた瞬間、僕と一緒に乗り込んだ女性に男が急に話しかけた。「OSHMANSいかないんですか?」女性は戸惑いながら「行きません」と返して、男性は笑った。他の男性がまた笑いながら「悪ノリやめろよ」と言うと、男性は「俺はこういう悪ノリが大好きなんだ」と笑った。笑うという行為は雨と同じでその場にいる人に平等に降り注ぐが、問題はその先だ。人の心は平等ではない。ああ、硬い靴を、硬い靴を履いていさえすればエレベーターのドアを蹴飛ばすのに。そんな気分をおさえて駅へ向かった。時間は18時だというのにまだ明るい。そうだ、晩飯は買い置きしてあるひやむぎを茹でていかの天ぷらとかを買って帰るだけにしよう、と駅前のスーパーに寄ったのだが、いかの天ぷらは完売。まあいいんだ、と自転車に乗って別の近くのスーパーに。そこでもいかの天ぷらは完売だった。今日は全然うまくいかない。スピッツのアナログを無事に持って帰ってこれただけでも奇跡だ。駐輪場から見えた隣の部屋はもうすっかり片付いてしまってがらんとしていた。


部屋で「オーロラになれなかった人のために」を聴きながらぼんやりしていたらヤフオクで入札していた7インチのことをすっかり忘れてそこに10円上乗せした価格で落札されていた。今日はなにをやってもうまくいかない。