幻燈日記帳

認める・認めない

レコ日記



そうして10月になってしまった。お前の手のひらには何が残っている?罪滅ぼしに名古屋でのキャンペーンのライヴが終わり、帰りの新幹線が来るまでの時間、レコード屋をいくつか回ったときに買ったものを挙げていきます。
最初に行ったのはミュージック・ファースト。栄のはずれの方にあったお店が矢場町のPARCOの横に移転してからも名古屋に来るたび、時間があるときは行っている。この日の収穫を挙げていこう。まずはNAZZの2枚組アンソロジー。NAZZは豊田道倫さんのライヴに通いつめていた頃、仲良くなったなんださんという方とMIXCDRを交換したときに入っていた"Open My Eyes"で初めて知った(このCDRにはその後のヒントになるようなものばかり入っていて、今でも感謝しています。なんださんはお元気でしょうか)。その後、大学の図書館に1stがあったり、自分でもライノからでたLPを買ったりはしていたけど、2枚組ということで購入。他にはスタンリー・カウエルの"Illusion Suite"も。Max Roachのアルバムに収録されていた"Equipoise"という曲が素晴らしすぎてリーダー作を探していたけどこれ!というものになかなか出会えなかったところ、今回面出しになっていたので購入。まだ聴いていません。あとJoe Pumaというジャズ・ギタリストの"Wild Kitten"をジャケ買い。試聴したけど、クレジットにピアノが入っていなかったのですぐ再生ボタンを止め、購入に至る。めちゃくちゃいい!というよりしみじみいい。はじめて聴くのが秋の夜で本当によかった。Youngbloodsの"elephant mountain"というアルバムも購入。ジャニスで借りたばかりだけど、出会ってしまったのだから、と購入に至りました。嬉しい買い物を終えて街へ出る。オーディオ屋が多く、そういう店の一角にレコードもあるようだ。何店舗か見たけど収穫はなし。MPSから出ている黒人ヴァイオリニストのアルバムとかあったんだけど盤の状態が良くなかったので見送る。
続いてハイファイ堂という店へ。雨も強くなってきたのも手伝ったのかお店の中は賑やかだった。ライヴを終えた後、というのもあるのか棚を片っ端から見る体力はもうすでに残されていなく細々と気になるところを掘って収穫なしか、と店を出ようとしたら新入荷コーナーを見落としていたと気がついて見ていく。何年か前にズーシミに勧められてなかなか手に入れることができなかったアンディ・ウィリアムズのアルバムをようやく見つけて購入。嬉しゅうございます。
それから少し歩いてマージー・ビートというお店へ。こぢんまりとした店内で棚を物色していると紳士的な店主が「何かお探しですか?」と声をかけてくれた。いやー何ってわけじゃないんですけどね〜みたいな感じで交わしてしまったのだけど新入荷からThe American Breedのアルバムを安く買えた。以前大阪のレコ屋で買うか買わないか迷ってやめたら後日誰かがツイートしてやっぱり買えばよかった!と後悔したアルバム。会計を済ましているときに音楽の話になった。本当の事を言うとトニー・ハッチと奥さんのアルバム探してるんですよね〜とか話したあと、「ああ、ジャズならあそこの段ボールにもまとまってますよ」というので見ていたら検盤も兼ねて店頭でかかっていた60'sのコンピからペトゥラ・クラークの"Downtown"がかかった。トニー・ハッチ作のこの曲が今、このタイミングでかかる、という事実に自分が愛されている、呼ばれているような気持ちになり2箱分の段ボールをにやけながら手繰っていくと大好きなメル・トーメの「メル・トーメの素敵な世界」("A Day In The Life Of Bonnie and Clyde")と「ロミオとジュリエット」の帯付きを発見。当時の定価ぐらいの値段だったけど愛されている実感を強く噛み締めていたので即購入。「メル・トーメの素敵な世界」は68年発表のアルバム。50年も前のレコードだ。嬉しくなって店主と少し話し込んだ。買い物を終えて隣の地下に入るレコード屋に行ったのだが、パンクが中心の品揃えだったということもあるけど、ついこないだ夢で見たレコード屋に似ていて少し怖くなってすぐに店を出てしまった。夢で見たレコード屋は、そこから先に更に地下があって、そこに古今東西あらゆるレコードが眠っていた。夢の中のレコード屋は坂の多い街の中にあった。この街は坂とは無縁のように思える。話はそれてしまうけれども、夢に見たレコード屋は少ないけれど全部覚えている。仙台の街によく似た場所にあったロータリーと街路樹が印象的な店。雑居ビルの3階と中2階にある店。紫色の街に密かに佇んでいたレンタルCDショップ。毛塚了一郎さんの漫画に出てくるレコード屋を見ると夢に出てきたレコード屋を思い出す。そして記憶が薄れてきたココナッツの2階や、小学生の頃はじめて行った上野のレコード屋の事が頭を横切っていく。ありもしない店の記憶、ありもしない店の漫画、あったはずの店の記憶。おぼろげになっていくのは対等なんだろうか。
そうして10月になってしまった。お前の手のひらには何が残っている?すり抜けていかなかったものはあるのか?